分限ぶんげん)” の例文
追々触出し候おもむきを相守り、正路にして質素倹約を致すべく候処、だんだん御国恩を忘れ奢侈しゃしに移り衣食の分限ぶんげんわきまえず、三百目、五百目の品を相用い
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
また巫覡ふけんに迷うべからず、衣服分限ぶんげんに従うべし、年わかきとき男子とれ猥れしくすべからず云々は最も可なり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第九 食物しよくもつ衣服いふくごと分限ぶんげんによるは勿論もちろんなれど、肉食にくしよくあざらけくあたらしきしな野菜やさいわかやわらかなるしなえらぶべし。よく烹熟にたきして、五穀ごこくまじくらふをよしとすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
各自の職務には分限ぶんげんがあって、その範囲はんいだっするをゆるさぬ、すなわち厳格なる境界を越えてはならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
申入るゝ者多かりしが今度このたび同宿どうしゆく杉戸屋すぎとやとみ右衞門が媒人なかうどにて關宿せきやどざい坂戸村さかとむらの名主是も分限ぶんげんの聞えある柏木庄左衞門かしはぎしやうざゑもんせがれ庄之助に配偶めあはせんとてすで約束やくそくとゝの双方さうはう結納ゆひなふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この小さな日本を六十幾つにしきって、ちょっと隣へ往くにも関所があり、税関があり、人間と人間の間には階級があり格式があり分限ぶんげんがあり、法度はっとでしばって、習慣で固めて
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ふざけるねえ——それにしてもこう押し詰ってから大黒柱がぽっきりと来た日にゃあ、徳撰の店も上ったりだろうぜ。そこへ行くと、お前の前だが、一でえ分限ぶんげんの悲しさってものさのう。」
ゆうべお旗本のがま本多ほんだ部屋へやで、はんつづけて三ったら、いうてのにわか分限ぶんげんでの、きゅう今朝けさから仕事しごとをするのがいやンなって、天道様てんとうさまがべそをかくまでてえたんだが蝙蝠こうもりと一しょ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
土人どもは吉之丞の腹巻に触って、分限ぶんげんを見極めているため非常に親切で、一同を猟小屋へ連れて行って水を飲ませ、飯を炊いたり鹿の肉をあぶったりし、そのたびに錠銀を一つずつ請求した。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それを一部の社会では神聖な恋愛だとか人情の自然だとか、大層はやして奨励するような口気こうきがある。実に沙汰さたの限りだね。人間は誰でも自分の分限ぶんげんを守って心ののりを超えないのが美徳だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
紙入かみいれ莨入たばこいれなどに細工を込め、そのほかの品にも右に准じ、金襴きんらんモールの類に至るまで異風を好み、その分限ぶんげんわきまえず、ゼイタク屋などと家号を唱え候者これ有るよう相聞え
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人の天然生まれつきは、つながれず縛られず、一人前いちにんまえの男は男、一人前の女は女にて、自由自在なる者なれども、ただ自由自在とのみ唱えて分限ぶんげんを知らざればわがまま放蕩に陥ること多し。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第八 衣服いふく精粗美惡よしあしひと分限ぶんげんるといへども、肌着はだぎ木綿もめんフラン子ルをよしとす。蒲團ふとん中心なかわたあたらしくかはきたるものをたつとゆゑに、綿花わたかぎらずかま穗苗藁ほわら其外そのほかやわらかかはきたるものをえらぶべし。
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
そのようなる事をいたしおりてもつまりは時節が悪いなどと申し腰掛へ多分罷出で、かみへ御苦労相掛け候者これ有り。時節悪しきにてはなし、分限ぶんげんを忘るる故諸色しょしき高直こうじきに相成るなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)