物陰ものかげ)” の例文
驚怖きやうふあま物陰ものかげ凝然ぢつ潜伏せんぷくしてとりつぎあさやうやとりむれまじつてあるいたけれどいくらかまだ跛足びつこいてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
福徳の大神おほかみに祈誓をかけたからで、その證據にはあの男が繪を描いてゐる所を、そつと物陰ものかげから覗いて見ると必ず陰々として靈狐の姿が、一匹ならず前後左右に
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしはえを取りつくすことはほとんど不可能ふかのうに近いばかりでなく、これを絶滅ぜつめつすると同時に、うじもこの世界から姿すがたを消す、するとそこらの物陰ものかげにいろいろの蛋白質たんぱくしつ腐敗ふはいして
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
狂風一陣きやうふういちぢんこずゑをうごかしてきたつたをりには、父樣とうさん母樣かあさん兄樣にいさんれも後生ごしやうかほせてくださるな、とて物陰ものかげにひそんでく、こゑはらわたしぼすやうにてわたしわる御座ござりました
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
随分僕を教育する上には苦心したようでした。けれども如何どういうものか僕は小児こどもの時分から学問がきらいで、たゞ物陰ものかげ一人ひとり引込んで、何をかんがえるともなく茫然ぼんやりして居ることが何よりすきでした。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ふいに、物陰ものかげから躍り出て、漆間うるしまぞう六が前に立った。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「危い。みんな、物陰ものかげにかくれろ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれいまさかんあつあふいだはなつてにはか物陰ものかげさがさうとするものゝやうにひど勝手かつてちがつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
福徳の大神おほかみ祈誓きせいをかけたからで、その証拠にはあの男が絵を描いてゐる所を、そつと物陰ものかげから覗いて見ると、必ず陰々として霊狐の姿が、一匹ならず前後左右に
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つぎあさからきら/\とつた。あたゝかい日光につくわう勘次かんじ土間どままでつた。地上ちじやうすべやはらかな熱度ねつどもつされた。物陰ものかげに一たもつてゆつくりしたゆきあわてゝけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)