とら)” の例文
すなわ曹国公そうこくこう李景隆りけいりゅうに命じ、兵を調してにわかに河南に至り、周王しゅく及び世子せいし妃嬪ひひんとらえ、爵を削りて庶人しょじんとなし、これ雲南うんなんうつしぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
隷官はその乞児に意味があるだろうと思って、すかさずとらえて庁に帰った。張廷栄は再三これを鞫問きくもんした。それは猴の主人を毒殺した相手の乞児であった。
義猴記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
れもし行きめぐりて人をとらえてめしあつめ(すなわち裁判官が巡回して犯罪人を捕え集めて裁判する如くし)給う時は誰かよくこれをはばまんや、彼は偽る人を
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
が、非力な伊豆をいつぺんに跳ね返すと、あべこべに伊豆の首筋をとらへて有無を言はさず絞めつけた。伊豆はばたばた踠いて危く悶絶するところまでいつた。
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
外道げどう常見じょうけんとらわれ、すなわちいわく、『過去、未来、現在、ただこれ一識にして遷謝せんしゃあることなし』と。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
デンネットの『フィオート民俗記』に、コンゴ河辺に鱷に化けて船をかえし、乗客をとらえ売り飛ばす人ありといえるは、目蓮等が神通で竜に化した仏説に似たり。
一度こういった記念の書を出そうと思い立って、それにいつまでもとらわれていなかったら、あるいはもう少し安らかな、人を楽しましめる雑記が出来たかも知れぬ。
由来が執拗しつようなる迷信にとらえられた僕であれば、もとよりあるいは玄妙なる哲学的見地に立って、そこに立命の基礎を作り、またあるいは深奥なる宗教的見地にって
宝永六年羅馬ローマ伝教師シロテの来りてとらわるるに際し、我が俊敏にして精識なる新井白石が、これと問答して異聞を記したるものを見るに、その問答の調子、何となく一致せず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
イエスをわたす者かれらにしるしをなしてひけるは我が接吻くちづけする者はそれなり之をとらへよ。直にイエスに来りラビ安きかと曰て彼に接吻くちづけす。イエス彼に曰けるは、友よ何の為に来るや。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
激怒が再び彼の父をとらえた。父は、その拳がいたくなる位、はげしく息子の頭を打った。打っている中に次第に病的な兇暴さが加ってくるのが、たれている三造にまで感じられた。
プウルの傍で (新字新仮名) / 中島敦(著)
そこには細君と一人の下男とが一つのさかずきの酒を飲みあっていたが、そのさまがいかにも狎褻おうせつであるから周は火のようになって怒り、二人をとらえようと思ったが、一人では勝てないと思いだしたので
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
鎮江ちんこうたたかいに、とらえられてばくせらるゝや、勇躍して縛を断ち、とうを持てる者を殺して脱帰し、ただちに衆を導いて城をおとしゝことあり。勇力察すし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次には「またその強き歩履あゆみせばまり、その計るところは自分を陥しいる、すなわちその足にわれて網に到り、また陥阱おとしあなの上を歩むになわそのくびすまつわわなこれをとらう」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
春秋繁露しゅんじゅうはんろ』におよそ卿ににえとるにこひつじを用ゆ。羔、角あれども用いず、仁を好む者のごとし。これをとらうれども鳴かず、これを殺せどもさけばず、義に死する者に類す。
曾はとらえられて刑場へ往ったが、胸の中には無実の罪で殺されるという怒りが一ぱいになっていた。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
麻油は驚いた。が非力ひりきな伊豆をいっぺんにね返すと、あべこべに伊豆の首筋をとらえて有無を云わせずにめつけた。伊豆はばたばたもがいて危く悶絶もんぜつするところまでいった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
遂に彼等進み来り手をイエスにかけとらへぬ。——馬太マタイ伝廿六章
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
前には将門の妻がとらへられ、今は貞盛の妻がとらへられた。時計の針は十二時を指したかと思ふと六時を指すのだ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それは普通の民家でこしらえるきものではなかった。昨日まで朝夕あさばん生活くらしに困っていたものがそうした衣を着たので、たちまち周囲の疑惑を招いた。青年はたちまちとらえられた。
賈后と小吏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
理解もよい人にして、なおこんな愚説を信ずる一事だと言ったが、フェーラーが言ったごとく、蛇にとらわれわるるまで一向蛇を恐れぬ動物も、やはり蛇に魅せられるから
のち戦功をって累進して将となり、しょくを征し、雲南うんなんを征し、諸蛮しょばんを平らげ、雄名世にく。建文元年耿炳文こうへいぶんに従いて燕と戦う。炳文敗れて、成とらえらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
魔法を以て羅摩兄弟をとらえ、パノチに牲せんとした時、ハヌマンその祠に乱入してパノチを踏みつぶし二人を救うた縁により、右様の厄年の人は断食してハヌマンに祷れば無難だ。
行方河内両郡の食糧を奪つたものをとらへんとするものを、寃枉ゑんわうを好むとは云ひ難い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
熊楠諸国を遍歴して深く一じんせつをも破壊するてふ事の甚だ一国一個人の気質品性を損するを知り、昼夜奔走苦労してその筋へ進言し、議会でも弁じもらい、ついに囹圄れいごとらわるるに至って悔いず。