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孵
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かえ
ふりがな文庫
“
孵
(
かえ
)” の例文
「象の卵?……おっと、触った、触った。……
南無三
(
モン・ジュウ
)
、こりゃどうじゃ、もう
孵
(
かえ
)
っているに! 俺ぁいまたしかに象の鼻に触った!」
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
卵をたった一つ
孵
(
かえ
)
させるのは無駄だから、取って来ようかと云うのである。石田は、「抱いているなら構わずに抱かせて置け」と云った。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
百姓家
(
ひゃくしょうや
)
の
裏庭
(
にわ
)
で、
家鴨
(
あひる
)
の
巣
(
す
)
の
中
(
なか
)
に
生
(
うま
)
れようとも、それが
白鳥
(
はくちょう
)
の
卵
(
たまご
)
から
孵
(
かえ
)
る
以上
(
いじょう
)
、
鳥
(
とり
)
の
生
(
うま
)
れつきには
何
(
なん
)
のかかわりもないのでした。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そのとたん、まるで映画のタイトルでも読んだようにはっきり、日本のファシスト、ベルリンで
孵
(
かえ
)
る、という文句が伸子の心にうかんだ。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
いまだ
孵
(
かえ
)
らぬ卵をかぞえるような愚かなことですけれど。天香さんがはるばる私を見舞いに来て下さるそうで、もったいなく思っています。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
冬から続いて仲よくしている雀が、さっさと巣を造ってもう一番子を
孵
(
かえ
)
したろうと思う頃まで、まだ相手がきまらず飛んであるく雀がある。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「ませた、おちゃっぴいな小女の目に映じたのは、色の白い、卵から
孵
(
かえ
)
ったばかりの雛のような目をしている青年である。」
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
しかし、火の鳥は、いつのまにか、ここらの
郷武者
(
さとむしゃ
)
の間に、卵を
孵
(
かえ
)
していた。彼の肉親のうちからも孵っている。弟の正季などもその一人だ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
毎日二三度ずつ見に行くのだが、今日は遊びに
屈託
(
くったく
)
していて、一遍も行って見ない。事によると
孵
(
かえ
)
ってるかも知れない。今日は大分暑かった。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
私はお前達に、その蟻も他の昆虫と同じやうに、鳥の卵のやうな卵から
孵
(
かえ
)
るのだと云ふ事をお話ししなければならないね。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
いま
孵
(
かえ
)
ったばかりの小雛が外へ向って呼ぶ声と、外の母鶏が卵の中からその小雛を連れ出そうと殻を
啄
(
つつ
)
く母鶏の嘴とが
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
冬雪積まず夏苗長ぜず鳥雀
巣
(
すく
)
わず、星夜
視
(
み
)
れば黒気天に上る、蛟
孵
(
かえ
)
る時
蝉
(
せみ
)
また酔人のごとき声し雷声を聞きて天に上る
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鶏
(
にわとり
)
に
孵
(
かえ
)
させると、かれらは何かにおどろくとたちまち飛び散ってそのまま行きがた知れずになってしまうそうである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
少年の私は、
孵
(
かえ
)
ったばかりの千鳥の子を追って、石に
躓
(
つまず
)
き生爪を
剥
(
は
)
がして泣いたことも、二度や三度ではない。
利根の尺鮎
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
この蠅は、最初壜に入れたときは二匹であったが、特別の装置に入れて置くために、だんだん子を
孵
(
かえ
)
して、いまではこのとおり二十四五匹にも達している。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
山上の湖水なんかにどうして
鰻
(
うなぎ
)
がいるか知ってるかい? 鰻って奴は、必ず海に卵を産んで、その卵から
孵
(
かえ
)
ったのが、川を遡って内地……と云っちゃあ変だが
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
このいきれた空気の中に、屋根草は芽を吹き、もろもろの虫の卵は
孵
(
かえ
)
り、天地の春を形づくるのであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
この成虫は書物の中で
孵
(
かえ
)
って外へ飛び出で雌す雄すイイ事をした後ちは復た書物の中へ卵を産み付けにその雌すがやって来る。雄すは何処っかでノタレ死だろう。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
こういう事情で、今まで母一人で
懐
(
ふところ
)
に
抱
(
だ
)
いていた問題を、その
後
(
のち
)
は僕も抱かなければならなくなった。田口はまた田口流に、同じ問題を
孵
(
かえ
)
しつつあるのではなかろうか。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
孵
(
かえ
)
った雛は直ぐ立ち上ることができ、親雞の羽の下から小さい脚を見せている。また雛には玉子色の産毛が密生していて、可憐である。親雞は雛を抱いて満足そうである。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
私達が泊っている下宿屋の、私達の寝室の窓の下で一羽の
黒鳥
(
くろとり
)
が巣を作っています。最初に彼女は卵を生みました。そして今、彼女はそれを
孵
(
かえ
)
さなければならないのです。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
実際、神業に近い技術をもつ技師君は鶏卵をあひるの卵の中に移しかえ、それを
孵
(
かえ
)
す実験をやっている。さて卵の帽子をキチンとかぶせ、熱に強い特殊セロテープでふさぐ。
オフ・ア・ラ・コック・ファンタスティーク:――空想半熟卵――
(新字新仮名)
/
森於菟
(著)
雛
(
ひな
)
を
孵
(
かえ
)
して間もない親鶏が満足気にその雛を引き連れて歩いている様子からその親鶏の大きく丸い形や雛どもの小さく丸い形やまでが、やはり初夏らしい心持を持っている。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「——どんな鳥でも、殻に傷のついた卵は
孵
(
かえ
)
さない、巣の中からはじき出してしまうそうだ」
醜聞
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから五、六日経つと磯貝は一箇の薄黒い卵を持って来て、これを
孵
(
かえ
)
してくれといった。見馴れない卵であるからその親鳥をきくと、それは慈悲心鳥であることが判った。
慈悲心鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
先年上野の動物園で鶴が雛を
孵
(
かえ
)
したときも雌雄の親鳥がていねいにこれを養い育て、初めは
鰌
(
どじょう
)
を小さく切って食わせ、次には鰌を水中におよがせてはこれを捕える練習をなさしめ
生物学より見たる教育
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
数日の後にそれが見事に
孵
(
かえ
)
って布団の中から雛が幾羽も飛び出したというのである。
銷夏漫筆
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
そして善良な
牝鶏
(
めんどり
)
が専心に卵を
孵
(
かえ
)
すように、二人の若い恋人の物語を育ててやった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あるいはいつか
孵
(
かえ
)
る時があるかも知れません。しかしあの時はいったひびはそのままになっています。それは偶然にはいったひびではなく、やはり彼自身の心にある必然のひびでした。
土下座
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
あの年を取った去年の鳥、
孵
(
かえ
)
したばかりの雛を殺された親鳥、彼らも若いのに劣らず愛し合っていた。わたしは、彼らがいつも一緒にいるのを見た。彼らは逃げることが上手であった。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「でボースンやカムネ(カーペンター——大工——の
訛
(
なま
)
り)はどうするんだね」波田はボースンや大工が裏切り者になりはしないかを恐れた。彼らは
籠
(
かご
)
の中で
孵
(
かえ
)
った目白のようなものであった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
片隅でその
雛
(
ひな
)
を
孵
(
かえ
)
すのに好ましい所だ、と書いているが、それは百二十年の昔のことで、その後一八四七年以来、此の家は公有となり、一八五七年には大修繕が施され、一八九一年以来国有となり
シェイクスピアの郷里
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
其の二年程前から——前に孝ちゃんの家が裏に居た頃——一番上の弟が鶏を飼い始めて、春に二度目の雛を八羽ほど
孵
(
かえ
)
させた。
二十三番地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
雑巾を
掴
(
つか
)
んで突っ立った、ませた、おちゃっぴいな
小女
(
こおんな
)
の目に映じたのは、色の白い、卵から
孵
(
かえ
)
ったばかりの
雛
(
ひよこ
)
のような目をしている青年である。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
清潔にした室に藁の
篩
(
ふるい
)
を置き、その上に桑の葉を置く。そして幼虫は家の中で卵から
孵
(
かえ
)
る。桑は大きな木で、其の幼虫を養ふ目的で栽培するのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
頼朝は平家に捕われて、伊豆の配所に二十年の歳月を、行い澄まし、北条時政の娘、政子に眼をつけて、恋の巣に大望の卵を
孵
(
かえ
)
す長計を立てている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たぶんコーヒー沸しの熱にでもあたためられて
孵
(
かえ
)
ったのであろうが、その虫が板をカリカリ
嚼
(
かじ
)
って出ようとしているのは数週間前から聞かれていた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
それに巣箱を引掛けて三回ほど
雛
(
ひな
)
を
孵
(
かえ
)
させて見たところでは、子雀の時代にいつもこの巣箱の附近へ、集まって来る者がちょうど一腹の数ほどあった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
人間から
孵
(
かえ
)
りかけている。人間からふわり/\脱け出しかけている——という人間だ。このものゝ一種を、印度の古典思想では
慾天
(
よくてん
)
と名付けているのだが——
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つまり、この蠅は、自然に発生したものではなくて、飼育されたものから
孵
(
かえ
)
ったのだということが出来ます
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蛇や
蟾蜍
(
ひきがえる
)
が、鶏卵を伏せ
孵
(
かえ
)
して生ずる所で、眼に大毒あり能く他の生物を
睨
(
にら
)
み殺す、古人これを猟った唯一の法は、毎人鏡を手にして向えば、彼の眼力鏡に映りて、その身を返り
射
(
い
)
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
かれは深い興味をもってその飼い方をいろいろに工夫した。そうして、どうやらこうやら無事に卵を
孵
(
かえ
)
したが、雛は十日ばかりで
斃
(
たお
)
れてしまったので、かれの失望よりも妻の恐怖の方が大きかった。
慈悲心鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
庭の桜の
叉
(
また
)
になった枝の上に、鶸の巣があった。見るからに
綺麗
(
きれい
)
な、まん丸によく出来た巣で、外側は一面に毛で固め、内側はまんべんなく
生毛
(
うぶげ
)
で包んである。その中で、
雛
(
ひな
)
が四羽、卵から
孵
(
かえ
)
った。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「患ってるんじゃねえ、卵を
孵
(
かえ
)
してる。象の卵を孵してる」
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ふところの体熱は、今、しっかりと幸福の卵をだいて
孵
(
かえ
)
している! かれはそう思って、また微笑を禁じ得なかった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでもなお、かれらの仲間のうちには、いつのまにやら誰も知らないうちに産みつけられた卵から
孵
(
かえ
)
った
蛆
(
うじ
)
のような気まぐれな考えを頭に宿したのが出てくる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
雛
(
ひな
)
は昨日あたり
孵
(
かえ
)
ったかと思われるのが四ついたという。あれから半月以上にもなるから、もうまた大分成長したことであろう。ところがこの婆さんは子なしであった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
蛇また
蟾蜍
(
ひき
)
が雄鶏が産んだ卵を伏せ
孵
(
かえ
)
して生じ、蛇形で翼と脚あり、鶏冠を
戴
(
いただ
)
くとも、八足または十二足を具え、
鈎
(
かぎ
)
ごとく曲った
嘴
(
くちばし
)
ありとも、また単に白点を頂にせる蛇王だともいう。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「卵の
雛
(
ひな
)
が
孵
(
かえ
)
りましたのです」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「君は、
虚病
(
けびょう
)
もうまいが、怒る真似もうまい。いや裏表の多い人物だ。——君の静養というのは、伝国の
玉璽
(
ぎょくじ
)
をふところに温めて、やがて
鳳凰
(
ほうおう
)
の
雛
(
ひな
)
でも
孵
(
かえ
)
そうという
肚
(
はら
)
だろう」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孵
漢検1級
部首:⼦
14画
“孵”を含む語句
孵化
孵卵器
孵化場
一孵
孵化場長
孵卵