支度じたく)” の例文
その日も土井は町へ牡蠣雑炊かきざふすゐを食べに行つた。京都へ来てから、思ひのほか日がたつてゐたので、彼はもうそろ/\帰り支度じたくをしてゐた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そこで太郎たろう次郎じろう支度じたくをして、のこのこ布団ふとんからはいして、をあけてそとへ出ました。そらはよくれて、ほしがきらきらひかっていました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
吉雄よしおは、もう、じっとしていることができませんでした。さっそく、教室きょうしつへはいって、荷物にもつってかえ支度じたくをしました。
ある日の先生と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広いキヤツフエの中に僕等の組しか話して居ない事に気が付いて帰り支度じたくをした時は翌日の午前四時前であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かの秋風が何処どこからともなく吹き初めて来る、すると早や幽霊や骨人や蜻蛉や氷屋は逃げ支度じたくだ。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
大氣焔だいきえんもつ威張ゐばらされるので、品川軍しながはぐん散々さん/″\敗北はいぼく文海子ぶんかいしかへりにつてれといふのもかず、望蜀生ぼうしよくせいれて、せツせとかへ支度じたくした。ぷツぷツおこつてゞある。
カピ長 あ、いや、方々かた/″\、おかへ支度じたくをなされな。粗末そまつ點心ごだんながら、只今たゞいま準備中よういちゅうでござる。
彼はよく旅の空で帰り支度じたくをする頃にそう思った。もし無事に故国に辿たどり着くことが出来たら、あの事も聞いて見たい、この事も聞いて見たいと。今、嫂達は彼の側に居る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あ、その人は、おれがでてくるときに、先をいそぐとやらで支度じたくをしていたから、ことによるともうでかけてしまったかもしれねえが、おいでになったらすぐ連れてこよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その晩泉原は偶然にも、初めて会った人の、初めての部屋で寝る事になったが、夜が明けると床を離れて身支度じたくを調えた。倫敦ロンドンの下宿にいる時のように流石さすがに朝寝もしていられなかった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
蘭子たちはもう中腰になって、まっ青な顔で逃げ支度じたくをしていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鮎釣あゆつりの夕かたまけて支度じたく
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ゆきこそふれはまだそれほどに御座ござりませねばとかへ支度じたくとゝのへるにそれならばたれともにおつれなされお歩行ひろひ御迷惑ごめいわくながら此邊このほとりにはくるま鳥渡ちよつとむづかしからん大通おほどほちかくまで御難澁ごなんじふなるべし家内うちにてすら火桶ひをけすこしもはなされぬに夜氣やきあたつておかぜめすな失禮しつれいなにもなしこゝよりすぐにお頭巾づきんれぞお肩掛かたかけまをせと總掛そうがゝりに支度したく手傳てつだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
晶子と二人ふたり前の旅支度じたくを収めた大きな信玄袋を携へた僕は、すくなからず閉口しながら五ちやう程汗に成つて歩いて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのうちだんだん日がかたむきかけて、みじかあきの日はれそうになりました。保名主従やすなしゅじゅうはそろそろかえ支度じたくをはじめますと、ふとこうのもりおくで大ぜいわいわいさわぐこえがしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
連中があざやかに引揚げ支度じたくをなし終ったのを見ると、抜け買いの先生せんじょう金右衛門が
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、金持かねもちは、いちはやく、支度じたくをして
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
賓客等ひんきゃくらおひ/\かへ支度じたくをする。
来るとはや帰り支度じたくや日短
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
平四郎は、ね起きて、すぐ身支度じたくした。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)