椽側えんがは)” の例文
そのうまがさ、わしべつうまめづらしうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまつて手持不沙汰てもちぶさたぢやからいまいてかうとするとき椽側えんがはへひらりと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこへおともだちがておはなしをしてゐると、どこから這入はいつてたものか、また椽側えんがはた、わたしあわてゝ障子せうじ締切しめきつた。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
や、大失敗だいしつぱいと、がツかりして、本堂ほんだう椽側えんがはこしける。いつしかそれが誰先たれさきとなく草鞋わらじぐ。到頭たう/\にん本堂ほんだうあがんで、雜談ざつだんをする。寐轉ねころぶ。
代助は笑ひながら、両手で寐起ねおきかほでた。さうして風呂場へかほを洗ひにつた。あたまらして、椽側えんがはかへつてて、にはながめてゐると、まへよりは気分が大分だいぶ晴々せい/\した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
眼に見えない侵入者だ、その胸倉をつて、戸の外に突き出さなければ気が済まないやうに、ムシヤクシヤ腹になつて、二階の狭い椽側えんがはに立ち上りながら、向ふを睨みつけ
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
爲樣しやうがあらうが有るまいが、それはわたしの知ツたことぢやない! といふやうな顏をして、近子ちかこはぷうとふくれてゐた。そしてやが所天をつとそばを離れて、椽側えんがは彼方あつち此方こつちと歩き始めた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
婦人をんな衣服きものひツかけて椽側えんがははいつてて、突然いきなりおびらうとすると、白痴ばかしさうにおさへてはなさず、げて。婦人をんなむねおさへやうとした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古谷俊男ふるやとしをは、椽側えんがはゑてある長椅子に長くなツて、りやうの腕で頭をかゝへながらじつひとみゑて考込むでゐた。からだのあいた日曜ではあるが、今日のやうに降ツてはうすることも出來ぬ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あの銀色をした温味のある白毛のしとねから、すやすやと聞えやうかと耳を澄ます、五月雨さみだれには、森の青地を白く綾取あやどつて、雨が鞦韆ブランコのやうに揺れる、椽側えんがはに寝そべりながら、団扇うちはで蚊をはたき
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
椽側えんがはつてて、お嬢様ぢやうさま面白おもしろいことをしておけませう、無躾ぶしつけでござりますが、わたしにぎつてくださりますと、はちなか突込つツこんで、はちつかんでせましやう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)