書棚しよだな)” の例文
職員閲覧室へ行く人である。なかには必要の本を書棚しよだなから取りおろして、胸一杯にひろげて、立ちながら調べてゐる人もある。三四郎はうらやましくなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……こゝの書棚しよだなうへには、はなちやうしてなかつた、——手附てつき大形おほがた花籠はなかごならべて、白木しらききりの、ぢくもののはこツばかり。眞中まんなかふたうへに……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひさし人気ひとけの絶えたりし一間のさむさは、今にはかに人の温き肉を得たるを喜びて、ただちにまんとするが如くはだへせまれり。宮は慌忙あわただしく火鉢に取付きつつ、目を挙げて書棚しよだなに飾れる時計を見たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
現在は成程なるほど書物だけは幾らか集まつてゐるかも知れない。しかしそれも集まつたのである。落葉の風だまりへ集まるやうに自然と書棚しよだなへ集まつたのである。何も苦心して集めたわけではない。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
書棚しよだなのぞいておくて、抽出ぬきだ論語ろんご第一卷だいいつくわん——やしきは、置場所おきばしよのあるところとさへへば、廊下らうか通口かよひぐち二階にかい上下うへしたも、ぎつしりと東西とうざいしよもつのそろつた、硝子戸がらすど突當つきあたつてそれからまが
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
座敷ざしきて、書棚しよだななかからあか表紙へうし洋書やうしよして、方々はう/″\ページはぐつててゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は花瓶くわへい右手みぎてにあるかさねの書棚しよだなまへへ行つて、うへに載せた重い写真帖を取りげて、ちながら、きん留金とめがねはづして、一枚二枚とり始めたが、中頃迄てぴたりとめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
北側きたがはとこがあるので、申譯まをしわけためへんぢくけて、其前そのまへ朱泥しゆでいいろをしたせつ花活はないけかざつてある。欄間らんまにはがくなにもない。たゞ眞鍮しんちゆう折釘丈をれくぎだけが二ほんひかつてゐる。其他そのたには硝子戸がらすどつた書棚しよだなひとつある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)