掠奪りゃくだつ)” の例文
彼等の畑は荒され、家畜は掠奪りゃくだつされた。彼等は安心して仕事をすることが出来なかった。彼等は生活に窮するより外、道がなかった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
近辺のスパルタ人種の子供らはめいめいに小さなたこを揚げてそれを大凧の尾にからみつかせ、その断片を掠奪りゃくだつしようと争うのである。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
木曾の山軍源義仲みなもとのよしなかが、都入りをした折の——破壊的な暴威だの、掠奪りゃくだつだの、婦女子の難などを思い出して、戦慄せんりつしていたものだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、マンは、魚釣り見物のため、現場を離れていたので、たった一人、掠奪りゃくだつ団にとっては、もっけの幸というわけであった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
もし女の恋が不幸に終ったとすれば、彼女の心は、占領され、掠奪りゃくだつされ、放棄され、そして荒れるにまかされたとりでに似ている。
傷心 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
そういうときにはかならずだれかに喧嘩けんかをふきかけてその弁当を掠奪りゃくだつするのである。自分の弁当を食うよりは掠奪のほうがはるかにうまい。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
長楽路の蛇酒屋から掠奪りゃくだつした蛇酒に昂奮した赤い布の一連も、中央司令部の銭大鈞せんたいきんの軍隊が出動して忽ち潰滅かいめつされてしまった。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
愛がその飽くことなき掠奪りゃくだつの手を拡げるはげしさは、習慣的に、なまやさしいものとのみ愛を考えれている人の想像し得るところではない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それを聞いた浪士らは警戒を加え、きびしく味方の掠奪りゃくだつをも戒めた。十九日和田泊まりの予定で、尊攘の旗は高く山国の空にひるがえった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二人の生活は飽き飽きしていたのだから、貧窮組の騒ぎや、浪士の掠奪りゃくだつで破壊されるのを待つまでのことはないのでした。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
窃盗や掠奪りゃくだつが理論や詭弁きべんのうちにまでしみ込んでいって、ついに詭弁きべんや理論に醜さを多く与えながらおのれの醜さを多少失ってきた証拠である。
途中住民に出逢ったり市街地へはいっても、各自は独逸海軍の名誉に賭けて、掠奪りゃくだつ暴行は一切厳禁である。違反者は猶予ゆうよなく軍律によって処分する。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
装身具そうしんぐ、調度類の掠奪りゃくだつに夢中になっていたが、パリスカスだけは、そんなものには目もくれず、相変らず沈鬱な面持で、墓から墓へと歩きまわっていた。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかして、その時は野蛮だから至る所掠奪りゃくだつをやった。また騎兵だから、牧草のある所に行かねばならぬから、都会に永く陣営を張っていることが出来ぬ。
平和事業の将来 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
そこで、あくまでルパンの部下のKになりすまし、首領の命を奉じてシャプラン氏その他を手ごめにし、飛行服を掠奪りゃくだつするお手伝いまでやってのけた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
教育の機会を掠奪りゃくだつしたやつらに責任はあるが、やつらに責任を負わせたってそれで労働階級がどうなるんだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
いくら放任教育でも有繋さすがにお客のさかな掠奪りゃくだつするを打棄うっちゃって置けないから、そういう時は自分の膝元へ引寄せておわんふたなり小皿こざらなりに肴を取分けて陪食させた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その他続日本紀を読むと、この時代には盗賊や殺人や掠奪りゃくだつも多く、人心不安だったことがうかがわれる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
これまで資本家が利潤として独占していた剰余価値を——むしろ労働者から掠奪りゃくだつしていた剰余価値を——労働者にも公平に分配されることを要求する行動に対して
階級闘争の彼方へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
育てようとはしないで掠奪りゃくだつしにかかるんだ。まるで泥棒か強盗みたいにさ、日本の財界なんてきみ、まだ戦国時代そのままだぜ、未開国そのものだからね、まったく
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「やめよ。爾の祖父は不弥うみ王母おうぼ掠奪りゃくだつした。爾の父は不弥の霊床たまどこに火を放った。彼を殺せ。」
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
アイヌらは、掠奪りゃくだつされた困憊こんぱいを、ゆたかなひげを握りながらぽつりぽつりと語ったのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
と言って、掠奪りゃくだつにかゝった。旗手は高等生だ。忽ち乱闘が始まって、引率の先生達は手がつけられない。西引佐の生徒は一足先に帰って、小若い衆としめし合せていたのだった。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
どこそこでは大学生あがりが大道で郵便物を掠奪りゃくだつしたという噂があるかと思えば、またどこそこでは社会的地位からいっても第一線に立っている人々が贋造がんぞう紙幣を作っている。
目掛けて、掠奪りゃくだつにおいでなされます。教団には怨みはない筈です。信徒を憎むは不当です。それだのにあなたは信徒を殺し教団を破壊なされます。兄上、あなたは卑怯者です!
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一身の利害のためには主を売り友を売り妻子を売り、掠奪りゃくだつ暴行、盗賊野武士から身を起して天下を望むのが自然であるから時代の道徳も良識もその線に沿うているのは自然である。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
いまでも行ってみれば、眼のあたり分かる通り、幕末から維新当時にかけて増上寺の境内や数ある徳川霊廟の境内は、匡賊に類した武士や贋武士のために、惨々さんざん掠奪りゃくだつを蒙っている。
増上寺物語 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
掠奪りゃくだつされた空っぽの店の戸口に立っているのを見た。商品棚の残骸のあいだ、めちゃめちゃにされた品物のあいだ、垂れ下がったガス燈の腕木のあいだに、友人はまだたたずんでいる。
判決 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
公学校のグラウンドで行われた惨劇は約一時間ばかり続いたが、その間兇蕃中の別働隊五十名は約二丁の距離に在る分署を襲撃し、小銃、弾薬を掠奪りゃくだつ、建物を焼きはらって凱歌をあげた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
しかし自然の名のもとにこの旧習の弁護するのは確かに親の我儘わがままである。し自然の名のもとに如何なる旧習も弁護出来るならば、まず我我は未開人種の掠奪りゃくだつ結婚を弁護しなければならぬ。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
褒美ほうびにもらったというのと反して、手もなく山男から掠奪りゃくだつしたのであるが、最初どうしてこのような品を、彼らが拾い取りまたこれを大事にしていたかを考えると、小説家でない我々にも
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
土寇の群は掠奪りゃくだつをほしいままにして、家を焼き、巌穴いわあなかくれている者まで捜し出して、殺したりとりこにしたりしていったのであった。甘の家ではますます阿英を徳として、神のように尊敬した。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
自分の箸と茶碗を坊ばに掠奪りゃくだつされて、不相応に小さな奴をもってさっきから我慢していたが、もともと小さ過ぎるのだから、一杯にもった積りでも、あんとあけると三口ほどで食ってしまう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婦女の掠奪りゃくだつや、奴隷どれいの売買や、氏族外結婚制などにより、血の混交は広汎こうはんに行われていたのであって、そもそも人種を区別する科学的標準というものは、今でもまだ確立されていないのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
それが上杉謙信うえすぎけんしん小荷駄方こにだがたに紛れ入って、信州甲州或は関東地方にまで出掛け、掠奪りゃくだつに掛けては人後に落ちなかったが、余りに露骨に遣り過ぎたので、鬼小島弥太郎おにこじまやたろう見顕みあらわされて殺されたという。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「ロシア人をいじめて、泣いたり、おがんだりするのに、無理やり引っこさげて来るんだからね、——悪いこったよ、掠奪りゃくだつだよ。」
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
従って、乱がきざすと忽ち業火ごうか掠奪りゃくだつのうき目にあい、この世ばかりか、その追及は、地下百尺まで追いかけてゆくじゃあないか。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらゆる結婚の儀式の中で、最も神聖で、最もサブライムなものは、未開民族の間に今日でもまだ行なわれている掠奪りゃくだつ結婚のそれである。……
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そこには彼の踏み進むべき道路はない。又掠奪りゃくだつすべき作物はない。誰がその時彼の踏み出したあしの一歩についてとがめだてをする事が出来るか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
服従に服従を重ねて来た地方の人民も、こんな恐ろしい「例幣使さま」の掠奪りゃくだつに対してはこれ以上の忍耐はできなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは気候地理もしくは迷信等諸種の原因あり、またいやしむべき掠奪りゃくだつ等の歴史もあるが、とにかく権力あり富力あるものが自分一人に沢山たくさんの妻を専有するのである。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
マターファは投降し、同時に、追撃して来たラウペパ軍のためにマノノは焼かれ掠奪りゃくだつされた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
戦場へ掠奪りゃくだつに行く者と、掠奪から帰って来た者との、振り照らしている松明であった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
再び真猫に帰り得る見込有りやいなやを試験するか、何にしても今日迄侵入と掠奪りゃくだつに依りこの通り肥り返っている代物しろものだから多少の窮命を与えたからとて早急に生命に異状はあるまい。
後世の男子が我儘わがまま玩弄物がんろうぶつの如く女子を選ぶよりも、更に数層はなはだしい強圧即ち暴力を以て女子を掠奪りゃくだつしたのであるから、当時の女子に純潔をすることの出来なかった事は想像が附く。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ところでわたしは、郵便物を掠奪りゃくだつしたある高潔な人間のことを聞きましたよ。
しかるに彼等人間はごうもこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ず彼等のために掠奪りゃくだつせらるるのである。彼等はその強力を頼んで正当に吾人が食い得べきものをうばってすましている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文字どおりな「天下大乱」を、天下の人心が、自らかもし、自ら求めていた。夜も昼も、いたるところに、暴徒騒ぎと、掠奪りゃくだつ、焼打ちが、行われ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
既に掠奪りゃくだつの経験をなめている百姓は、引き上げる時、金目になるものや、必要な品々を持てるだけ持って逃げていた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
きびしく軍の掠奪りゃくだつを戒め、それを犯すものは味方でも許すまいとしている浪士らにも一方にはこのおきゅうの術があった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)