洗湯せんたう)” の例文
その内田博士が、ある時京都の洗湯せんたうへ出掛けて往つて湯槽ゆぶねのなかで泳ぎ廻つてゐた事があつた。
あとれい快活くわいくわつなる武村兵曹たけむらへいそうがやつてて、武骨ぶこつなる姿すがた親切しんせつに、吾等われら海水かいすいみ、天日てんぴこがされて、ぼろ/\になつた衣服ゐふく取更とりかへやら、洗湯せんたう世話せわやら、日出雄少年ひでをせうねんためには
なつさかりながれかけ、いつもならば洗湯せんたうき、それから夕飯ゆふめしをすますとともに、そろ/\かせぎに出掛でかける時刻じこくになるのであるが、道子みちこがけにいたまゝの夜具やぐうへよこたはると
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ある日曜にちえうひる宗助そうすけひさりに、四日目よつかめあかながすため横町よこちやう洗湯せんたうつたら、五十ばかりあたまつたをとこと、三十だい商人あきんどらしいをとこが、やうやはるらしくなつたとつて、時候じこう挨拶あいさつはしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
伯母をば「あすこには洗湯せんたうもあつたでせう。」
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いとひの聟入むこいり祝言しうげん表向おもてむきにせず客分きやくぶんもらうけたるがもとより吝嗇の五兵衞なれば養父子の情愛じやうあひ至てうすく髮も丁稚小僧同樣に一ヶ月六十四文にて留置とめおき洗湯せんたうへは容易に出さず内へ一日おいて立る程なれば一事が萬事にても辛抱しんばうが出來兼る故千太郎は如何はせんと思案の體を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とかせてかどへ立出あれに見ゆるが洗湯せんたうなれば親子で緩々ゆる/\這入はひつて來なと心切しんせつめかして長庵が深くも計る待遇もてなしぶりだまさるゝとは夢にも知ず斯迄かくまでに長庵が心のやさしく成しのはうれしき事と十兵衞は娘お文にも安心させいそ/\として出行いでゆきしがしばらくしてよりもどめづらしくは候はねど遠路ゑんろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)