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突飛
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とっぴ
ふりがな文庫
“
突飛
(
とっぴ
)” の例文
帝劇の屋根の上に
翁
(
おきな
)
の像が突っ立っていたのも同様であった。(震災前)はじめは何だか
突飛
(
とっぴ
)
な感じがしたがしかし直ぐ眼に馴れた。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「内惑星軌道半径⁉」このあまりに
突飛
(
とっぴ
)
な一言に眩惑されて、真斎は
咄嗟
(
とっさ
)
に答える
術
(
すべ
)
を失ってしまった。法水は厳粛な調子で続けた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
キャラコさんは、すこし
怖気
(
おじけ
)
がついてきた。自分が、いま、やりかけていることは、途方もなく
突飛
(
とっぴ
)
なことのように思われだして来た。
キャラコさん:09 雁来紅の家
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
待ち
焦
(
こが
)
るる人はここに来た、けれどもあんまり
突飛
(
とっぴ
)
です。夜の丑の刻に屋根伝いにここへ来るとは、お松の眼には、これも夢以上。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
信じない君こそ実に失敬じゃないか……とは云うものの、君が
一寸
(
ちょっと
)
信じないのも無理がないと思うよ。余りに俺の云うことが
突飛
(
とっぴ
)
だものネ
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
婆やを初め、附近の住民達は、もうその頃は噂の拡まっていた、この奇人の、世にも
突飛
(
とっぴ
)
な行動に、目を見はらないではいられなかった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今までポンプを押していた職工の一人が、
突飛
(
とっぴ
)
もない声で叫んだ。矢島は、ガックリと顔を伏せてその場へ坐り込んで
了
(
しま
)
った。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
その奔放な心持ちは、いまや、行きつくところを知らずに
混沌
(
こんとん
)
としている。けれども、この思い切った
突飛
(
とっぴ
)
の時代粧をわたしは愛し尊敬する。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そうかといって猫舌とか、鰐口とか、黒手とか赤足とかいったような
突飛
(
とっぴ
)
な名前を持出すと、その一つでも全篇の実感をワヤにする
虞
(
おそれ
)
がある。
創作人物の名前について
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
何かの
突飛
(
とっぴ
)
な
洒落
(
しゃれ
)
のように、夫人の言葉が聴えたからだ。すぐに人々は、前の話の続きにもどり、元気よくしゃべり出した。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
また自分の内心にそういう要求のないのに、唯その表面だけ
突飛
(
とっぴ
)
なことを
遣
(
や
)
る必要は無論ない。イミテーションで済まし得る人はそれで
宜
(
よろ
)
しい。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実験室が記憶力をもつなどというと、いかにも
突飛
(
とっぴ
)
な話のようである。しかし、実際に実験室の生活をした人には、その意味がわかるはずである。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その中に出て来る医者が、血液による父子の鑑別法を物語っていますが、実に
突飛
(
とっぴ
)
極まることを言っていますよ、まあよく御聞きなさい。こうです。
誤った鑑定
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
従来の浮世絵が取扱ひ来りし美麗なる画題中に極めて
突飛
(
とっぴ
)
なる醜悪の異分子を
挿入
(
そうにゅう
)
したる
一事
(
いちじ
)
は
甚
(
はなはだ
)
注意すべき事とす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それはいろんな人種の
音
(
おん
)
が
突飛
(
とっぴ
)
に入りまざったような名で、トニオ・クレエゲルは次の瞬間にもう忘れてしまった。「——でそいつは」と警官は続けた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
またもや
罰金
(
ばっきん
)
ごっこが始まったけれど、もう以前のような
突飛
(
とっぴ
)
な
振舞
(
ふるま
)
いも、悪ふざけも、
馬鹿騒
(
ばかさわ
)
ぎもなくて、——ジプシーめいた要素は消えうせていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
下谷
(
したや
)
西町
(
にしまち
)
で相変らずコツコツと自分の仕事を専念にやっている中に、妙なことで計らず少し
突飛
(
とっぴ
)
な思い附きで余計な仕事を遊び半分にしたことがあります。
幕末維新懐古談:62 佐竹の原繁昌のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
何にしろ与一の仕方が少し
突飛
(
とっぴ
)
だったから、それ
下
(
しも
)
として
上
(
かみ
)
を
剋
(
こく
)
する与一を撃てということになった。与一の弟の与二は大将として淀の城を攻めさせられた。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
孰
(
いず
)
れにしてもこの世にいない農奴に対して私が代金などを取るとお思いになるんですか? あなたがたとえそんな、いわば
突飛
(
とっぴ
)
なことをお考えになるにしても
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
不思議と言えば不思議、
突飛
(
とっぴ
)
と言えば突飛な考えではあったが、心に
編笠
(
あみがさ
)
を
冠
(
かぶ
)
る思いをして国を出て来た岸本には別にそれが不思議でもなく突飛でもなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
もっと
突飛
(
とっぴ
)
なのは、或る法律学者が、「人造人間の発明は、従来の法律を根柢から顛覆せしめるだろう」
人造人間
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
俊敏
(
しゅんびん
)
で
早熟
(
そうじゅく
)
の上に盲目になった結果として第六感の神経が
研
(
と
)
ぎ
澄
(
す
)
まされてもいたことを思うと必ずしも
突飛
(
とっぴ
)
な想像であるとはいえない気位の高い春琴は後に恋愛を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
『それはあなたが時々やる、
突飛
(
とっぴ
)
なふざけ方とよく似てるわ!』とプリムロウズは手をたたいて言った。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
たとい不真面目でも
突飛
(
とっぴ
)
でも、きっと何らかの新計画を立てたに相違ない。それは一種の興味ある問題であったが、惜しむらくは彼は大正の代を見ずして終った。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それがやや
突飛
(
とっぴ
)
な考えであるためか、人が信じないけれども、砂浜をねらって、風が強く吹けば、そこに幾日でも
碇泊
(
ていはく
)
するというようにして行けば行けるのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それは時として
突飛
(
とっぴ
)
な擬人法の挿入、時として客観的叙述の中へ作者の主観的抒情の挿入、また時として複雑な情景を簡明な一句で
截断
(
せつだん
)
する形をとる。二、三の例。——
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
私の
実家
(
さと
)
は少し地位もあり資産もあった方ですから私は浮世の風波を知らずに育って学校へ入ってからもその時分の教育法で
無闇
(
むやみ
)
に
突飛
(
とっぴ
)
な
高尚
(
こうしょう
)
な事ばかり習ったものです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
学資は出して貰わんでも好い、旅費だけ都合して貰いたい、私は其で上京して苦学生になると、
突飛
(
とっぴ
)
な事を言い出せば、父は
其様
(
そん
)
な事には同意が出来ぬという、それは圧制だ
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
相ついで私の一身上に起る数々の
突飛
(
とっぴ
)
の現象をも思い合せ、しかも、いま、この眼で奇怪の魔性のものを、たしかに見とどけてしまったからには、もはや、
逡巡
(
しゅんじゅん
)
のときでは無い
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
従来の知識を無視して
無闇
(
むやみ
)
に
突飛
(
とっぴ
)
な事を考えるような傾向を生ずる恐れがある。
研究的態度の養成
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
奇怪とも
突飛
(
とっぴ
)
ともみえましょう。しかし、よくよくお考え下さい、現在わたしたちが望んでいる朝鮮開国の一事を摂政(大院君のこと)に強要する途は、これ以外には絶対にありません。
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
震災後にはそれがいかに
突飛
(
とっぴ
)
なことでも、ただ可能でありさえすれば人を信じさせた。
例
(
たと
)
えば地震の予言は事前には人を信じさせる力を持たなかったが、事後には容易に人を信じさせた。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そんなものですからこれだけをお目にかけることは恥ずかしくていたされませんから、今度のような機会に持ち出しただけなのですが、私の行為が
突飛
(
とっぴ
)
なように評されないかと心配しております
源氏物語:17 絵合
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ツイこの頃の大阪の柳屋の目録にも紅葉の不養生訓という自筆の原稿が載っておる。どんなものか知らぬが弐百五拾円という
突飛
(
とっぴ
)
な価には驚かされる。紅葉の人気の高いのはこれを以ても証される。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
平馬のこの
突飛
(
とっぴ
)
な申出には、大分反対の声が湧いた。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「僕、しかし、あんまり
突飛
(
とっぴ
)
だと思います。」
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「君は工科ですね」相変らず質問は
突飛
(
とっぴ
)
だ。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それからかの女は
突飛
(
とっぴ
)
に言って仕舞った。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
けれども、このたびの慶事の噂が、お松の耳にはあまりに
突飛
(
とっぴ
)
に聞えたものですから、多少考えさせられないわけにはゆきませんでした。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ああ、大隅先生のお話なの。あの先生のお話では、当てにならないわ。よく
突飛
(
とっぴ
)
なことをいって、ひとを脅かすんですもの」
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この想像は非常に
突飛
(
とっぴ
)
な様だがね。しかし満更不可能な事ではない。
先
(
ま
)
ず当時の首泥坊と今日の百面相役者とが同一人物だと仮定するのだ。
百面相役者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
単に働くと云う決心が、第二を振り切るほど
突飛
(
とっぴ
)
でもなかったし、第一と交渉を絶つほど遠くにもいなかったと見える。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
赤坂離宮のいかにも御所らしく京都らしく見える
筋塀
(
すじべい
)
に対して
異国種
(
いこくだね
)
の楓の並木は何たる
突飛
(
とっぴ
)
ぞや。山の手の殊に堀近き処の往来には並木の用は更にない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
正木博士のそうした
突飛
(
とっぴ
)
な、
大袈裟
(
おおげさ
)
な行動の中に、解放治療の開設に関する何等かの準備的な御苦心が含まれている事は、
否
(
いな
)
まれない事実と考えられます。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は此処まで書きながら、私も母の望みを
満
(
みた
)
そうと、そんな考えを起した事が一再ならずあったので、この思いたちが
突飛
(
とっぴ
)
ではない、全く無理もないことだと肯定する。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
………ところで此れは甚だ
突飛
(
とっぴ
)
な質問で、失礼でございますけれど、先生のような日常生活、———静かに、孤独に、毎日書斎に閉じ籠って書物を友としていらっしゃる
蘿洞先生
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だいたいに
突飛
(
とっぴ
)
な空想はその場の人にはおかしくても、時が立つとすぐに不明になってしまう。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
だから、それを
突飛
(
とっぴ
)
な仕事と見なしている人たちを、ある程度まで是認せざるを得なかった。しかしそんなことは、彼に詩作を思い止まらせるだけの力はなかったのである……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
無限、無限!
突飛
(
とっぴ
)
にきこえるだろうが、おれは狂人じゃないよ。おれはねこの十年の間ルウレットの研究をしていた。屑箱の中の屑のようなものを喰って、寝る目も寝ずに計算ばかりしてたんだ。
黒い手帳
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
こんな
突飛
(
とっぴ
)
な大仕掛けな荒仕事となると一向見当が附きません。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
“突飛”の意味
《名詞》
出し抜けなこと。思いもよらないこと。
考えなどが奇抜なこと。
(出典:Wiktionary)
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
飛
常用漢字
小4
部首:⾶
9画
“突飛”で始まる語句
突飛物
突飛千万