夜更よふか)” の例文
それは昨夜の夜更よふかしのせいもあったろうし、外はこの雪でもあるし、こうして寝かしておけばいつまで寝ているかわかりません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
花で夜更よふかしをして、今朝また飲んだ朝酒のいのさめかかって来た浅井は、ただれたような肉のわななくような薄寒さに、目がさめた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
長兄のところへ舞戻って来てからもう一カ月以上になるのに、彼は何の職にくでもなし、ただ朝寝と夜更よふかしをつづけていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
夜半といっても十二時ころで、高品さんの家はいつも夜更よふかしをするから、さしておそすぎるとも思わず、夫人は気軽に小屋へ訪ねていった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まあ、お民さんとこ夜更よふかしして、じゃ、おやすみってお宅を出る。遅い時は寝衣ねまきのなりで、寒いのもいとわないで、貴女が自分で送って下さる。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆうべも深更まで側において、興のつきないまま夜更よふかしをさせた。悪寒さむけがするとつぶやいていたが、丈夫な自分にはつい思いやりが足らなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは無理に声を使ひ、無理に酒や煙草を飲み、無理に夜更よふかしをし、無理な借銭や、無理な恋をするといつた風にすべてが無理づくめなからださうだ。
りやそんなに夜更よふかしするもんぢやねえ」といたはるやうなたしなめるやうな調子てうしていつてるのである。さうすると
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二人とも有名なドーヴィル愛好者だ。カルタをして居るボニ侯爵は年の割に艶々つやつやして居る。容色の為午前二時より以上夜更よふかしをせぬ真剣な洒落しゃれものだ相だ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今まで、家中うちじゅうで婆やの次に、起きていた新子が、夜更よふかし続きで、つい寝坊になり、この頃では十一時過ぎまで、寝てしまっても、なお頭の重い感じである。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
巫山戯ふざけたり、女中が持て余すほど夜更よふかしをしたのですから、夢子の死に関する限り、卓二は絶対に無関係で、これは最初に断わって置かなければなりません。
冬は六時、夏は五時には必ず起き、夜はなるべく安眠する方針である。稀には夜更よふかしをしても、朝は我慢して所定の時間には起床する。冷水浴も今はやってはおらぬ。
「活動へ行って夜更よふかしをするから、朝の中頭がボンヤリしているんだ。晩に早く寝れば直るよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いつもの通りうちにいたならば、たといどんなに夜更よふかしをしようとも、こう遅くまで、気を許して寝ているはずがないと思った彼女は、眼がめると共にね起きなかった自分を
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
凡ての事情が偶然にも山野氏を指さしている様に見えたのです。第一事件の当夜山野氏は洋館の方で夜更よふかしをしました。運転手の蕗屋をおいかけて行って多額の金円を与えました。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はドバルにおこされたのです。ドバルは手燭てあかりを持って、ごらんのように昼間の仕度のままで私の寝台のかたわらに立っていたんです。もっともドバルは時々夜更よふかしをする癖があったのですがね。
やがて、お酒と、煙草と、夜更よふかしと、おしゃべりとで、声がつぶれてしまったのであろうと思われる、不思議な調子の若い男が、短衣ちょっきで出て来て、キャラキャラした声で来意をたずねた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
だが、家のものとしては、年頃でいて、のらくらと夜更よふかしの連続では、愛想をつかす方がもっともと思うと、雨垂あまだれほどに戸も叩けず、すごすご近くの聖天山しょうでんやまで夜を明かすのが例にさえなった。
小「イヤ/\今夜は是非帰らんければならんが、四五日内にまた尋ねて来ますから、お前、身の上を大切にして、いかえ、夜更よふかしをするしょうばいだから身体に障らんようにして、宜いかえ」
お光は平一郎の急に多くなった外出、夜更よふかしに心配したけれど、彼女は急には平一郎にそれと注意しないだけの思慮を積んでいた。危険な峠が我が独り子の道にさしかかっているのを彼女は認めた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
れは私が大酒たいしゅ夜更よふかしの功名ではない僥倖ぎょうこうである。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
他の水夫やエンジさんは、毎晩のように飲みにでかけ、帰ってくると「一厘ばな」かさいころ博奕ばくち夜更よふかしをした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ここの障子は、幼いものの夜更よふかしを守って、寒いに一枚開けたまま、あられの中にも、父と祖母のなさけの夢は、紙一重ひとえの遮るさえなく、机のあたりにかよったのであった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蕪村が宵つ張なのに何の不思議もない筈だ、彼は画家ゑかきであると共に、夜更よふかしが附物つきものの俳諧師でもある。
このムールのスープは冬の夜など夜更よふかしして少し空服くうふくを感じた時食べると一等いい。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二夜、夜更よふかしが続いたので、朝は深い眠りで、明るくなったのにも気がつかず、新子は、十一時半頃、やっと眼を覚した。傍の美和子は、まだ綺麗な寝顔で、しんしんと眠っていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お銀は時々湯島の親類の家で、つい花を引きながら夜更よふかしをすることがあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その夜は夜更よふかしをした上に一寸昂奮する様な出来事もあったので、寝つきが悪かった代りには、僅の間であったが、ぐっすりと熟睡してしまって、朝六時頃に目を覚ましたまでは何事も知らず
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
他の水夫やエンジさんは、毎晩のように飲みにでかけ、帰ってくると「一りんばな」かさいころ博奕ばくち夜更よふかしをした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こゝの障子しやうじは、をさないものの夜更よふかしをまもつて、さむいに一まいけたまゝ、あられなかにも、ちゝ祖母そぼなさけゆめは、紙一重かみひとへさへぎるさへなく、つくゑのあたりにかよつたのであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何も夜更よふかししてまで克明に答案を調べるにも及ばない、爪先で一々跳ね飛ばしてもよく判る筈なので、それを発明した和田垣博士の効績てがらは、立派な天才の事業である。
菊枝が毎度出ましてお邪魔様でございます、難有ありがとう存じます。それから菊枝に、病気揚句だ、夜更よふかしをしてはくないからお帰りと、こう言うのだ。てめえまたかりん糖の仮色こわいろを使って口上を
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)