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ふりがな文庫
“
栞
(
しおり
)” の例文
この上は最後の手段として、一色道庵が、迎いの駕籠に揺られて行く道々、平次の智恵で残して行った
栞
(
しおり
)
を探すより外はありません。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
本の
栞
(
しおり
)
に美しいといって、
花簪
(
はなかんざし
)
の房を仕送れば、
小
(
ちいさ
)
な洋服が似合うから一所に写真を取ろうといって、姉に叱られる
可愛
(
かわゆ
)
いのがあり。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
理科の参考にでもなるような野生植物の
栞
(
しおり
)
を求めたので、そんなものをどうするのだと云ったら、「しづちゃんにあげるの。」と云った。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
その三日目の朝、飯塚薪左衛門の娘の
栞
(
しおり
)
は、屋敷を出て、郊外を
彷徨
(
さまよ
)
った。さまよいながらも彼女の眼は、府中の方ばかりを眺めていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女の子の喜びそうな
栞
(
しおり
)
が挟んである——を見ると、なるほど、一頁が上下二段に分れていて、その上段にゴチックで彼の細君の名が記されている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
その持っているノートの黒い小さなゴムの
栞
(
しおり
)
や、万年筆用の黒いクリップが、ナイフや針で文字を彫って、異性の家の壁や約束の立ち木やに隠して
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
それを待つ間の退屈を紛らすために、かねて集めてあった二三の実例を
栞
(
しおり
)
として、自分はほんの少しばかり、なお奥の方へ入りこんで見ようと思う。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
去り正しき道に入らしむるの
栞
(
しおり
)
とする
為
(
た
)
めなれば事の虚実は
兎
(
と
)
まれ
角
(
かく
)
まれ作者の心を用うる所の深きを知るべし
怪談牡丹灯籠:02 序
(新字新仮名)
/
総生寛
(著)
かねて読み掛けてある洋書を、
栞
(
しおり
)
の挟んである所で開けて見ると、前後の関係をまるで忘れていた。代助の記憶に取ってこう云う現象は寧ろ珍らしかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
栞
(
しおり
)
に、大谷竹次郎氏も書いておられたように、「新・平家物語」の劇化は、大谷氏から早くに御相談をうけたが、私に註文もあり歌舞伎側の都合もあって
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松尾芭蕉は俳諧をいわゆる滑稽俳諧の境地から救い上げて、
寂
(
さび
)
、
栞
(
しおり
)
の境においたのであります。(37)
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それを取上げてペラペラと
頁
(
ページ
)
をめくってみると、
半頃
(
なかごろ
)
に
頁
(
ページ
)
を折ってあるところがあった。そこを開けると、白い
小布
(
こぬの
)
が
栞
(
しおり
)
のように
挿
(
はさ
)
まっていて、矢印が書いてある。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これはかすかに紺色の光沢をおびて
絽
(
ろ
)
のように透いてみえる幅のひろい羽根だ。
栞
(
しおり
)
にしようと思う。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
緩
(
なだ
)
らかな傾斜となって、霧の中へ、するすると登っている、登山客の脱ぎ捨てた
古草鞋
(
ふるわらじ
)
が、枯ッ葉のように点を打って、おのずと登り路の
栞
(
しおり
)
となっている、路傍の
富士薊
(
ふじあざみ
)
の花は
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
唯
(
た
)
だ私の詩集が八冊程
花瓶
(
はながめ
)
の前へ二つに分けて積まれてあるのだけは近頃からのことであると思ふと云ふのです。本の
彼方此方
(
あちこち
)
には白い紙が
栞
(
しおり
)
のやうにして
挟
(
はさ
)
んであると云ふのです。
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
つや子が、友禅ちりめんの可愛い小布れをはってこしらえた
栞
(
しおり
)
がはいっていた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
だから、針差しとか料理の
栞
(
しおり
)
とかいうようなものに返送料までつけてやることは二の足をふむのである。彼女は、
呼鈴
(
よびりん
)
の引き紐を出して、たった一度、第四等名誉賞状を得たきりである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
本来、読みさしの本には、有合せでも何でもいいから
栞
(
しおり
)
を入れて置くべきもの。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
子供の時分に漢籍など読むとき、よく意味のわからない箇所にしるしをつけておくために「
不審紙
(
ふしんがみ
)
」というものを貼り付けて、あとで先生に聞いたり字引きで調べたりするときの
栞
(
しおり
)
とした。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
闊葉樹林の下に例の熊笹が繁茂していて、展望もなければ歩行も決して楽ではない、山毛欅の大樹に通行者の姓名や時日が記してあるのを
栞
(
しおり
)
として、熊笹を分けたり蹈んだりして進んで行く
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
彼の書斎には、一冊の本が四六時中、十四頁目のところに
栞
(
しおり
)
をはさんだまま置いてあったが、それを彼はもう二年越し読んでいるのである。彼の家では、いつもきまって何かしら欠けていた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
この京都住居が
栞
(
しおり
)
となったのである。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
いいや近所で訊くまでもなく、とある路地の奥からひびき渡る八五郎の張り上げた声は、平次には何よりの
栞
(
しおり
)
になったのでした。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あけて見ると、「家なき子」の本が入っていて、その頁の間には千代ちゃんが編んだのであろう、リリアンで編んだ
栞
(
しおり
)
がいくつか挿んであった。
栞
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
また来んと思いて樹の皮を白くし
栞
(
しおり
)
としたりしが、次の日人々と共に行きてこれを求めたれど
終
(
つい
)
にその木のありかをも見出し得ずしてやみたり。
遠野の奇聞
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今ただちにというわけにも行くまいが、
是
(
これ
)
からは子安という名を
栞
(
しおり
)
にして、もう少しこの民間伝承を精査してみたい。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
例の地図を
栞
(
しおり
)
として、魚屋助右衛門の遺産とかいう莫大な黄金や財宝を、自分一人で手に入れよう。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ということなど思いやると、道ばたの
葛
(
くず
)
の花までが、悲調な恋愛詩の
栞
(
しおり
)
かのように可憐である。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四隅
(
よすみ
)
を
金
(
きん
)
に立ち切った
箔
(
はく
)
の小口だけが
鮮
(
あざや
)
かに見える。間から紫の
栞
(
しおり
)
の房が長く垂れている。栞を差し込んだ
頁
(
ページ
)
の上から七行目に「
埃及
(
エジプト
)
の
御代
(
みよ
)
しろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
栞
(
しおり
)
して
山家集
(
さんかしゅう
)
あり
西行忌
(
さいぎょうき
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
お品さんは浪花屋の天水桶へ目印の
栞
(
しおり
)
を書いて、ここへ入りましたと教えておきながら、霊岸橋を渡って
鎧
(
よろい
)
の
渡
(
わたし
)
の方へ行ったことになるぜ
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また
来
(
こ
)
んと思いて樹の皮を白くし
栞
(
しおり
)
としたりしが、次の日人々とともに行きてこれを求めたれど、ついにその木のありかをも見出しえずしてやみたり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
かくて胸なる
紅
(
くれない
)
の一輪を
栞
(
しおり
)
に、
傍
(
かたわら
)
の
芍薬
(
しゃくやく
)
の花、
方
(
ほう
)
一尺なるに
経
(
きょう
)
を
据
(
す
)
えて、
合掌
(
がっしょう
)
して、
薬王品
(
やくおうほん
)
を夜もすがら。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
栞
(
しおり
)
という名だということや、今、この屋敷には、頼母の他に五人の浪人が泊まっているということや、父、薪左衛門は、都合があって、どなたにもお眼にかかれないが
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ここまで考えた小野さんはやがて机の上に置いてある、茶の表紙に豊かな金文字を入れた厚い書物を
開
(
あ
)
けた。中からヌーボー式に青い柳を染めて赤瓦の屋根が少し見える
栞
(
しおり
)
があらわれる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし、
如上
(
じょじょう
)
のごとく、不得手なのと、時間もないので、一切お断りのほかはない。せめてなしうることは、この
栞
(
しおり
)
の欄と、週刊朝日で月一回の「筆間茶話」を読者に送るぐらいなところである。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野川の流れはまた交通の唯一の
栞
(
しおり
)
でもあったが、それを苦に病まずに小国に入って隠れるほどの勇気ある人にでも、雨を頼りに田を営むことだけは
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
……その冷く快かった入口の、立看板の白く
冴
(
さ
)
えて寂しいのも、再び見る、露に濡れた
一叢
(
ひとむら
)
の
卯
(
う
)
の花の水の
栞
(
しおり
)
をすると思うのも、いまは谷底のように遠く、深い。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あれからちょうど一ヶ月目の新月、お月様の工合で潮のさしようが同じになったので、ちょうど真昼の
干潮時
(
ひきしおどき
)
に、水肌にすれすれに浮かした目印の
栞
(
しおり
)
が見えたのでしょう。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
静かなる昼を、静かに
栞
(
しおり
)
を
抽
(
ぬ
)
いて、
箔
(
はく
)
に重き一巻を、女は膝の上に読む。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
(帰って来る時の
栞
(
しおり
)
になる。
燈火
(
あかり
)
は消さずにつけたままで行こう)
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こんどは日本の南の端の一例をあげてみると、鹿児島県の
甑島
(
こしきじま
)
などでは、その父が
息子
(
むすこ
)
の背に負われて木の小枝をおって
栞
(
しおり
)
とし、わけを問われるとこういう歌を詠んだ。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
巴屋の店の方へ行く順路は、柳橋を右に見て、横山町を真っ直ぐに大伝馬町から
本町
(
ほんまち
)
へ出るのですが、その辺の横町、路地、大通りには、銭形の
栞
(
しおり
)
などは一つもありません。
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
栞
(
しおり
)
よ、栞よ、勘兵衛が来たぞよ、用心おし、栞よ!」
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
どうしてそのようなことをなさるかと
息子
(
むすこ
)
がたずねると、おまえがかえって行くのに路に迷わぬように、
栞
(
しおり
)
をして置いてやるのだと答えたので、親の慈愛に深く感動してしまって
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
栞
(
しおり
)
代りに
撒
(
ま
)
いたように、真新しい小判が、幾十枚となく落散っているのです。
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
吉凶二つの面を持っている理由にまで入って行かれる山口の
栞
(
しおり
)
となるのかもしれない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
小判の
栞
(
しおり
)
を
辿
(
たど
)
って行くと大川端で、ここには幾
艘
(
そう
)
となく船が
舫
(
もや
)
っております。
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見ろ、ところどころに爪で引っ掻いた蛇の目の印があるだろう、あれはお静に言い付けた合図の
栞
(
しおり
)
、俺の名前から思い付いた銭形だ。あの印があるところにお静が居るに相違ない——サア言え、七人の花嫁を
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
奥山
(
おくやま
)
にしおる
栞
(
しおり
)
は
誰
(
たれ
)
のため身をかき分けて生める子のため
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
“栞”の解説
栞(しおり、英語:bookmark)は、本のページに目印を付けるもの。
(出典:Wikipedia)
栞
漢検1級
部首:⽊
10画
“栞”を含む語句
和訓栞
温故之栞
倭訓栞
寂栞
栞戸
栞草