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其方
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そっち
ふりがな文庫
“
其方
(
そっち
)” の例文
注意が自然と
其方
(
そっち
)
に向かうのを引戻し引戻しするための努力の方が、努めて聞こうとする場合の努力よりもさらに大きいかもしれない。
ラジオ雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大根
(
おおね
)
はといえば好なんだから唐物屋なら唐物屋で、もっと給料を出すからといったところで、役者をやめて
其方
(
そっち
)
へ行きやしません。
久保田米斎君の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
母「
喰
(
た
)
べんと云うのに何故面前へ膳を
突附
(
つきつ
)
けたのじゃ、手前は母へ逆らうか、喰べんと云ったら喰べやアしません、
其方
(
そっち
)
へ持って
行
(
ゆ
)
け」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
生家
(
さと
)
では二三年のあいだ家を離れて、
其方
(
そっち
)
こっち放浪して歩いていた兄が、
情婦
(
おんな
)
に
死訣
(
しにわか
)
れて、最近にいた千葉の方から帰って来ていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「いずれ宗蔵の為には、誰か世話する人でも見つけて、
其方
(
そっち
)
へ預けて了おうと思う——別にでもするより外に仕様のない人間だ」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
「そうですか。旦那はいける方だったんですか。わたしと来たらお酒も煙草も、両方ともカラいけないんですよ。
其方
(
そっち
)
なら誰にも負けません。」
にぎり飯
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ドレ
其方
(
そっち
)
の床の間に在る其煙草入と紙入を取ッて寄越せ(妾)なに貴方賊など
這入
(
はいり
)
ますものか念の為めに見て
上
(
あげ
)
ましょう
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
僕は庭なぞを歩くとき、これまでは台所の前を通っても、中でことこと言わせているのを聞きながら、
其方
(
そっち
)
を見ずに通ったのが、今度は見て通る。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
スルトその
纜
(
つな
)
を
引張
(
ひっぱっ
)
て呉れ、
其方
(
そっち
)
の処を
如何
(
どう
)
して呉れと、
船頭
(
せんどう
)
が何か騒ぎ立て
乗組
(
のりくみ
)
の私に頼むから、ヨシ来たと
云
(
い
)
うので纜を引張たり柱を起したり
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
其方
(
そっち
)
へも来ていないと云うんで、大騒ぎになって、いろいろ心あたりを調べると、実は晝間これこれだったと云う。
紀伊国狐憑漆掻語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
其方
(
そっち
)
へ、廻ると、
此方
(
こっち
)
の隅へ逃げる。此方で捕まえようとすると
彼方
(
あっち
)
へ逃げる。——二、三度、繰返しているうちに、雲霧の血は、もう盲目的になり
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「久しぶりですから、一人ずつ立って話しちゃ何うです? 現在の仕事、将来の抱負、まあその辺のところをやり給え。それじゃ
其方
(
そっち
)
の隅から、松本君」
母校復興
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
が、棚の
傍
(
そば
)
にあった筈の椅子へ上衣をかけるつもりで
其方
(
そっち
)
へ行きかけたとたんに、何かの道具に膝をしたたか
打衝
(
ぶっつ
)
けて、あまりの痛さにアッと声をあげた。
孤独
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
すぐに小間使が出て来ましたので、繁青年が何か云うだろう、こう思って
其方
(
そっち
)
を見ましたところ、何んと驚くじゃァありませんか、繁青年はいないのです。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「判らないのは
其方
(
そっち
)
だ、金なんざ欲しくはない。貧乏はして居ても松本鯛六、あの人形に身売をさして、栄華を見ようとは思わない、サア直ぐ返して下さい」
新奇談クラブ:06 第六夜 人形の獄門
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「知らないわ。馬鹿らしい。好きな人がある位なら、始めっから
其方
(
そっち
)
へ行ったら好いじゃありませんか」
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あゝ、そうですか。じゃ一寸お待ちなさい!」と、次の間に入って行ったが、また出て来て、「宮ちゃん、
其方
(
そっち
)
の戸外の方から行きますから。」と、
密々
(
ひそひそ
)
と言う。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「待ってますよ。それからみどりは
未
(
ま
)
だ
其方
(
そっち
)
にいるかえ、余り帰りが遅いからどうしたかと思って」
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
... しやがつて、
其方
(
そっち
)
よりは
此方
(
こっち
)
が泣きてえ」と立掛り「さあ金を出さねえか、脇へこかしたな、
好
(
よ
)
し、尼あ引きずつて行つて、叩き売つて金にする」と
内侍
(
ないし
)
を
引立
(
ひったて
)
に掛る。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
戸外
(
おもて
)
の方は騒がしい、
仏間
(
ぶつま
)
の
方
(
かた
)
を、とお辻はいつたけれども
其方
(
そっち
)
を枕にすると、
枕頭
(
まくらもと
)
の障子
一重
(
ひとえ
)
を隔てて、中庭といふではないが一坪ばかりのしツくひ
叩
(
たたき
)
の
泉水
(
せんすい
)
があつて
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
おい、も少し
其方
(
そっち
)
い寄んねえ、己れやまるで日向に出ちゃった。
かんかん虫
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
二人共、酒盃は
其方
(
そっち
)
のけにして、石を並べはじめました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
杢「あゝ、まだ用があるよ、おい/\
其方
(
そっち
)
へ行っちゃアいけないよ、アラ垣根を跨いで出て行ってしまった、
粗忽
(
そゝっ
)
かしくって仕様がない」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わたくしは返事をせず、静に風呂敷の
結目
(
むすびめ
)
を直して立上ると、それさえ待どしいと云わぬばかり、巡査は後からわたくしの
肱
(
ひじ
)
を突き、「
其方
(
そっち
)
へ行け。」
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして
鉱山
(
やま
)
の
売買
(
うりかい
)
などに手を出していたところから、近まわりを
其方
(
そっち
)
こっち旅をしたりして暮していたが、東京へ来たのもそんな仕事の用事であった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
此処は一体何処やねんやろ! きっといつもの笠屋町の家に違いない、
生憎
(
あいにく
)
其方
(
そっち
)
い背中向けて寝てるのんで、二人の様子見えへんけど、見えんかてもう分ってる。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まあ、これが兄さん?」とお福は眺めて、「これは可愛らしいが、何だか
其方
(
そっち
)
はコワいようねえ」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「よく似合うよ、どれ
其方
(
そっち
)
へ向いてごらん。おお実に綺麗だ。不良共がさぞ
吃驚
(
びっくり
)
することだろう」
海浜荘の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下駄を突っかけると飛石伝いに
窃
(
そっ
)
と
其方
(
そっち
)
へ小走って行った。
燈火
(
ともしび
)
の射さない暗い露路に小供が一人立っていたが、しかしそれは小供ではなく思った通りトン公であった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
学長は取り合われなかった。余の講義のまずかったのは半分は
是
(
これ
)
が為めである。学生には御気の毒だが、図書館と学長がわるいのだから、不平があるなら
其方
(
そっち
)
へ持って行って貰いたい。
入社の辞
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
戸浪が立ち上るを「すざり居らう」と叱り、左手の刀の鐺を
其方
(
そっち
)
へつき出し、これに右の肘をもたせ、その上に体をのせかけ、口を開き舌を出して大見得あるところぢやぢやがきたり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「早い話が
其方
(
そっち
)
の旦那は
俺
(
あっし
)
がこの店を出した頃からのお得意さまです。十何年というもの、頭の毛が薄くなるまで
些
(
ち
)
っともお動きになりませんから、御出世が早くて、もう課長さんですよ」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
よべの嵐に吹き寄せられた板片木片を拾い集めているのである。自分は行くともなく
其方
(
そっち
)
へ歩み寄った。いつもの通りの
銅色
(
あかがねいろ
)
の顔をして無心に藻草の中をあさっている。顔には憂愁の影も見えぬ。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私の心は何も彼も忘れて了って、唯
其方
(
そっち
)
の方に迷うていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「
其方
(
そっち
)
へ行っちゃア危ない。
此方
(
こっち
)
から
窃
(
そっ
)
と出る方が
可
(
い
)
い。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「今しがた
其方
(
そっち
)
へ変な人間が行きアしないか」
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
隅「
何
(
な
)
んだい、
其方
(
そっち
)
へお出でよ、うるさいからお出でよ、袂へ取ッつかまって仕ようが無いヨウ、其方へお出でッたらお出でよ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お島は
楆
(
かなめ
)
と
欅
(
けやき
)
の木とで、二重になっている
外囲
(
そとがこい
)
の
周
(
まわり
)
を、
其方
(
そっち
)
こっち廻ってみたが、何のこともなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「誰だ、そんなに泣くのは……
其方
(
そっち
)
行け……あんまり種々な物を食べたがるからそうだ……めッ」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は何より、彼女の素足を見せられるのが一番強い誘惑なので、成るべく
其方
(
そっち
)
を見ないようにはしましたけれど、それでもちょいちょい眼を向けないではいられませんでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
侍従は
四辺
(
あたり
)
を見廻わした末、花瓶の蔭に腰かけている例の紳士を見出すと、
其方
(
そっち
)
へ大股に歩いて行った。侍従が恭しく一揖すると紳士は頷いて立ち上ったが、驚いた表情も見せなかった。
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「君はナカ/\分っているようだけれど、
其方
(
そっち
)
の大将はどうだい? 吉川君」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「勇美子さん、
其方
(
そっち
)
へ行ってはいけません」
身代りの花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
○「何の
事
(
こっ
)
た、人を馬鹿にして、
併
(
しか
)
し
面白
(
おもしれ
)
え、何か他に、あゝ
其方
(
そっち
)
にいらっしゃるお侍さん、えへゝゝ、旦那何か
面白
(
おもしろ
)
えお話はありませんか」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
まあ、あないに骨折らしときながら、
其方
(
そっち
)
の方い飛ばしり行くのん考えなんだのんは何といわれても手落ちですさかい、出て行く時にいろいろなもん買うてやったりして機嫌取りましてんけど
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その内に自分は何気なく新井君を振り向いて見ると不思議にも新井君は洋館とは反対の方面を見つめているではないか。で自分も
其方
(
そっち
)
を見ると、遥か向うの暗黒の中に、
提燈
(
ちょうちん
)
の灯が一つ燃えていた。
広東葱
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「このダンベラは、どうかして
其方
(
そっち
)
へ片付けろ」
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「
其方
(
そっち
)
です。その縁側の突き当りです」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
馬「高いね、もう
些
(
ち
)
っと安直なのは無いかね、安いので宜しい、今日一日の掛流しだから、安いのが
好
(
い
)
い、安いのは無いかい、
其方
(
そっち
)
の方のは幾らだ」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
其方
(
そっち
)
へ逃げたに相違無い。行って捕縛しろという謎なのである。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“其方”で始まる語句
其方除
其方此方
其方儀
其方退
其方達
其方共
其方法
其方共儀
其方們
其方側