白金しろかね)” の例文
ちょうど三月の末、麦酒ビール会社の岡につづいた桜のつぼみほころびそめたころ、私は白金しろかねの塾で大槻医師が転居するという噂を耳にした。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
牛島の弘福寺といえば鉄牛てつぎゅう禅師の開基であって、白金しろかねの瑞聖寺とならんで江戸に二つしかない黄蘗風の仏殿として江戸時代から著名であった。
折りから西南の風が強かったので、その火は白金しろかね麻布あざぶ方面から江戸へ燃えひろがり、下町全部とまるうちを焼いた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれども夕日と東京の美的関係を論ぜんには、四谷よつや麹町こうじまち青山あおやま白金しろかね大通おおどおりの如く、西向きになっている一本筋の長い街路について見るのが一番便宜である。
しかたがないから、白金しろかねへまわって、ここもやっぱり金比羅勧請の、高松の松平讃岐守まつだいらさぬきのかみの上屋敷。植木の露店なども出て、たいへんな人出なんだが、ここもいけない。
松浦君も、わたしも、十六歳から二十歳へかけての年ごろを白金しろかねの明治学院に送ったなかまです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「六日の茶会さかいを外したら、いて及ばぬことにもなりましょう。それがすめば、さっそく白金しろかねの上杉家の別邸へ引移られるはずだと、たしかな筋から聞き及んでもいますからな」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
やしろを塗り、番地に数の字をいた、これが白金しろかねの地図でと、おおせで、老人の前でお手に取ってひらいて下され、尋ねますうちを、あれか、これかと、いやこの目のうといを思遣おもいやって
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お峰が主は白金しろかね臺町だいまちに貸長屋の百軒も持ちて、あがり物ばかりに常綺羅じやうきら美々しく、我れ一度お峰への用事ありて門まで行きしが、千兩にては出來まじき土藏の普請、羨やましき富貴ふうきと見たりし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一 小島ではひの木さわらで門立かどたてゝ、是ぞ目出たい白金しろかねの門
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
六月六日 芝白金しろかね般若苑はんにゃえん
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
白金しろかねの形等が浮び出て
白金しろかね古刹こさつ瑞聖寺ずいしょうじの裏手も私には幾度いくたびか杖を曳くに足るべきすこぶ幽邃ゆうすいなる崖をなしている。
君が日本橋久松町ひさまつちょうの小学校へ通われる頃は、私は白金しろかねの明治学院へ通った。君と私とはほとんど兄弟のようにして成長して来た。私が木曾の姉の家に一夏を送った時には君をも伴った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのはずの事で、水上みなかみ滝太郎さんが白金しろかねの本宅に居た時分通ったと思うばかり、十五六年いや二十年もっとになる。秋のたそがれを思い出す。三田台の坂も今と違って、路は暗し、水は寂しい。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
額を合せて談合の妻は人仕事に指先より血をいだして日に拾銭じつせんの稼ぎも成らず、三之助に聞かするとも甲斐なし、お峯がしゆう白金しろかね台町だいまちに貸長屋の百軒も持ちて、あがり物ばかりに常綺羅じやうきら美々しく
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黄金こがね白金しろかね花が咲く
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
みねしゆう白金しろかね臺町だいまち貸長屋かしながやの百けんちて、あがりものばかりにじやう綺羅きら美々びゝしく、れ一みねへの用事ようじありてかどまできしが、千りやうにては出來できまじき土藏どざう普請ふしんうらやましき富貴ふうきたりし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すこしお歩行あるきなさい、白鷺しらさぎは、白金しろかね本家ほんけしば)のにはへもますよ。」つい小岩こいはから市川いちかはあひだひだり水田すゐでんに、すら/\と三羽さんばしろつまつて、ゆきのうなじをほつそりとたゝずんでたではないか。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大正五年七月九日先生のいまだおおやけにせられざるに先立ち馬場孤蝶ばばこちょう君悲報を二、三の親友に伝ふ。余倉皇そうこうとして車を先生が白金しろかねていに走らするに一片の香煙既に寂寞として霊柩れいきゅうのほとりに漂へるのみ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)