目印めじるし)” の例文
お前は、毒菓子から目印めじるしの赤い飾り種をけづり取り、懷ろ紙か何かに包んで持つて來る途中、小窓をまたぐとき敷居にこぼしたことだらう。
「——かぶとをおりなさい。あなたの朱金の盔は、燦として、あまりに赤いから眼につきます。敵の目印めじるしになります」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右に分業といったが、すなわち、花盤かばん上にある小花はもっぱら生殖をつかさどり、周辺にある舌状ぜつじょう小花は、昆虫に対する目印めじるし看板かんばんあわせて生殖を担当たんとうしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
さてまた洞は岩畳み、鬼蔦おにづたあまたひつきたれど、ほとりにえのきの大樹あれば、そを目印めじるしに討入りたまへ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
よつ三升みます目印めじるし門前もんぜんいちすにぞ、のどづゝ往来わうらいかまびすしく、笑ふこゑ富士ふじ筑波つくばにひゞく。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
こうしておけば、スコールがあがったあとも、この場所へもどって来るのにいい目印めじるしになる。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
浜町はまちょう細川邸ほそかわてい裏門前うらもんまえを、みぎれて一ちょうあまり、かど紺屋こうやて、伊勢喜いせきいた質屋しちやよこについてまががった三軒目げんめ、おもてに一本柳ぽんやなぎながえだれたのが目印めじるし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
初音町はつねてうといへばゆかしけれど、をうぐひすの貧乏町びんばうまちぞかし、正直しやうじき安兵衛やすべゑとてかみ此頭このかうべ宿やどたまふべき大藥罐おほやくわんひたいぎはぴかぴかとして、これを目印めじるし田町たまちより菊坂きくざかあたりへかけて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あとから、こっちへとんでくるおともだちにらせる目印めじるしにしたのかもしれませんね。それでなければ、あまりあかくてきれいなだから、べるのがしくてしまっておいたのかもしれません。
赤い実 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さめと存じ候處其金は目印めじるし極印ごくいんありしとは夢にも存じ申さず小兵衞がつかひ候より事あらはれ斯の仕合しあはせに相成候段是ぞ天罰てんばつにて恐れ入奉り候と少しも未練みれんなく一々白状に及びける故大岡殿神妙しんめうなりと申され又小兵衞に向はれ只今仁左衞門が申に相違なきやと尋ねらるゝに小兵衞も是非ぜひなしと覺悟かくご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と言つても目印めじるしの井戸のあつたのは坂下で、其處で逢引あひびきしようといふのは、少し薄寒くもありましたが、そんなことを考へても居られません。
はあ、そりゃけえ、一ツきゅう他国たこくにはねえ灸ですから、目印めじるしといえば、そんなもンぐらいでございます
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法網ほうもうをくぐるために、酒瓶さかびんの如きも普通のウイスキーの壜に入れ、ただレッテルの上に、玄人くろうとでなければ判らない目印めじるしを入れてある。こうした妖酒ようしゅのあることは君にも判るだろう
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、申譯ないことだが、私は酒だけはやかましくてなだ一本を、徳利に目印めじるしをつけて、私の分にして置きました」
それに、何かその子に目印めじるしでもあれば、なお手がかりとなって、人からもおしえてくれぬかぎりもない
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも夜中の或る時刻に団員をその入口へ案内してくれる機関があるらしかったが、その様子は分明ぶんめいでない。多分団員の服装か顔かに目印めじるしをつけて、その団員が通るところを家の中から見ている。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蛇、蛙、なめくぢの暗號は、地下に埋めた小判の目印めじるしに置いた、庭石の恰好で、この暗號のない金は、黒旋風こくせんぷうの辰三とお久良が、盜るに従つて費つたものでせう。
すなわち、時遷は空櫃を負って、梁山泊までの陸路をただの旅人のように旅籠はたご泊りをかさねて行く。泊り先の宿屋の軒には、かならず目印めじるしとして、白墨はくぼくでどこかへ丸を描いて残しておく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒バラの目印めじるし
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
「金に目印めじるしが無いから、急のことではむづかしい。尤もお前に少しは心當りでもあるなら別だが——」
「霧の小路はうす暗い。抜け駈けせんと、町辻を踏みたがえるな。——本能寺の森は、さいかちの木が目印めじるしぞ。その大竹藪おおたけやぶを、雲のすきに目あてとせよ。あれだ。あれこそ、本能寺のさいかちの木」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五百両持出させた晩、竹竿たけざおで菊次郎をなぐり殺したが、五百両という小判を持ち運ぶ工夫はない、お銀は舟は漕げないから、川に沈めて竿を立てて目印めじるしにして置いたのだ。
服装の目印めじるし、どうやら徳川家とくがわけ斥候ものみらしいが、きょう、天子てんしたけに着陣したばかりなのに、はやくもこのへんまで斥候の手がまわってきたとはさすが、海道一の三河勢みかわぜい、ぬけ目のないすばやさである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折つたが、眼の前の大川が流れてゐることに氣が付かなかつたんだ。ちよつと出て俺の立てた目印めじるしのあたりを覗いて見ねえ、底に脇差が一ふり沈んでゐるのが、よく見えるぜ
その毒菓子から目印めじるしを削り取つたのを、お孃さんに喰べさせる氣でやつた仕事だ。太てえ野郎だ
飛脚ひきやくが氣をきかしてくれたんですよ。親分の手紙を見ると、早駕籠はやかごで、夜晝おつ通しに飛んで來たが、あんまり急いで、小田原の旅籠屋の目印めじるしを見落すところでしたよ」
「毒の入つて居る菓子には、何か目印めじるしがついてゐたに違げえねえと思ふんだが」
「その代り、小判には、目印めじるしがあります」