横須賀よこすか)” の例文
旅に限りがあって、そう長い江戸の逗留とうりゅうは予定の日取りが許さなかった。まだこれから先に日光にっこう行き、横須賀よこすか行きも二人を待っていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
家康は次ぎのへ声をかけた。遠州えんしゅう横須賀よこすか徒士かちのものだった塙団右衛門直之はいつか天下に名を知られた物師ものしの一人に数えられていた。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
目と鼻の横須賀よこすかにあたかも在勤せる武男が、ひまをぬすみてしばしば往来するさえあるに、父の書、伯母、千鶴子の見舞たえ間なく、別荘には
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今度のいくさおもい出した、多分太沽たいくう沖にあるわが軍艦内にも同じような事があるだろうと思うからお話しすると、横須賀よこすかなるある海軍中佐の語るには
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それで、大小二個の清水せいすいタンクを造って、よい飲料水を、横須賀よこすかの海軍専用の水道から、分けてもらうことにした。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
横須賀よこすか造船所を差押えたフランスの債権を解除するための五十万円を横浜のイギリス系オリエンタル・バンクから新政権に融通したのがはじまりである。
明治の五十銭銀貨 (新字新仮名) / 服部之総(著)
面白おもしろいのは、Tじょちちが、海軍将校かいぐんしょうこうであっために、はしなくも彼女かのじょ出生地しゅっしょうちがその守護霊しゅごれい関係かんけいふか三浦半島みうらはんとうの一かく横須賀よこすかであったことであります。
「先生、いまラジオが臨時ニュースを放送しています。横須賀よこすかのちかくにある火薬庫が大爆発したそうです」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夜は十時に近かったがまだ湯本行の電車はあるように思った。もし、横須賀よこすか行の汽車に間に合わなかったら、国府津こうづか小田原かで、一泊してもいゝとさえ思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
横須賀よこすか以下、東京湾の入口に近い千葉県の海岸、京浜間けいひんかん、相模の海岸、それから、伊豆いずの、相模なだに対面した海岸全たいから箱根はこね地方へかけて、少くて四寸以上のゆれ巾
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
観音崎かんのんざきの燈台、浦賀、横須賀よこすかなどの燈台や燈火が痛そうにまたたいているだけであった。しけのにおいがやみの中を漂っていた。落伍らくごした雲の一団が全速力で追っかけていた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
遠州の海辺寄りに横須賀よこすかという町があります。そこで売るたこは珍らしいものであります。形が他になく、丸型と扇型とが上下二段につながっていて、よく巴紋ともえもんなどを描きます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
月の末方すえがたには、除隊の兵士が帰って来る。近衛か、第一師団か、せめて横須賀よこすかぐらいならまだしも、運悪く北海道三界旭川あさひがわへでもやられた者は、二年ぶり三年ぶりで帰って来るのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
五年ごねんまへかれ横須賀よこすか軍港ぐんかうおいなが袂別わかれわたくしぐるときかれ决然けつぜんたる顏色がんしよくもつつたです「いまより五ねんのちには、かなら一大いちだい功績こうせきてゝ、きみ再會さいくわいすること出來できるだらう」
最近よく往復することになった横須賀よこすか行きのこの列車は、葉子と同伴の時も一人の時も、庸三にとって決して楽しいものではなかったが、今夜も彼はどこかせいせいしたような気分の底に
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
横須賀よこすかと覚しき方向に向って歩き出すのでした。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
横須賀よこすか玉藻会。浦賀ドック寮。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それから最近には鎌倉かまくらすまつて横須賀よこすかの学校へかよふやうになつたから、東京以外の十二月にも親しむことが出来たといふわけだ。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの報知しらせはわたしの方へも早く来ました。ほら、横須賀よこすかの旅に、あの辺は君と二人で歩いて通ったところなんですがね。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
加藤子爵夫人が急を報ぜしその書は途中にき違いて、もとより母はそれと言い送らねば、知る由もなき武男は横須賀よこすかに着きていとまるやいな急ぎ帰り来たれるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「そうだ、横須賀よこすかの軍港へ下りるように、この塔をとばしてくれ」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
半蔵が江戸から横須賀よこすか在へかけての以前の旅の連れは妻籠つまご本陣の寿平次であったことまでよく覚えていた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一等戦闘艦××は横須賀よこすか軍港のドックにはいることになった。修繕工事しゅうぜんこうじは容易にはかどらなかった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「そう? 横須賀よこすかからもちょうどそう言って来てね……」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
初めて一緒に江戸への旅をして横須賀よこすか在の公郷村くごうむらに遠い先祖の遺族をたずねた青年の日から、今はすでに四十二歳の厄年やくどしを迎えるまでの半蔵を見て来た寿平次には
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある曇った冬の日暮である。わたくし横須賀よこすか発上り二等客車のすみに腰を下して、ぼんやり発車の笛を待っていた。とうに電燈のついた客車の中には、珍らしく私の外に一人も乗客はいなかった。
蜜柑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
横須賀よこすか造船所の経営に、陸軍の伝習に、フランス語学所の開設に、海外留学生の派遣に、ロセスが幕府に忠告したり種々さまざまな助力を与えたりしたことは一度や二度にとどまらない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
Sはこう云う問答の中も不安らしい容子ようすを改めなかった。A中尉は彼を立たせていたまま、ちょっと横須賀よこすかの町へ目を移した。横須賀の町は山々の中にもごみごみと屋根を積み上げていた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いよいよ慶応元年のはじめより経営の端緒についた横須賀よこすかの方の新しい造船所をさす。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一等戦闘艦××の横須賀よこすか軍港へはいったのは六月にはいったばかりだった。軍港を囲んだ山々はどれも皆雨のために煙っていた。元来軍艦は碇泊ていはくしたが最後、ねずみえなかったと云うためしはない。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼も隣宿妻籠つまご本陣の寿平次じゅへいじと一緒に、江戸から横須賀よこすかへかけての旅を終わって帰って来てから、もう足掛け三年になる。過ぐる年の大火のあとをうけて馬籠の宿しゅくもちょうど復興の最中であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)