けし)” の例文
千代 まあ、ほんまに夫れはけしいことぢや。今年は何やら可厭いやな年ぢや。出来秋ぢや、出来秋ぢやと云うて米は不作。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「何だって私の居ないのに渡した、え何だって渡した。けしからんことだ」とわめきつつ抽斗の中を見ると革包が出ていてしかも口を開けたままである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いしずゑの朽ちた塔のやうに、幾度いくたびもゆらゆらと立ちすくんだが、雨風よりも更に難儀だつたは、けしからず肩のわらんべが次第に重うなつたことでおぢやる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
園「是はしからん仰せにござります、長谷川町の番人に毒酒を与えましたなどと云うは毛頭覚えない事でございます、けしからんお尋ねを蒙るもので」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けしからん奴じゃ、無礼千万な! 勝手気儘に執権の屋敷へはいりおって! 宗八、剛蔵、確之進! 追いけて行って、からめ捕ってこれへ引き据えエ!」
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
以て貴殿きでんめひ小夜衣を身請して御當家へおくとのお約束ゆゑ金子きんすをばお渡し申せしに何故なにゆゑ然樣のことを仰せられ候やと申に長庵大いにいかけしからぬことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と年甲斐もない事を言いながら、亭主は小宮山の顔を見て、いやに声をひそめたのでありますな、けしからん。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
終日ひねもす灰色に打曇りて、薄日をだにをしみてもらさざりし空はやうやく暮れんとして、弥増いやます寒さはけしからず人にせまれば、幾分のしのぎにもと家々の戸は例よりも早くさされて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三左 いかに御自分の御知行所でも、定めのほかに無體の御用金などけしからぬ儀でござります。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
けしからぬ事を申すではないか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これ、たれたよ……だれだ、其処そこあなけたのは、けしからん人だな、張立はりたて障子しやうじへぽつ/\あなけて乱暴らんばう真似まねをする、だれだな、のぞいちやアいかん、だれだ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
けしからぬ女かな、といかりの余に手暴てあら捩放ねぢはなせば、なほからくもすがれるままにおもて擦付すりつけて咽泣むせびなきに泣くなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
きはなほ長庵に打向ひ是はけしからぬ御言葉哉ことばかな假令證文は白紙に變りし共最初さいしよ小夜衣が使ひに參られ我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わらはが隣の祖母様ばばさまは、きつい朝起きぢやが、この三月みつきヶ程は、毎朝毎朝、一番鶏も啼かぬあひだけしい鳥の啼声を空に聞くといふし、また人の噂では、先頃さきごろ摂津住吉の地震なゐ強く
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
圖「何だ手前てまえは、何をする、斯様なるけしからん事をして何と心得て居る、何だ此の女をはずかしめんとするのか、捨置き難い奴だが今日こんにちは信心参りの事だから許す、け/\」
踏分々々ふみわけ/\彼お三婆のかたいたりぬ今日はけしからぬ大雪にて戸口とぐちへも出られずさぞ寒からんと存じ師匠樣ししやうさまよりもらひし酒を寒凌さぶさしのぎにもと少しなれど持來もちきたりしとてくだん徳利とくり竹皮包かはづつみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
千代 ほんまにけしうはないお寺か。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「これはけしからん! 何ですと」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さぞ御立腹な訳でございましょう、仮令たとえどのような事がありましても人様ひとさまの御家内を打擲ちょうちゃくするとはけしからん訳でございます、若年の折柄おりから人様に手を掛ける事が度々たび/\ありまして意見もしましたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それはわしは大勢を相手に切結んでおり、夜分でげすから能く分りませぬが、全く鞘の光を見て抜身と心得ましたかも知れませぬが、私が手引をして…是はけしからん事でげす、どうも左様な御疑念を
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
安「こりアけしからん奴だ、どうだい貞藏」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)