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歸途
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きと
彼は
小さな
怪我人から
聯想して
此れも
毎日庭の
木を
覘つて
居る
與吉を
憂へ
出した。
彼は
脚力の
及ぶ
限り
歸途を
急いだ。
既に
塔の
建立も
終つたので、
最早歸途に
向ふ
一方である。
往復五日の
豫定が、
其二日目には
首尾よく
歸終に
就くやうになつたのは、
非常な
幸運である。
元來——
歸途に
此の
線をたよつて
東海道へ
大𢌞りをしようとしたのは、……
實は
途中で
決心が
出來たら、
武生へ
降りて
許されない
事ながら、そこから
虎杖の
里に
圍者の
相談とおぼしけれど、
懲りて
詮議に
及ばず。まだ
此方が
助りさうだと
一笑しつゝ
歸途に
就く。
貴下の
委任を
受けたる
紀念塔の
建立は、
首尾よく
成就したれども、
其歸途、
吾等は
自ら
招きたる
禍によりて、
貴下が
住へる
海岸より、
東方大約三十
里の
山中にて、
恐る
可き
砂すべりの
谷に
陷落せり