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己
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じぶん
ふりがな文庫
“
己
(
じぶん
)” の例文
それは
己
(
じぶん
)
が捨てて来た唖の女ではないか。石川は急いで車に乗って一行の
後
(
あと
)
を追ったが、
酷
(
ひど
)
い熱が出て芝居ができないようになった。
唖娘
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は女が
己
(
じぶん
)
の家をほめることも出来ないが、それかと云って他へ客をやりたくもないと云う気もちでいることを知った。そこで私は
火傷した神様
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
武士は
己
(
じぶん
)
で己の体がじゃんびりしたように思った。武士は心が落ちつかなかったがそのまま引返すことはその自尊心が許さなかった。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
謙作はテーブルの
端
(
はし
)
にやった
己
(
じぶん
)
の右の手に暖かな手の
生
(
なま
)
なましく触れたのを感じた。彼はもどかしそうにその手を握ったのであった。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
N大尉は
己
(
じぶん
)
でも危険に遭遇しているので、もしや
彼
(
あ
)
の時にどうかしたのではないかと思ってS中尉の身の上を心配しいしい帰って来た。
空中に消えた兵曹
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
今来て見ると
己
(
じぶん
)
たちの乗っていた飛行機がすこしの損傷もなく着陸していたので、まるで愛児にでも
逢
(
あ
)
った時のように嬉しかった。
人のいない飛行機
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「この間中は、変なことばかりで、
己
(
じぶん
)
が発狂しているからこんな錯覚を起すのではないかと思って、気もちが悪くてしかたがない」
妖影
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
家の
構
(
かま
)
えから見て、これはどうしても富豪の別荘であるが、人違いでないとすれば、何のために貧乏学生の
己
(
じぶん
)
を呼び入れたのであろう。
藤の瓔珞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お露が
己
(
じぶん
)
のことを思いつめて、其のために病気になって死んだと云うことを聞いたので、それ以来お露の
俗名
(
ぞくみょう
)
を書いて仏壇に供え
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
小柄なヒステリイの強い眼の下に影のある
年増
(
としま
)
女の顔が浮んで来ると、彼は
己
(
じぶん
)
をふうわりと包んでいた
靄
(
もや
)
の
裂目
(
さけめ
)
が出来たように感じた。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
親興は一人の家来に耳打をして、それを比江村の
己
(
じぶん
)
の城へやった。それは妻子を落すためであった。親興には五人の小供があった。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは洋服の男が
己
(
じぶん
)
の方へ向って云った
詞
(
ことば
)
であった。謙作は箸を控えて顔をあげた。洋服の男は
赧黒
(
あかぐろ
)
い細長い顔をこっちへ向けていた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは今日の
昼飯
(
ひるめし
)
に怪しい僧にも
別
(
わ
)
け、
己
(
じぶん
)
達も
喫
(
く
)
ったような
三個
(
みっつ
)
の
黍団子
(
きびだんご
)
であった。顎髯の男はうんと云って
背後
(
うしろ
)
に倒れて気を失った。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
さっき
己
(
じぶん
)
が腰をかけていた右側の階段に、あの
箒
(
ほうき
)
の老人が傍へ箒をもたせかけて腰をかけていた。広巳は急いで老人の前へ往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
権兵衛は普請役場の内にある
己
(
じぶん
)
の
室
(
へや
)
にいた。其処は八畳位の畳も敷き障子も入っているが、壁は板囲の山小舎のような室であった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
主翁は
己
(
じぶん
)
をこんな処へ
伴
(
つ
)
れて来てどうするつもりだろうと思って、そっと書生の顔を見た。主翁は怖れて
眼前
(
めさき
)
が
眩
(
くら
)
むように思った。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
壮い婢は
何人
(
たれ
)
か
己
(
じぶん
)
を見ているものでもないかと云うようにして、ちらと後を見ておいて年老った婢の
鼻端
(
はなさき
)
へ近ぢかと顔を持って往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は人のいない暗い空家の中へ入って寝ているので、もしや俺は夢でも見ているのではないかと思って、
己
(
じぶん
)
の体に注意してみた。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし、道夫はそんなことよりも早く下宿へ帰って、寝ぼけている
婢
(
じょちゅう
)
にはかまわず、台所から酒を持って来て
己
(
じぶん
)
で
燗
(
かん
)
をして飲みたかった。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は不意に日本刀を抜いて、
裁縫
(
さいほう
)
していた
己
(
じぶん
)
の女房を殺して、それから店へ出て主人を殺し、そして、己もその
刃
(
やいば
)
に
斃
(
たお
)
れたものであった。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
順作の驚いたのは昨夜
己
(
じぶん
)
の手で
瓶
(
かめ
)
の下へ伏せた父親が
一昨昨夜
(
いっさくさくや
)
死んでいると云う奇怪さであった。しかし、それは云えなかった。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お杉は
己
(
じぶん
)
の
盃
(
さかずき
)
へ酒を
注
(
つ
)
ぎながら、汚い
食卓
(
ちゃぶだい
)
の
向前
(
むこうがわ
)
にいる長吉の方を見た。眼の不自由な長吉は、空になった盃を前へ出していた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
大連
(
たいれん
)
で夜間飛行の練習をやっていると、計器盤のある処に
点
(
つ
)
いているライトの光で、その
黒塗
(
くろぬり
)
の計器盤に、
己
(
じぶん
)
の乗っている飛行機の
後
(
うしろ
)
から
追っかけて来る飛行機
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と、
己
(
じぶん
)
が今通って来た路に二人伴の人影がちらと見えた。彼は吃驚して其のまま鳥を懐へねじ込んで、急いで畑から出てそそくさと歩いた。
雁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
秋の末になってまた少しの暇ができたので、今度は北山の方へ往くと云って、
己
(
じぶん
)
の
室
(
へや
)
で鉛を熔かしてそれで十匁弾を鋳ていた。
猫の踊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
律義者
(
りちぎもの
)
の主翁は
己
(
じぶん
)
の家の客を恐ろしい処へやって、もし万一のことがあっては
旅籠
(
はたご
)
としての
瑕
(
きず
)
にもなると思ったので
強
(
し
)
いて止めようとした。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
今度は枝を越してその
端
(
はし
)
がふうわりと前に来た。務は手早くその端と手にしている一方の端を入り違わせて、
己
(
じぶん
)
の
額
(
ひたい
)
のあるあたりで結んだ。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「まあ、上へあがるが好い」と、主人は
己
(
じぶん
)
で上へあがりながら、伴れて来た二人にも、「さあ、あがってくれ」と云いました。
死人の手
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
真澄は
盃
(
さかずき
)
を持っている
己
(
じぶん
)
の姿に気が
注
(
つ
)
いた。気が注くとともに今のは夢であったのかと思った。夢にしては余りに記憶がはっきりしている。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
女は
己
(
じぶん
)
の
盃
(
さかずき
)
を
執
(
と
)
って憲一の口へ持って往った。憲一は微笑しながら一口飲んで女を見た。女のうるおいのある眼がじっとこちらを見ていた。
藤の瓔珞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
叔母も叔父も知っていて、
己
(
じぶん
)
の気を引くためにこんなことを云ってるのだから、なまじっか隠しだてをしないが好いと思った。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
どうせ運のない体なれば、
己
(
じぶん
)
の犠牲になった友といっしょに死んで、せめてもの申しわけをしようと思いだした。夜はもう明けかけていた。
魔王物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
章一は
袴
(
はかま
)
の
紐
(
ひも
)
を結んでいた。章一は
右斜
(
みぎななめ
)
に眼をやった。
己
(
じぶん
)
が今
髭
(
ひげ
)
を
剃
(
そ
)
っていた鏡台の前に
細君
(
さいくん
)
の
額
(
おでこ
)
の出た
黄
(
きい
)
ろな顔があった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
枕頭には、
己
(
じぶん
)
の前にある団子と同じ色の団子を盛った皿が置いてありました。旅人はそれを見まいとして、急いで眼を茶釜の方に移しました。
死人の手
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何時かも
己
(
じぶん
)
の里に紛擾が起ったので、それへ往っていて夜になって帰って来ると、膳
前
(
さき
)
の酒を一人で飲んでいたお爺さんが
地獄の使
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
甚九郎は恐れて折角の
謀
(
はかりごと
)
をうやむやにしてしまった。とても女を出て往かすことはできないから、
己
(
じぶん
)
から逃げようと思った。
山姑の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
丹治も今あんな目にあったから
己
(
じぶん
)
の顔色が悪いだろうと思ったが、何か飲まないとゆっくりそれを話すことができなかった。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この人はただの者ではない、
若
(
も
)
しかすると
己
(
じぶん
)
の求めておる神仙であるかもわからないと思った。河野はそのまま土の上につくばうようにした。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
忰
(
せがれ
)
の方は思いだしたように茶碗を持って茶を飲んだが、立って往く時に
己
(
じぶん
)
の顔をじっと
覗
(
のぞ
)
き込んで往った女の眼がどこかにこびりついていた。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そう云って順作は瓶を離れながら
四辺
(
あたり
)
に眼をつらつらとやった。それは
己
(
じぶん
)
のやっていることを見ている者がありはしないかと注意するように。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
新八郎が好く好く見ると、蚊帳の上の物は
己
(
じぶん
)
が昼間穿いて来た下駄であった。と、見ているうちに、ふと消えて無くなった。
魔王物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
己
(
じぶん
)
は濡れた
枯蘆
(
かれあし
)
の中の小さな
祠
(
ほこら
)
の傍へ寝ていたが、枯蘆のさきには一
艘
(
そう
)
の小舟が着いていて、
白髪
(
しらが
)
の老人が
水棹
(
みさお
)
を張ってにゅっと立っていた。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
新一はその魚の骨のようなものをじっと見詰めていたが何か思いついたのかそのまま卵塔場を出て、何くわぬ顔をして
己
(
じぶん
)
の家へ帰って往った。
狐の手帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
許宣は白娘子に別れ、小婢に
門口
(
もんぐち
)
まで見送られて帰って来たが、心はやはり白娘子の傍にいるようで、
己
(
じぶん
)
で己を意識することができなかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
夢心地に何者かが来て
己
(
じぶん
)
の体を高いところへかろがろとあげたように思いましたので、びっくりして眼を開けて見ますと
人蔘の精
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と、云って
己
(
じぶん
)
の名を呼ぶ声がした、お種は
何人
(
だれ
)
だろうと思って考えてみたが、耳なれない声であるから猪作でもなければ伝蔵でもないと思った。
蟹の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして小坊主を対手にしていると朝になって通りかかった者に注意せられ、気が
注
(
つ
)
いてみると
己
(
じぶん
)
は
荊棘
(
いばら
)
と相撲をとって血みどろになっている。
鷲
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
小柄な男は右の手を握ってから人さし指ばかりを開き、それを
己
(
じぶん
)
の
鼻端
(
はなさき
)
に
触
(
さわ
)
るように持って往ったが、それは非常にすばしこいやり方であった。
女の首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
若侍はさては
己
(
じぶん
)
の殺したのはお姫様であったか、しまったことをしたと思って、全身の血が一時に氷結したように思った。
村の怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
(待てよ、このことは、
己
(
じぶん
)
の身にとって、青木一家にとって、極めて重大な事件だ、これは、好く前後を考えたうえの所置にしなければならん)
雨夜草紙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“己”の意味
《名詞》
おのれ。自分。
つちのと。十干の6番目。
(出典:Wiktionary)
“己”の解説
己(き、つちのと)は、十干の6番目である。
陰陽五行説では土性の陰に割り当てられており、ここから日本では「つちのと」(土の弟)ともいう。
(出典:Wikipedia)
己
常用漢字
小6
部首:⼰
3画
“己”を含む語句
自己
知己
己等
己惚
己達
利己主義
大己貴命
己酉
己丑
己卯
一己
妲己
己巳
己斐
克己心
己亥
塙保己
利己主義者
利己主義男
己未
...