水滸伝すいこでん)” の例文
それは二十六年の盆興行で、通し狂言が円朝物の「榛名梅香団扇画はるなのうめかおるうちわえ」で、ほかに中幕として大晏寺堤だいあんじづつみ水滸伝すいこでんのだんまりが付いていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「安心するがいい。誰が紅楼夢だときめたよ、一人で慌てているんじゃないか。一雪の習ってるのは水滸伝すいこでんだとさ、白文でね。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筆を『水滸伝すいこでん』の人物その他の方面に転じたりといへども、今日こんにちの批評眼を以てこれを見ればこは彼に取りてはかへつて幸福なりしなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ねえ、どうしてもこれは水滸伝すいこでんにある図だらう。おもふに、およそ国利をまもり、国権を保つには、国際公法などは実は糸瓜へちまの皮、要は兵力よ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
水滸伝すいこでんのように思われたり、又風情ごのみのように言われたりしたようであるが実際はもっと素朴で無頓着むとんじゃくであったのだろうと想像する。
智恵子の半生 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
身の丈五尺九寸もある大入道おおにゅうどう大眼玉おおめだま。容貌いたって魁偉かいいで、ちょうど水滸伝すいこでん揷絵さしえにある花和尚魯智深かおしょうろちしんのような面がまえ。
羅貫中らかんちゅうは「水滸伝すいこでん」を著わして、そのために子孫三代にわたっておしの児が生まれ、紫式部は「源氏物語」を著わして、一度は地獄にまでおちたが
特に『水滸伝すいこでん』などを講義して居士の認めて山とするものを指示してくれたが、今日から見るとその山なるものはよほど境界の狭いものであった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
殊に川島は『三国志』か『水滸伝すいこでん』からでも抜け出して来たような豪傑肌だったから他にも容れられず自らも求めようともしないで陋巷ろうこうに窮居し
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
早い話が八犬伝は、手もなく水滸伝すいこでんの引き写しじゃげえせんか。が、そりゃまあ大目に見ても、いい筋がありやす。なにしろ先がからの物でげしょう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何でも二人で水滸伝すいこでんの話にしきりにうち興じて居た様であったが、為朝はあれで中々学者だと云って感心して居た。
また普通の凧の絵は、達磨、月浪つきなみ童子格子どうじごうし、日の出に鶴、雲龍うんりゅう玉取龍たまとりりゅうこい滝上たきのぼり、山姥やまんばに金太郎、あるいは『三国志さんごくし』や『水滸伝すいこでん』の人物などのものがある。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
あれは『水滸伝すいこでん』の豪傑、没羽箭張清ぼつうせんちょうせいから思いついたことで、張清が錦の袋に入れた小石を腰に下げて、その石を飛ばして『水滸伝』の逵傑を片っ端から悩ませ
「宇治拾遺物語」中の「三河入道遁世の事」、「世尊寺に死人を掘出す事」、「新著聞集しんちょもんしゅう」中の「僧屍肉を噉ふ」、「水滸伝すいこでん」、「剪灯新話」中の「天台訪陰録てんだいほういんろく
雨月物語:04 解説 (新字新仮名) / 鵜月洋(著)
映画でも西洋物が喜ばれる今日、三国志ごくし水滸伝すいこでんとは思いきっている。それもお談義入りだから、正三君も自然逃げ足になる。若様がたにいたってはしゃにむにだ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これは去年病中に『水滸伝すいこでん』を読んだ時に、望見前面、満目蘆花、一派大江、滔々滾々、正来潯陽江辺、只聴得背後喊叫、火把乱明、吹風胡哨趕将来、という景色が面白いと感じて
句合の月 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
水滸伝すいこでん中の人の如き成をしてこの言をさしむ、燕王も亦悪戦したりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あの少女が美しいかどうかとかれて平気で返事の出来る青年は、恋愛遊戯に疲れた不良連中か、又は八犬伝や水滸伝すいこでんに出て来る性的不能患者の後裔こうえいだからね……しかし君はあの少女を
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
百八の熒惑星けいわくせいが、封を破って地上に宿命し、やがてその一星一星が人間として、かの梁山泊りょうざんぱくを形成し、ついに宋朝の天下を危うくするという大陸的構想の中国水滸伝すいこでんは、以上の話を発端として
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水滸伝すいこでん花和尚かおしょう魯智深ろちしんくやと見えるのであった。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「何だか水滸伝すいこでんのようなおもむきじゃありませんか」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
刪正さんせいしてついに公にすることとなりぬ合作の名はあれどもその実四迷大人の筆に成りぬ文章の巧なる所趣向の面白き所はすべて四迷大人の骨折なり主人の負うところはひとり僭越のとがのみ読人うその心してみそなわせついでながら彼の八犬伝水滸伝すいこでんの如き規摸の目ざましきを
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
独眼龍どくがんりゅうなどという水滸伝すいこでん式の渾名あだなを付けないでも、偉いことはたしかに判っている。その偉い人の骨は瑞鳳殿ずいほうでんというのにおさめられている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
水滸伝すいこでんのやうに思はれたり、又風情ふぜいごのみのやうに言はれたりしたやうであるが実際はもつと素朴で無頓着むとんちやくであつたのだらうと想像する。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
わたくしは病床で『真書太閤記しんしょたいこうき』を通読し、つづいて『水滸伝すいこでん』、『西遊記』、『演義三国志』のような浩澣こうかんな冊子をよんだことを記憶している。
十六、七のころ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひとりで寂しい昼飯をすませた彼は、ようやく書斎へひきとると、なんとなく落ち着きがない、不快な心もちを鎮めるために、久しぶりで水滸伝すいこでんを開いて見た。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「宇治拾遺物語」中の「三河入道遁世の事」、「世尊寺に死人を掘出す事」、「新著聞集しんちょもんしゅう」中の「僧屍肉を噉ふ」、「水滸伝すいこでん」、「剪灯新話」中の「天台訪陰録てんだいほういんろく
ただ、銭形が銭をほうるということは『水滸伝すいこでん』から暗示を受けた。『水滸伝』の没羽箭張清ぼつうせんちょうせいが錦の袋からつぶてを出して投るということから銭形平次の投げ銭を考え出した。
平次と生きた二十七年 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
の書のたいたるや、水滸伝すいこでん平妖伝へいようでん等に同じといえども、立言りつげんは、綱常こうじょう扶植ふしょくし、忠烈を顕揚するに在りというをもって、南安なんあんの郡守陳香泉ちんこうせんの序、江西こうせい廉使れんし劉在園りゅうざいえんの評、江西の学使楊念亭ようねんていの論
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いて何かの聯想を思い出させれば、やはり名所の雪を描いた古い錦絵か、然らずば、芝居の舞台で見る「吉野山よしのやま」か「水滸伝すいこでん」の如き場面であろう。
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この情熱を彼に教えたものは父の本箱の底にあった帝国文庫本の水滸伝すいこでんだった。頭ばかり大きい小学生は薄暗いランプの光のもとに何度も「水滸伝」を読み返した。
例の水滸伝すいこでんのごとき大作も現われて居りますが、今晩のお催しの御趣意からますると、戯曲は勿論例外であり、小説の方面にも多く採るべきものを見いだし得ないのは残念でございます。
いろいろ考えているうちに、ふと浮かんだのが水滸伝すいこでんである。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
畑銀雞はたぎんけいの『江戸文人寿命附』という俗書に「講釈もわけて手に入る水滸伝すいこでん江戸に名をえし大人うしの小説」としてある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
石榴口には花鳥風月もしくは武者絵などがいてあって、私のゆく四丁目の湯では、男湯の石榴口に水滸伝すいこでん花和尚かおしょう九紋龍くもんりゅう、女湯の石榴口には例の西郷桐野篠原の画像が掲げられてあった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
石榴口には花鳥風月かちょうふうげつもしくは武者絵などが画いてあって、私のゆく四丁目の湯では、男湯の石榴口に『水滸伝すいこでん』の花和尚かおしょう九紋龍きゅうもんりゅう、女湯の石榴口には例の西郷・桐野・篠原の画像が掲げられてあった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)