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二本
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にほん
が、
名ではない。ばさりと
称へたは
其の
音で、
正体は
二本の
番傘、ト
蛇の
目に
開いたは
可が、
古御所の
簾めいて、ばら/\に
裂けて
居る。
この
木はもと
根株から
七つの
幹に
分れてゐましたが、
内五本は
先年の
暴風で
折れて
今は
二本の
幹だけとなつてしまひました。
六千四百
噸の
巨船もすでに
半は
傾き、
二本の
煙筒から
眞黒に
吐出す
烟は、
恰も
斷末魔の
苦悶を
訴へて
居るかのやうである。
下りざまに、おゝ、
一手桶持つて
女中が、と
思ふ
鼻のさきを、
丸々とした
脚が
二本、
吹きおろす
煙の
中を
宙へ
上つた。すぐに
柳川が
馳違つた。
今や
其二本の
烟筒から
盛んに
黒煙を
吐いて
居るのは
既に
出港の
時刻に
達したのであらう、
見る/\
船首の
錨は
卷揚げられて、
徐々として
進航を
始めた。
月は
隈ない、
其眞先に
黒烟を
吐いて
進んで
來るのは、
二本烟筒に
二本檣!
見忘れもせぬ四
年前のそれ※
もの
干棹の
長い
奴を
持出して、
掻𢌞して、
引拂かうと
思つても、
二本繼いでも
屆くもんぢやねえぢやあねえか。
樹が
高くつてよ。なあ
婆さん、
椋鳥の
畜生、ひどい
目に
逢はしやがるぢやあねえか。
と
左右を
顧み、
下男等に
言つけて、
持つて
來さした
握太な
杖二本。