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冷
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つ
ふりがな文庫
“
冷
(
つ
)” の例文
その広々とした部屋の隅に、まるで
冷
(
つ
)
めたさに吹き寄せられたようにして一つの卓子と数脚の
椅子
(
いす
)
らしい破れたものが置かれてある。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
鳥は園の
周囲
(
まはり
)
に鳴き、園丁の鍬に
堀
(
ほ
)
りかへさるる赤土のやはらかなるあるかなきかの
湿潤
(
しめり
)
のなかのわかき新芽のにほひよ、
冷
(
つ
)
めたけれども
力
(
ちから
)
あり。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
崖
(
がけ
)
の中途に乱生した
冷
(
つ
)
めたい草の株を
掴
(
つか
)
むたんびに、右手の指先の感覚がズンズン消え失せて行くのを彼は自覚した。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そないにいうのんがちょっとぐらい狂言としたかって、握ってる手エ次第に
冷
(
つ
)
めとなって来るような気イしますし
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「では間を抜きましょう。——あした見たら男は
冷
(
つ
)
めたくなって死んでたそうです。ヴィーナスに抱きつかれたところだけ紫色に変ってたと云います」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
麦倉河岸
(
むぎくらがし
)
には涼しそうな茶店があった。大きな
栃
(
とち
)
の木が陰をつくって、
冷
(
つ
)
めたそうな水にラムネがつけてあった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
踏
(
ふ
)
むに
冷
(
つ
)
めたき
板
(
いた
)
の
間
(
ま
)
を
引裾
(
ひきすそ
)
ながく
縁
(
ゑん
)
がはに
出
(
い
)
でゝ、
用心口
(
ようじんぐち
)
より
顏
(
かほ
)
さし
出
(
いだ
)
し、
玉
(
たま
)
よ、
玉
(
たま
)
よ、と二タ
聲
(
こゑ
)
ばかり
呼
(
よ
)
んで、
戀
(
こひ
)
に
狂
(
くる
)
ひてあくがるゝ
身
(
み
)
は
主人
(
しゆじん
)
が
聲
(
こゑ
)
も
聞分
(
きくわ
)
けぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
のみならず、海水浴をするのにも、潮はあまり
冷
(
つ
)
めたからず、快適の温度であるとのことである。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
チェーホフの
冷
(
つ
)
めたさについては、興ざめな証拠をまだまだ幾らでも並べることができる。例の『イヴァーノフ』(一八八九)を観て、ピストル自殺を遂げた青年があった。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
が、毒々しい色の刺身だのこちこちに固まったフライだの、水のように
冷
(
つ
)
めたい吸いものだの——そうしたものばかりのどこに箸をつけていいか分らなかった。——わたしの心もちは白け返った。
春深く
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
「おうつ、お
茶
(
ちや
)
は
冷
(
つ
)
めたくなつたつけかな」お
品
(
しな
)
はいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「オオ
冷
(
つ
)
めてえ! お婆さん、うまいなアこの水は」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その手は死人のように
冷
(
つ
)
めとうございました。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
冷
(
つ
)
めたき
飯
(
めし
)
に砂さへまじり
放翁鑑賞:06 その六 ――放翁絶句十三首和訳(つけたり、雑詩七首)――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
彼女の顔は死のように
蒼
(
あお
)
ざめており、私たちの間には、冬よりも
冷
(
つ
)
めたいものが立ちはだかっているようで、私はただ苦しみの
外
(
ほか
)
なにもなかった。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
吾輩はその横で背広服を脱いで、メリヤスの
襯衣
(
シャツ
)
とズボン下だけになった。メリヤスを一枚着ていると大抵な
冷
(
つ
)
めたい海でも
凌
(
しの
)
げる事を体験していたからね。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
津村も私も、歯ぐきから
膓
(
はらわた
)
の底へ
沁
(
し
)
み
徹
(
とお
)
る
冷
(
つ
)
めたさを喜びつつ甘い
粘
(
ねば
)
っこい柹の実を
貪
(
むさぼ
)
るように二つまで食べた。私は自分の
口腔
(
こうこう
)
に吉野の秋を
一杯
(
いっぱい
)
に
頬張
(
ほおば
)
った。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
堆くもり上るように伸び
交
(
かわ
)
した大きな葉の水々しさを、濃淡を、晴れ切った
真
(
ま
)
っ
青
(
さお
)
な空の下に遠くのぞむのもよければ、冬、
素枯
(
すが
)
れつくしたあとの褐色の
太
(
ふと
)
い茎のかげを
浸
(
ひた
)
して
冷
(
つ
)
めたくひろがった水
上野界隈
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
「何だか
冷
(
つ
)
めたいような心持がしますわ」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冷
(
つ
)
めたき足の爪さきに
畑
(
はたけ
)
の
土
(
つち
)
は新らしく
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
冬の海風が
冷
(
つ
)
めたかろうと出てみると触る風の和やかさ! 南へ来てよかったな、旅で充実を感じた
稀
(
まれ
)
な経験だった。
流浪の追憶
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そこを二三度も
石炭籠
(
すみかご
)
を担いで往復してから急に
上甲板
(
じょうかんぱん
)
の
冷
(
つ
)
めたい空気に触れると、眼がクラクラして、足がよろめいて、鬼のような荒くれ男が他愛なくブッ
倒
(
た
)
おれるんだ。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
冷
(
つ
)
めたい硝子戸のそとに。……
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私の
冷
(
つ
)
めたい心が、女の
虚
(
むな
)
しい激情を冷然と見すくめていた。すると女が突然目を見開いた。その目は憎しみにみちていた。火のような憎しみだった。
私は海をだきしめていたい
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
黒い鞄を二三度左右に持ち換えて、切れるように
冷
(
つ
)
めたくなった
耳朶
(
みみたぼ
)
をコスリまわした。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
冷
(
つ
)
めたい硝子戸のそとに。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
男は
却々
(
なかなか
)
見つからなかった。夜更けにむなしく帰ってきて
冷
(
つ
)
めたい寝床へもぐりこむ。病院の医者をダンスホールへ誘ったが、応じないので、病院通いもやめてしまった。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
静かな、切れるような
冷
(
つ
)
めたい風の中で、
碧玉
(
へきぎょく
)
のような
大濤
(
おおなみ
)
に揺られながらの海難……。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そなたの
冷
(
つ
)
めたい手は
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼の行動を批判する彼自身の
冷
(
つ
)
めたい正義観念も
交
(
まざ
)
っていたが、要するにそんなような種々雑多な印象や記憶の断片や
残滓
(
ざんさい
)
が、早くも考え疲れに疲れた彼の頭の中で、
暈
(
ぼ
)
かしになったり
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私が生れたとき、私の身体のどこかが胎内にひっかかって出てこず母は死ぬところであったそうで、子供の多さにうんざりしている母は生れる時から私に苦しめられて
冷
(
つ
)
めたい距離をもったようだ。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
今この男は心にもない
嘘
(
うそ
)
をついて冷酷に相手を観察しながら
喋
(
しゃべ
)
っている場面である。そこで今は
冷
(
つ
)
めたい目と、水のような声だけが必要なのだ。鼻や手や顔色や動作は次の機会に書く時があるだろう。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
冷
常用漢字
小4
部首:⼎
7画
“冷”を含む語句
冷笑
冷々
冷評
冷遇
冷水
冷淡
冷嘲
冷酒
冷却
冷奴
冷凍
湯冷
冷飯
冷泉
底冷
寒冷
冷気
秋冷
朝冷
冷冷
...