朝霧あさぎり)” の例文
朝霧あさぎりがうすらいでくる。庭のえんじゅからかすかに日光がもれる。主人しゅじんきたばこをくゆらしながら、障子しょうじをあけはなして庭をながめている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
五月六日の朝、ガンのむれが朝霧あさぎりをついて、メラールの上を飛んでいくと、湖の上に高いとうや、長いまどガラスのある家々が見えてきました。
自分の上に降りかゝつた、二度目の恐ろしい疑ひが、また平次の明察で朝霧あさぎりのやうに吹き拂はれてしまつたのです。
ことに朝はやく起きて海岸を散歩したり、しめっぽい朝霧あさぎりのこめた田や畑の間を散歩したりなんかするときの爽快そうかいさは、何とも言いようのない喜びであった。
さて今朝こんちょう、此の辺からは煙も見えず、音も聞えぬ、新停車場ステエションただにんり立つて、朝霧あさぎりこまやかな野中のなかして、雨になつたとき過ぎ、おうな住居すまいけ込んだまで
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
早朝関翁以下駅逓えきていの人々に別を告げる。斗満橋を渡って、見かえると、谷をむるあお朝霧あさぎりの中に、関翁は此方に向い、つえかしらに両手をんで其上にひたい押付おしつけて居られた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
十八日、朝霧あさぎりいと深し。未明狐禅寺こぜんじに到り、岩手丸にて北上きたかみを下る。両岸景色おもしろし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
春雨はるさめにかすむとか、朝霧あさぎりの中から舟が出てくるなどという風景は、この世界には見えない
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しまがツ。』とわたくし蹴鞠けまりのやうに跳起はねおきてると、此時このときてんまつたけて、朝霧あさぎりれたるうみおも端艇たんていこと三海里さんかいりばかりの、南方なんぽうあたつて、椰子やし橄欖かんらん青〻あほ/\しげつて
六月の十四日に、鳥羽港を発した船団は、十六日のまだ朝霧あさぎりのふかいうちに、蟹江かにえの沖に影を見せ、一益は、軽舟に兵をわかって、すぐ上陸し、兵七百をひきいて、難なく、蟹江城へ入ってしまった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は雪さんの姿は濃い朝霧あさぎりに包まれて朦朧もうろうとしか見えなかった。
三人みたりいへで、朝霧あさぎりふか海岸かいがんきたへとすゝんだ。武村兵曹たけむらへいそう猛犬まうけん稻妻いなづましたがへて、つね十歩じつぽばかりさきすゝむので、わたくし大佐たいさとはあひならんであゆんだが、一言いちごんい。あゝ、その秘密ひみつなる發明はつめいとはなんであらう。
平次は朝霧あさぎりを分けるやうに、サツと足を早めます。
此時このとき朝霧あさぎりるゝ海岸かいがん景色けしき