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万斛
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ばんこく
ふりがな文庫
“
万斛
(
ばんこく
)” の例文
旧字:
萬斛
そんな者よりは、俊基にすれば、自分の身代りに捕われて行ったと聞く船木頼春の方へ、この宵は、
万斛
(
ばんこく
)
の涙を覚えていたに違いない。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は、この深谷の幾千本針の針葉樹よりも、はた幾
万斛
(
ばんこく
)
の水よりも、一寸の魚が、谷の感情を支配していないとは言えなかった。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
しかるをなお強いて「戯れに」と題せざるべからざるもの、その裏面には実に
万斛
(
ばんこく
)
の
涕涙
(
ているい
)
を
湛
(
たた
)
うるを見るなり。
吁
(
ああ
)
この不遇の人、不遇の歌。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
矢のように
下
(
くだ
)
っていった舟はそこへ水煙立てて滑り落ちる、涼味スリル
万斛
(
ばんこく
)
のウォーターシュートの娯楽施設を、兼ねているというのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
西洋の詩は無論の事、支那の詩にも、よく
万斛
(
ばんこく
)
の
愁
(
うれい
)
などと云う字がある。詩人だから万斛で
素人
(
しろうと
)
なら一
合
(
ごう
)
で済むかも知れぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
悠々たる態度の裡に無限の愁いを含ませ、怒気満面の中に
万斛
(
ばんこく
)
の涙を
湛
(
たた
)
え、ニコニコイソイソとしているうちに腹一パイの不平をほのめかす。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
銀河きらめく暗夜の下を右に左に縫っていく情景は、見るからに涼味
万斛
(
ばんこく
)
、
広重
(
ひろしげ
)
北斎がこの時代に存生していたにしても
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
万斛
(
ばんこく
)
の玉を
転
(
ころ
)
ばすような音をさせて流れている谷川に沿うて登る小道を、温泉宿の方から数人の人が登って来るらしい。
杯
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
行手は高い絶壁に限られて、其下には
万斛
(
ばんこく
)
の藍を湛えた大きな釜がぐらぐらと冷く煮えくり返っている。其処へ左右から河が落ち合っているのだ。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「先生、雨です。」という間もなく、
硝子窓
(
がらすまど
)
に一千の
礫
(
つぶて
)
ばらばらと響き渡って、この建物の
揺
(
ゆら
)
ぐかと、
万斛
(
ばんこく
)
の雨は一注して、
轟
(
ごう
)
とばかりに降って来た。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
銀杏
(
ぎんなん
)
城外の中村では、英雄豊太閤の
臍
(
ほぞ
)
の
緒
(
お
)
のために
万斛
(
ばんこく
)
の熱涙を捧げた先生が、今その豊太閤の生みの親であり、日本の武将、政治家の中の最も天才であり
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
後景
(
ばつくぐらうんど
)
に布き、裏浜および虹の松原は左右の翼のごとく飜り、満島より続きたる城下の市街の白堊はその間を
点綴
(
てんてい
)
し、澄みわたる大空に頭をもたげ、
万斛
(
ばんこく
)
の風を呼吸し
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
この忠告を受けた時の二葉亭の胸中
万斛
(
ばんこく
)
の遺憾苦悶は想像するに余りがある。折角
爰
(
ここ
)
まで踏出しながら、何にもしないで手を
空
(
むなしゅ
)
うしてオメオメとどうして帰られよう。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
尊王
(
そんのう
)
の哲理は既に「
辱
(
かたじけ
)
なさに涙こぼるる」宗教心と一致せり。
而
(
しこう
)
して宗教心は人間最大の運動力たる利益心と伴随し来る。革命の精神は、さらに
万斛
(
ばんこく
)
の油を注がれたり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
プスリプスリと
燻
(
いぶ
)
るような
気燄
(
きえん
)
を吐いて、散々人を厭がらせた揚句に、僕は君に
万斛
(
ばんこく
)
の同情を寄せている、今日は一つ忠告を試みようと思う、というから、何を言うかと思うと
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼は
美姫
(
びき
)
なり、この世の美くしさにあらず、天国の美くしさなり、死にも笑ひ、生にも笑ふ事を得る美姫なれども、相争ひ相傷くる者に遭ひては、
万斛
(
ばんこく
)
の紅涙を惜しまざる者なり。
最後の勝利者は誰ぞ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
生徒はひとりとして顔をあげ得なかった、水々とした黒い頭、生気のみなぎる
首筋
(
くびすじ
)
が、糸を引いたようにまっすぐにならぶ、そのわかやかな胸には
万斛
(
ばんこく
)
の血が高波をおどらしている。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
万斛
(
ばんこく
)
の恨みが、いま分秒ごとに消えてゆく
雪橋
(
はし
)
のうえに注がれている。援蒋ルートをふさぐ……
九十九江源地
(
ナブナテイヨ・ラハード
)
へゆく千載の好機が、いま折竹の企図とともに永遠に消えようとしている。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
貪婪
(
たんらん
)
飽くなき岩でこの、ひそかにその爪牙を磨き、梅坊主を陥れ、ついにこれを追って自分がそのあとに直るに到ったのを憎み、そうして、わが梅坊主のため、
万斛
(
ばんこく
)
の泪を
濺
(
そそ
)
ぐのにあった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
黄金
(
こがね
)
を
織作
(
おりな
)
せる
羅
(
うすもの
)
にも似たる
麗
(
うるはし
)
き日影を
蒙
(
かうむ
)
りて、
万斛
(
ばんこく
)
の珠を鳴す谷間の清韻を楽みつつ、
欄頭
(
らんとう
)
の山を枕に
恍惚
(
こうこつ
)
として消ゆらんやうに覚えたりし貫一は、
急遽
(
あわただし
)
き
跫音
(
あしおと
)
の廊下を
動
(
うごか
)
し
来
(
きた
)
るに
駭
(
おどろか
)
されて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
狂気せるもののごとく
万斛
(
ばんこく
)
の涙を流しつつ街から街を一人歩いた。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
……
支那人
(
シナじん
)
たる貴下のために、
万斛
(
ばんこく
)
の同情無き能わず候。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先ず可憐に堪えぬ
万斛
(
ばんこく
)
の涙があろうと思う。
山本有三氏の境地
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
万斛
(
ばんこく
)
の不義理を十分填め合せるでしょう。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
萩叢
(
はぎむら
)
の露
万斛
(
ばんこく
)
と
讃
(
たた
)
へけり
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
重蔵はハッと
万斛
(
ばんこく
)
の水を浴びて小手を緩めたが、小太刀の勢いはそのまま玄蕃の肩先に届いた。しかし、玄蕃はほッと
甦
(
よみがえ
)
った顔で
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まことに涼味
万斛
(
ばんこく
)
、墨田の夏の夕だち、八町走りの走り雨というと、江戸八景に数えられた名物の一つでした。とにかく、その豪快さというものはあまり類がない。
右門捕物帖:32 朱彫りの花嫁
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
渠は胸中の劇熱を消さんがために、この
万斛
(
ばんこく
)
の水をば飲み尽くさんと覚悟せるなり。渠はすでに前後を忘じて、一心死を急ぎつつ、
蹌踉
(
よろよろ
)
と
汀
(
みぎわ
)
に寄れば、
足下
(
あしもと
)
に物ありて
晃
(
きらめ
)
きぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
在りし日の中尉を
偲
(
しの
)
んで涙
滂沱
(
ぼうだ
)
たる有様は、ただ我ら
万斛
(
ばんこく
)
の悲しみを誘うのみであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「すべての反吐は動くから吐くのだよ。俗界
万斛
(
ばんこく
)
の反吐皆
動
(
どう
)
の一字より
来
(
きた
)
る」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
伯父は
牢獄
(
ろうごく
)
にあり、わが身はどろにあえぐふなのごときいまの場合に、ただひとり
万斛
(
ばんこく
)
の同情と親愛をよせてくれる人があると思うと、千三の胸に
感激
(
かんげき
)
の血が高波のごとくおどらざるを得ない。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
(瓶よ聞け、われら武門、いやしくも水に窮して、枯魚の如く死ぬべきや——。
渇
(
かわ
)
かば
啜
(
すす
)
るべし、敵兵
万斛
(
ばんこく
)
の血しお!)
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遥々
(
はるばる
)
万斛
(
ばんこく
)
の好意をもって来朝された印度の太子さえも日本一流の大会社にかかっては——一流も一流日本においては三池か三矢かと並び称されるくらいのこの一流大会社の社員たちにかかっては
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
呉侯は、呂蒙の死に、
万斛
(
ばんこく
)
の涙をそそいで、爵を贈り、
棺槨
(
かんかく
)
をそなえ、その大葬を手厚くとり行った後
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
殷賑
(
いんしん
)
に立って、
旺
(
さかん
)
なる夕べの楽音を耳にし、
万斛
(
ばんこく
)
の油が一夜にともされるという騒曲の灯の、宵早き有様を眺むれば、むしろ、世を憂え嘆く者のことばが不思議なくらいである。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曹操の下知に、帝も皇后も、のけ反るばかり
愕
(
おどろ
)
かれて、臣下たる彼へむかって、
万斛
(
ばんこく
)
の涙をながして
憐愍
(
れんびん
)
を乞うたが、曹操は、頑としてきかない。彼の満面、彼の全身、さながら憤情の炎であった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万
常用漢字
小2
部首:⼀
3画
斛
漢検1級
部首:⽃
11画
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万斛簁