絹布けんぷ)” の例文
夜具は申すまでもなく、絹布けんぷの上、枕頭まくらもと火桶ひおけ湯沸ゆわかしを掛けて、茶盆をそれへ、煙草盆に火を生ける、手当が行届くのでありまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
常に弊衣をていた竹逕が、その頃から絹布けんぷるようになった。しかしいくばくもなく、当時の有力者山内豊信とよしげ等のしりぞくる所となって官をめた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼はその御茶屋の一室で厚い絹布けんぷの夜具に包まれて、横になつてゐる彼自身を見出した時、すべてがあたかも一世紀以前の出来事の如く感ぜられた。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日本の児女がその身にまとはんとする絹布けんぷの白さは魚類の腹の白さ(すなわち銀白色)なり。また淡紅色たんこうしょく紅味あかみを帯びたる雪の色(即ち蒼白あおじろき淡紅色)なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
例えば客間には素晴らしい家具が並んでいて、それには定めし高い金をかけたらしい、いき絹布けんぷが張ってあった。
つまり貢物の交易でちょうどネパール政府が五年に一遍象牙ぞうげとか虎の皮とかいうような貢物をシナ政府へ納めて、絹布けんぷ金襴きんらんの類を沢山貰って帰るようなものでしょう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あけて見るに絹布けんぷ木綿もめん夜具やぐ夥多おびたゞし積上つみあげてあり鴨居かもゐの上には枕のかず凡そ四十ばかりも有んと思はれます/\不審ふしん住家すみかなりと吉兵衞はあやしみながらも押入おしいれより夜具取出して次の間へこそふしたりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中硝子なかがらす障子しやうじごしに中庭なかにはまつ姿すがたをかしと絹布けんぷ四布蒲團よのぶとんすつぽりと炬燵こたつうちあたゝかに、美人びじんしやく舌鼓したつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれは何處いづこ小僧こそうどん雪中せつちゆうひと景物けいぶつおもしろし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
花と、絹布けんぷとは女こそ使用つかふなれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
柔かい絹布けんぷが包んでくれてる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麻、絹布けんぷ、毛織物
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
待遇もてなすやうなものではない、銚子ちょうしさかずきが出る始末、わかい女中が二人まで給仕について、寝るにも紅裏べにうら絹布けんぷ夜具やぐ枕頭まくらもとかおりこうく。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はじめにれる工夫くふう算段さんだんはじいてねばれぬものゝりにもはぬしないくらかぶせて上穗うはほ自己おのれ内懷中うちぶところぬく/\とせし絹布けんぷぞろひはゆゑものともおもはずお庇護かげちましたとそらをがみせし新築しんちく二階造にかいづくことば三年先さんねんさき阿房鳥あはうどり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)