上海シヤンハイ)” の例文
はげしいヒステリイ症の女で前の航海には船医が大分だいぶ悩まされたと話して居る。その女が今夜突然また此処ここから上海シヤンハイへ引返すと言出いひだした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
僕は上海シヤンハイへ渡る途中、筑後丸ちくごまるの船長と話をした。政友会せいいうくわいの横暴とか、ロイド・ジヨオジの「正義」とかそんなことばかり話したのである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鉄斎老人のつんぼなのを知つてゐる支配人は、上海シヤンハイまで聞こえはしないかと気遣はれるやうに、一段と声を張り上げていつた。
とまれ、十年前ねんまへあきの一乳色ちゝいろ夜靄よもやめた上海シヤンハイのあの茶館ツアコハン窓際まどぎはいた麻雀牌マアジヤンパイこのましいおといまぼく胸底きようていなつかしい支那風しなふうおもさせずにはおかない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
継母はおくみを今のうちへくれといて、後の夫と台湾へ行つてしまつたのだつたが、このときには上海シヤンハイにゐるとかいふ事を、養母が赤十字病院の人に聞いたくらゐのことで
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
上海シヤンハイがへえつちやぐつとさがつちやつてな、あつちぢやどれほどやすいもんだかよ、しなすくねえときやすくなるつちうんだから商人あきんどまうからねえ」天秤てんびんかついでかれまたさら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
上海シヤンハイ電報にると、地震は九月一日の早朝に起り、東京横浜の住民は十万人死んだ。東京の砲兵工廠こうしやうは空中に舞上り、数千の職工が死んだ。熱海・伊東の町は全くなくなつた。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三人は時に聞き取れぬやうな低声こごゑになり、時に荒々しい喧嘩声になり、又時にはお信さんの歔欷すゝりなきの声が交つたりしたが、私の聞き得たところによると、お信さんは、今度森田が上海シヤンハイ
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
八月の中旬横浜から上海シヤンハイ行の汽船に乗つて、神戸門司を経て長崎に上陸し、更に山を越えて茂木もぎの港にで、入海いりうみを横切つて島原半島に遊んだ後、帰り道は同じく上海より帰航の便船をまつて
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
この本は清朝しんてう同治どうぢ八年(千八百六十九年)蘇松そしよう上海シヤンハイ華草書院くわさうしよいんの出版である。序に「至咸豊三年中国士子与耶蘇教師参訳始成かんぽうさんねんにいたりちうこくのししやそけうしとさんやくはじめてなる
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
上海シヤンハイ香港ホンコン新嘉坡シンガポオルいづれの日本居留民中にあつても公共的の事業に物質上の基礎となつて居る者は常に彼等では無いか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それは乳色ちゝいろ夜靄よもやまち燈灯ともしびをほのぼのとさせるばかりにめた如何いかにも異郷いきやうあきらしいばんだつたが、ぼく消息通せうそくつうの一いうつて上海シヤンハイまちをさまよひあるいた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
支那の上海シヤンハイの或町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度インド人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加アメリカ人と何かしきりに話し合つてゐました。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
白石氏は長崎の人で上海シヤンハイ第一の日本酒楼六三亭の主人であるが、居留邦民中の任侠家として名高い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なんでも市川猿之助いちかはゑんのすけ平岡ひらをかごんらう洋行歸やうかうがへりに上海シヤンハイ麻雀牌マアジヤンパイひうろおぼえにその技法ぎはうつたへたのださうだが、あつまるものはほか松山まつやましやう三、佐佐木茂索ささきもさく廣津和郎ひろつかずを片岡鐵兵かたをかてつへい松井潤子まつゐじゆんこのち林茂光りんもくわう
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
香港ホンコン上海シヤンハイの支那人の中には、偶然この本を読んだ為めに、生涯托氏としを師と仰いだ、若干じやくかんの青年があつたかも知れぬ。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さう云へば今年の春、上海シヤンハイの競馬を見物かたがた、南部支那の風光を探りに来た、若い日本の旅行家が、金花の部屋に物好きな一夜を明かした事があつた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕は上海シヤンハイのフランス町に章太炎しやうたいえん先生を訪問した時、剥製のわにをぶら下げた書斎に先生と日支の関係を論じた。その時先生の云つた言葉は未だに僕の耳に鳴り渡つてゐる。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
上海シヤンハイの商務印書館から世界叢書と云ふものが出てゐる。その一つが「現代日本につぽん小説集」である。
日本小説の支那訳 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これは上海シヤンハイ滞在中、病間に訳したものである。シムボリズムからイマジズムに移つて行つた、英仏の詩の変遷は、この二人の女詩人の作にも、多少はうかがふ事が出来るかも知れない。
パステルの竜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
野雉車とはそも何ぞ。北京ペキン上海シヤンハイに出没する、無鑑札の朦朧車夫もうろうしやふなり。(五月三十日)