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まなざし
ふりがな文庫
“
眼差
(
まなざし
)” の例文
平次は娘の
眼差
(
まなざし
)
に誘はれるやうに、默つて枕近く
膝行
(
ゐざ
)
り寄りました。顏半分包んではありますが、この娘の美しさはまさに拔群です。
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それを描き出したのは、往来で出会った一つの
眼差
(
まなざし
)
だったか、荘重な歌うような一つの声の抑揚だったか、それを彼は覚えなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
髯
(
ひげ
)
の中の一握りの束をしごき、
絨毯
(
じゅうたん
)
の上に
眼差
(
まなざし
)
を投げていたが、どうもちょうどKがレーニといっしょにころがった場所らしかった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
私は彼等の
見交
(
みかは
)
す
眼差
(
まなざし
)
を思ひ起す。そしてその光景によつて起された或る感情さへも、この瞬間、私の記憶に
甦
(
よみがへ
)
つて
來
(
く
)
るのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
執着の強い大陸人の眼だ。あまり気味のいゝ
眼差
(
まなざし
)
とは云はれない。もう拡大鏡なぞを使はず、所蔵の印を細かく
検
(
しら
)
べたりもしない。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
▼ もっと見る
けちけちした彼の
眼差
(
まなざし
)
は
紙片
(
かみきれ
)
だの鳥の
羽毛
(
はね
)
だのといったものに向けられて、そんなものばかり自分の部屋に寄せあつめているのである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「知らないわ。今来たばかりですもの。もう、大きい方でしょう、年の……」と夫人はからかうような
眼差
(
まなざし
)
で、木賀を見上げた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
半眼にひらいた
眼差
(
まなざし
)
と深い微笑と、悲心の挙措は、一切を放下せよというただ一事のみを語っていたにすぎなかったのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
俺は悲しい
眼差
(
まなざし
)
で女をみた。が、女は笑おうともしなかった。俺は遂に、うまうまと欺かれた俺を知った。泣きも泣けもしない気持であった。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
憂愁を
湛
(
たた
)
えた清らかな
眼差
(
まなざし
)
は、細く
耀
(
かがや
)
きを帯びて空中を見ていたが、栖方を見ると、つと美しい視線をさけて
外方
(
そっぽ
)
を向いたまま動かなかった。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その間も、師の
蒲衣子
(
ほいし
)
は一言も口をきかず、鮮緑の
孔雀石
(
くじゃくいし
)
を一つ
掌
(
てのひら
)
にのせて、深い
歓
(
よろこ
)
びを
湛
(
たた
)
えた穏やかな
眼差
(
まなざし
)
で、じっとそれを見つめていた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
小野 (いよいよ不気味そうに石ノ上の
眼差
(
まなざし
)
を
詮索
(
せんさく
)
して)石ノ上!……どう云うことなんだね、一体、君の云うその「あんなあな」とか云うのは?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
庄造は又、リヽーが始めてお産をした時の、あの訴へるやうなやさしい
眼差
(
まなざし
)
を、忘れることが出来ないのであつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
溢れる様な慈愛に満ちた
眼差
(
まなざし
)
でセカセカと娘の方を振返っては、「そんなに障子を明けると風邪を引くよ」とか、「さあ、お客様に汽車のお話でも聞くがいいよ」
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
彼は坑夫独特な、まばゆいような、黄色ッぽく
艶
(
つや
)
のない
眼差
(
まなざし
)
を漁夫の上にじっと置いて、黙っていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
刑事部長と捜査課長とは、非難をこめた
眼差
(
まなざし
)
で、無言のまま明智の顔を見つめるばかりであった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
悲愴
(
ひそう
)
な
眼差
(
まなざし
)
の中には、不可能事から来る
眩暈
(
めまい
)
と閉ざされたる楽園とに似た何かがあった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
袖口を持ちそえて
掌
(
て
)
を胸に押しあてる嬌姿、自由にしないそうな綺麗な指、頸筋の荒れた皮膚、瞬間に燃え立ったり消えたりする、而も押しの強いその
眼差
(
まなざし
)
、そしてその底の
操守
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それは、病んでゐるが、いつも私の中に生き生きとして存らへて居り、今かの女の
眼差
(
まなざし
)
を一ぱいに天の方へ、すべての変貌の行はれるかの処へと廻らして居る一人の女にである。
人工天国:J.G.F.に
(新字旧仮名)
/
シャルル・ピエール・ボードレール
(著)
「われ等を喚び起したまえ、われ等よりバッコスの祭を作りたまえ。」凡そ生きとし生けるものは彼を慕い、言葉は出さねども、彼の
眼差
(
まなざし
)
をうち見つめつつ、かくは叫んだのだ。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
遠野が
微笑
(
ほゝゑ
)
みながら彼の肩を叩いた。その意味あり気な
眼差
(
まなざし
)
を見ると彼は一層苛立つた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
ぼんやり水平線を見てゐるやうな
眼差
(
まなざし
)
で、ぶらぶら歩いた。落葉が風にさらはれたやうに、よろめき、資生堂へはひつた。資生堂のなかには、もう灯がともつてゐて、ほの温かつた。
火の鳥
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
澄み切って、涙もうかべない夫人の
眼差
(
まなざし
)
が、きりっと、少し腹立たしげにうごいた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
動かぬ
眼差
(
まなざし
)
でじっと眼のなかをのぞきこまれると、みなふしぎな酔心持を感じる。
青髯二百八十三人の妻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「太郎ちゃんは
何処
(
どこ
)
にいるか知らないよ」——私はその時初めてその小さな子供は私の呼んだ男の子の弟であるのに気がついたのだ。しかし何という同じような顔、同じような
眼差
(
まなざし
)
、同じような声。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
夜光
(
やくわう
)
の玉の
眼差
(
まなざし
)
のエロディヤッドの影を拜す
エロディヤッド
(旧字旧仮名)
/
ステファヌ・マラルメ
(著)
つくづく見入る
眼差
(
まなざし
)
は、
匠
(
たくみ
)
が
彫
(
ゑ
)
りし像の眼か
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
どうなるだらう? あの方の
眼差
(
まなざし
)
が私に與へ得る生命を私が今一度味はうといふことが誰を傷けるか? こんな
譫言
(
たはごと
)
を云つてまあ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それから、これまでは非常に親しげにしてはいたが見せなかった、信じきったような
眼差
(
まなざし
)
をして、Kを見て、言葉を付け加えた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
高田の鋭く光る
眼差
(
まなざし
)
が、この日も弟子を前へ押し出す
謙抑
(
けんよく
)
な態度で、句会の場数を踏んだ彼の
心遣
(
こころづか
)
いもよくうかがわれた。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
赤前垂は
外
(
はづ
)
しましたが、貧しい木綿物の單衣も、素足の可愛らしい
踝
(
くるぶし
)
も、人を恐れぬ野性的な
眼差
(
まなざし
)
も、お大名の土佐守には、全く美の新領土です。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ゆったりと弧をひいた
眉
(
まゆ
)
、細長く水平に切れた半眼の
眼差
(
まなざし
)
、微笑していないが微笑しているようにみえる
豊頬
(
ほうきょう
)
、その優しい典雅な
尊貌
(
そんぼう
)
は無比である。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
庄造は又、リヽーが始めてお産をした時の、あの訴へるやうなやさしい
眼差
(
まなざし
)
を、忘れることが出来ないのであつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼女の姿が見えなくなると、彼はその未知の
眼差
(
まなざし
)
から心の中にうがたれた空虚を感じた。彼にはその理由がわからなかった。しかし空虚は存していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
遠のいて行く験者達の呼ばい声の方に何やら吸い寄せられるような
眼差
(
まなざし
)
を向けて、立っている。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
あやしながら其の顏に見入る
眼差
(
まなざし
)
に至つては、子供一般に對して婦人の
有
(
も
)
つ愛情とは全く別な激しさを以て爛々と燃え、複製を通じて原畫を想像しようとする畫家の眼と雖も
かめれおん日記
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
荷車のうへに高く押し立てられた
枠
(
わく
)
のあひだからは、けばけばしい模様を描いた丼や擂鉢の類が自慢さうに顔をのぞけては、はで好きな連中の物欲しさうな
眼差
(
まなざし
)
を牽きつけてゐた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
ぼんやり水平線を見ているような
眼差
(
まなざし
)
で、ぶらぶら歩いた。落葉が風にさらわれたように、よろめき、資生堂へはいった。資生堂のなかには、もう灯がともっていて、ほの温かった。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一人がしかめた
眼差
(
まなざし
)
で、ウインチを見上げて、「
然
(
しか
)
しな……」と
躊躇
(
ため
)
らっている。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
痩
(
や
)
せた面長の、アゴ
鬚
(
ひげ
)
をつけた、大きな深い
眼差
(
まなざし
)
の、そして背の高いフランス紳士でした。アマタルは狼狽して血の気を失ひました。彼の手から落ちた鋏は大きな音を立てて石畳に落ちました。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
眼差
(
まなざし
)
は明るい空の方に向けている。ジヤニイノ髪を繊手にて
撫
(
な
)
でる。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
そうして淀まぬ
眼差
(
まなざし
)
で俺の顔を
瞶
(
みつ
)
め、愛らしく首をかしげながら
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
つくづく見入る
眼差
(
まなざし
)
は、
匠
(
たくみ
)
が
彫
(
ゑ
)
りし像の眼か
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
Kは女中の言うことを考えこんだようにじっと聞いていたが、ほとんど
嘲笑
(
ちょうしょう
)
的な
眼差
(
まなざし
)
をして、驚いているグルゥバッハ夫人のほうに振返った。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
今、私を見上げてゐるあなたの
眼差
(
まなざし
)
が信頼と眞實と熱情で非常に崇高だからだと思ふ。何か精靈が私の傍にゐるやうで堪へられない氣持がする。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
赤前垂
(
あかまえだれ
)
は
外
(
はず
)
しましたが、貧しい木綿物の
単衣
(
ひとえ
)
も、素足の可愛らしい
踝
(
くるぶし
)
も、人を恐れぬ野性的な
眼差
(
まなざし
)
も、お大名の土佐守には、全く美の新領土です。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
庄造は又、リリーが始めてお産をした時の、あの訴えるようなやさしい
眼差
(
まなざし
)
を、忘れることが出来ないのであった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
消えてゆく雲の上に
虹
(
にじ
)
が輝き出していた。涙に洗われたようないっそう滑らかな空の
眼差
(
まなざし
)
が、雲を通して
微笑
(
ほほえ
)
んでいた。それは山上の静かな夕べであった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いつかは来る
滅亡
(
ほろび
)
の前に、それでも
可憐
(
かれん
)
に花開こうとする
叡智
(
ちえ
)
や
愛情
(
なさけ
)
や、そうした数々の
善
(
よ
)
きものの上に、師父は絶えず
凝乎
(
じっ
)
と
愍
(
あわ
)
れみの
眼差
(
まなざし
)
を
注
(
そそ
)
いでおられるのではなかろうか。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
和作の方が
却
(
かへ
)
つて、そんな事をしてもいいのか知らといふ様な
眼差
(
まなざし
)
を徳次郎に向けなければならなかつた。しかし徳次郎は妹の世話には冷淡だつたし、第一学科のことはあまり得意でなかつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
眼
常用漢字
小5
部首:⽬
11画
差
常用漢字
小4
部首:⼯
10画
“眼”で始まる語句
眼
眼鏡
眼前
眼瞼
眼窩
眼球
眼眸
眼色
眼覚
眼力