危難きなん)” の例文
彼はこのマスコットといっしょにいさえすれば、どんな危難きなんにあっても大じょうぶだという、信仰のようなものを持っていたのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
吾等われ/\この危難きなんからすくいだことは、大佐たいさ智惠ちゑでもとておよばぬのであらうと、わたくしふかこゝろけつしたが、いま塲合ばあひだからなにはない。
友を救うためには、自己じこ危難きなんをかえりみるべきでない、義侠ぎきょうの血をうけた富士男の意気いきは、りんぜんとして五体にみちた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「じゃ大胆に『危難きなんうみ』の南にそびえるコンドルセに着陸しよう。皆、防寒具ぼうかんぐに酸素吸入器きゅうにゅうきを背負うことを忘れないように。……では着陸用意!」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひどいやつがあったもので、人の危難きなんはわが楽しみ、まるで芝居の幕があくのを待つような心もちで
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
南洲及び大久保公、木戸公、後藤象次郎、坂本龍馬等公を洛東より迎へて、朝政に任ぜしむ。公既に職に在り、しば/\刺客せきかく狙撃そげきする所となり、危難きなんしきりに至る、而かもがう趨避すうひせず。
それも武田たけだとうのため。ああ、しかも伊那丸いなまるさまの危難きなんを知った日に、この鷲が、ふたたびじぶんの手にかえるとは、天がこの竹童ちくどうをあわれんでか、果心居士かしんこじさまのおまもりであろうか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし此心得このこゝろえ體得たいとくせられたならば、個人こじんとしては震災しんさいからしようずる危難きなんまぬかれ、社會上しやかいじよう一人ひとりとしては地震後ぢしんご火災かさい未然みぜん防止ぼうしし、從來じゆうらいわれ/\がなやんだ震災しんさい大部分だいぶぶんけられることゝおもふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
刺し去より後藤は夫婦の者に向ひヤレ/\危き事でありしが最早もはや我等が馳着はせつけたる上は心安く思はるべしされど御浪人には強き怪我けがもなかりしやと云に夫婦の者は大いによろこいづれの御方かは存ぜねどもはからず我々が危難きなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
出港しゆつかうのみぎり白色檣燈はくしよくしやうとうくだけたこと、メシナ海峽かいきようで、一人ひとり船客せんきやくうみおぼれた事等ことなどあだかてんこゝろあつて、今回こんくわい危難きなん豫知よちせしめたやうである。
修理された古い宇宙艇が、すこしばかりの金塊きんかいを土産に、「危難きなんの海」近くコンドルセを出発したのは、月世界に到着してから十日後のことだった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
光一の目は次第に熱気をおびてきた、かれの心はいまどうかして親友の危難きなんを救い、親友をして光ある世界に活躍せしめようという友情にみたされていた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と、異口同音いくどうおんにさけんだが、いかにかれの危難きなんを知っても、それへ力をしてやることもならず、わしはまた、バッと山かげに突きあたって飛翼ひよくをかえし、広い琵琶湖びわこの上を高くひくく舞いはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「火の玉」少尉にとっては、二重の危難きなんであった。いずれも予期しなかった不意打の危難であった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
本船ほんせん連續つゞけさま爆裂信號ばくれつしんがうげ、非常滊笛ひじやうきてきらし、危難きなんぐる號鐘がうしやうるゝばかりにひゞわたつたけれど、海蛇丸かいだまるおともなく、ずん/\と接近せつきんしてるばかりである。
じつに、武田一とう致命的ちめいてき危難きなんは、目睫もくしょうにせまっているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりは帆綱ほづなをしっかりとにぎりながら、危難きなんをさけた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と兄は始めて、この博士の室でったという危難きなんについて物語りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ワレ等ノ最後ノ勧告かんこくデアル。『危難きなんノ海』附近ニハ貴艇ノ云ウガ如キ何等ノ異変ヲ発見セズ。貴艇ノ観測ハあやまリナルコトあきらカナリ。ワガ忠告ヲ聞クコトナク出発スレバ、貴艇ノ行動ハ自殺ニ等シカラン」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「映写幕の左上の隅のところにあるのがアポロニウスという噴火口だ。その下の方——つまり北のことだが、危難きなんの海という名のついた海のあとさ。ほら、だんだん大きな噴火口が下の方からあらわれてくる……」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆面探偵の危難きなん
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)