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らっ
ふりがな文庫
“
拉
(
らっ
)” の例文
村々で平和な生い立ちを受けた工藝は、激しい競争の都市へと
拉
(
らっ
)
し去られた。顧客を得るためには、あらゆる手段が余儀なくされる。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
すでに隠者はいないと聞いて、彼らは大きな怪しみをあらたに持ち、家捜しなどを行ったうえ、甚内を
拉
(
らっ
)
して陣へひきあげていった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
他の物語中の仮構の人物である交野の少将を
拉
(
らっ
)
し来たって源氏と対照させた作者の腕から見れば、この事はあり得ぬこととも思えぬ。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
呆気
(
あっけ
)
に取られていた五十嵐を
無雑作
(
むぞうさ
)
に
拉
(
らっ
)
して、能登守が招くがままに、南条は旧友に会うような態度でその方へと進んで行きました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ハーモニーを
拉
(
らっ
)
しきたって、新たなリズム、メロディーを創り、近代の感情にふさわしい表現をとろうとしたといえるのである。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
▼ もっと見る
だから、遊び人たちに
拉
(
らっ
)
して来られると、はじめから、日ごろの敏捷さにものをいわせて、隙をうかがって、逃げだすつもりにしていた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
が、それよりも……そうしたことよりもわたしは、仁王門のそばの「新煉瓦」のはずれの「成田山」の境内にいま読者を
拉
(
らっ
)
したいのである。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
だが、驚くことはない。試みに古来のあらゆる大作家を
拉
(
らっ
)
し来って、面と向って此の単純極まる質問を呈して見給え。愛とは何ぞや? と。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
……ここでも経済的な意味ばかりでなく、性来の世話やき好きでお文が
采配
(
さいはい
)
を振り、総ざらいが終るなり師匠を
拉
(
らっ
)
して来て
寒橋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その日の夕方、与次郎は三四郎を
拉
(
らっ
)
して、四丁目から電車に乗って、新橋へ行って、新橋からまた引き返して、日本橋へ来て、そこで降りて
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして既知の種類も隠れた種類も皆
拉
(
らっ
)
し来て右の一大桜の名所へ植え、ここへ行けばどんな桜でも見る事が出来る様にする。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
紀州湯浅町の良家の若い妻が盆踊りを見に往きて海岸に
徜徉
(
しょうよう
)
するところを、壮漢数輩
拉
(
らっ
)
して沖の小島へ伴れ行き輪姦せしを本人も一族も
慙
(
は
)
じて
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
勝平は、その若者を
拉
(
らっ
)
しながら先に立った。若者は、振り向き/\瑠璃子の顔をジロ/\と珍らしそうに見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さてこそ庸三を自分の家へ
拉
(
らっ
)
し去ろうとしたのであったが、それは葉子の文学少女らしい思い過ごしにほかならないで、庸三と小夜子のあいだは
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
姉を
拉
(
らっ
)
し去り、父を殺され、母を自害させた祖父江出羽守を、大次郎が秘かに仇とつけ狙うのに、不思議はなかった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ところで前以てお断りして置かねばならないのは、私がここに
拉
(
らっ
)
し来る書はいずれも能書の部に入る、謂わば現代一流の書ばかりであるということだ。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
竜池は子之助を
拉
(
らっ
)
して帰り、
幸町
(
さいわいちょう
)
の持地面に置いてある差配人佐兵衛に預けた。そして勘当の手続をしようとした。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
たとい衆人の眼には絶世の美人と映ずる婦人を
拉
(
らっ
)
し
来
(
きた
)
っても、行者の眼には一箇の忌まわしい腐肉や血膿のかたまりとして映ずるようにさえなるので
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
案を
拍
(
う
)
って
快哉
(
かいさい
)
を叫ぶというのは、まさに求めるものを、その求める瞬間に面前に
拉
(
らっ
)
しきたるからこそである。
科学と文学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
記代子の外出を待ちぶせて
拉
(
らっ
)
し去るつもりであったが、十日の余も日数をへて、なんの効もなかったのである。
街はふるさと
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
随って千吉君は時々会社の帰りを
拉
(
らっ
)
し去られたが、案外長く地歩を保っていた。しかし橋口君はその中に先ず馬を射よと覚ったのか、同じ手を内藤君に用いた。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
季題によって季節の連想を限るのは、俳句の長所であると同時に、その短所でもあるが、俳人は時に他の配合物を
拉
(
らっ
)
し
来
(
きた
)
って、季節外れの猫の恋を句にしている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
たちまち、ざぶりと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一呑みにして、沖遠く
拉
(
らっ
)
し去った。
一つの約束
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼女を
拉
(
らっ
)
して竜泉寺あたりの風雅な宿屋へと出かけた(ああ、その頃の台東区竜泉寺には、いまだ美しい蓮田があり、
葭切
(
よしきり
)
が鳴き、アベックに好適な水郷だった!)
艶色落語講談鑑賞
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
男は殿上人たちに
拉
(
らっ
)
せられながら、細殿の前に漂っていた丁子の匂を気にでもするように、その方を見返りがちに、再び履音をさせながら其処を立ち去って往った。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
拉
(
らっ
)
し去られた、——私は堪らぬ義憤に駆られて、夢中で後を追いはじめたが忽ち両脚は
氷柱
(
つらら
)
の感で
竦
(
すく
)
みあがり、
空
(
むな
)
しくこの残酷なる処刑の有様を見逃さねばならなかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
また選挙民を強いて選挙場に
拉
(
らっ
)
し来るために投票勧誘人即ち運動人というものが必要になり
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
私は様々の仏像を
拉
(
らっ
)
し
来
(
きた
)
って品さだめするなどは、実に堕落であり恐縮であると思っているが、中宮寺思惟像の無比なる所以を語ろうとしてついこんなことになってしまった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
だが、それをもっと現実に
拉
(
らっ
)
して、もっと社会的、経済的根底から解剖して描くべきである。我々は、現在もっと現実性をもった女性を、もっと新らしい型の女性を知っている筈だ。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
やがて三頭の馬は一頭の新馬を
拉
(
らっ
)
して、厩舎を目指して帰ってきた。紀久子は正勝の花房が真っ先に帰ってくることを願った。ところが、花房は途中で木の根に
躓
(
つまず
)
いて跛を引きだした。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
彼女を
拉
(
らっ
)
して光のごとく、雲のごとく、獣のごとく、虫のごとくに生きたい。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
あるときは逆の潮に乗せられて、沖漁に出た船がそのまま行方を
晦
(
くら
)
ました。難破をまぬかれた幾
艘
(
そう
)
かがロシヤの領土カムチャツカに漂い着いたそうだ。夷人に促われて夷人の都に
拉
(
らっ
)
し去られた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
なんという名前であるか? ということなぞを
穿
(
ほじ
)
くりたいと思っていたのであろうが、武器を帯びない住民を
拉
(
らっ
)
して来たのであったから、別段手荒なことなぞをして連れて来たわけではなかった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
いつも夫人の台所にうろうろしている身許不明の無職青年ブリグスを運転手に仕立て、ブリグス青年がいずくからともなく
拉
(
らっ
)
し来った一九二五年型何とかいう自動車に打ち乗って、さてこのとおり
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
居士がヘルメット形の帽子を被って単衣の下にネルのシャツを来て余を
拉
(
らっ
)
して松原を散歩するのは
朝夕
(
ちょうせき
)
の事であった。余はかくの如く二、三日を居士と共に過ぐしていよいよ帰東することになった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
湖山ノ男亥之吉鷲津氏ノ塾ニアリ。余
拉
(
らっ
)
シテ東シ二親ヲ省セシム。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とお十夜は、一角の
尻尾
(
しっぽ
)
について、同じ川岸へ向った周馬をののしりながら、自分は、原士の四、五人を
拉
(
らっ
)
して反対の向う岸へ廻った。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こう言って、白雲が強奪にかかったのを、根が風流人の投弓が、いやと言えようはずもなく、彼の
拉
(
らっ
)
し去るに任せたものです。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
で前云った通り此種の小説の特色としては人生の死活問題を
拉
(
らっ
)
し
来
(
きた
)
って、切実なる運命の極致を写すのを特色とする。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
魯国行
(
ろこくゆき
)
につきては、何事をか叙すべき。わが
舌人
(
ぜつじん
)
たる
任務
(
つとめ
)
はたちまちに余を
拉
(
らっ
)
し去りて、青雲の上におとしたり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
おそらく、職務執行妨害とでもいうような罪名で、ともかくも、警察へ
拉
(
らっ
)
して行こうという肚らしいのです。
若杉裁判長
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
克子が病床へ駈けつけて以来、次第に常態に復しつつあるかに見えた宗久は、意外にも妹の眼前で精神病院へ
拉
(
らっ
)
し去られた。彼女が立会人であるかのように。
明治開化 安吾捕物:15 その十四 ロッテナム美人術
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
遠慮しちゃったのですね。たちまち、どぶんと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一
呑
(
の
)
みにして、沖遠く
拉
(
らっ
)
し去った、とまあ、こんな話があるとしますね。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
途中、両親を
拉
(
らっ
)
して孝養を尽す積りで、郷里に寄ったが、子供が十人あっては矢張り思うに委せない。三四日滞在している中に、母親から愛想を尽かされてしまった。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その夜平中は席にいたゝまれない心持で暫く席を外していたのであったが、昔の恋人が時平に
拉
(
らっ
)
し去られるのを見ては
怺
(
こら
)
えきれなくなったのであろう。あり合う
陸奥紙
(
みちのくがみ
)
に
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
で、明日の登城を
機
(
しお
)
に、一室へ
拉
(
らっ
)
し、罪状の数々を
拵
(
こしら
)
え立てて、いやおうなく腹を切らせん。切らずば
無下
(
むげ
)
にも抑えて刺し殺さん。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貴公子はこう言って、のっぴきならず、兵馬を
拉
(
らっ
)
して、その自分が幽閉されているらしい屋敷へ連れ込もうというのです。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼を
拉
(
らっ
)
してずんずん先へ進んだ。彼は突然玄関へ馬車を横付にする、そうして
怒鳴
(
どな
)
り込むような大きな声を出して彼の
室
(
へや
)
へ入ってくる小林の姿を眼前に
髣髴
(
ほうふつ
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
従士曾根孫六進んで水に入り、一隻を漕ぎ還ったので、次々に船を
拉
(
らっ
)
し来って全軍を渡す事が出来た。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分の過去の恋人がたま/\彼の手の届かない貴人の
許
(
もと
)
へ
拉
(
らっ
)
し去られたと云うだけのことに、遣る方ない
忿懣
(
ふんまん
)
を感じているのであるが、老大納言の災厄はなか/\そんな生やさしいものではない。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
拉
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“拉”を含む語句
拉致
虎列拉
拉甸
加拉太
虎刺拉
拉典
拉丁
拉薩
海拉爾
取拉
一拉
摩尼拉
日拉達
蘇格拉第
柏拉図
烏拉兒
馬尼拉
阿拉米多
阿百拉
阿拉勿関
...