鑑定かんてい)” の例文
それはとにかく、私の経験したような煩悶があなたがたの場合にもしばしば起るに違いないと私は鑑定かんていしているのですが、どうでしょうか。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
娘を見失つたのは、何と言つても大失策だいしつさくに相違ありませんが、その代り、あの浪人者を手習師匠と鑑定かんていした、親分平次の失策も掴んだのです。
「おれの鑑定かんていでは、お冬の袂から地面に一旦落ちたのを、強い風に吹きあげられて……。まあ、そう思うより仕方がねえ」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれど、まごは、先祖せんぞから大事だいじにしていたさかずきであるということだけはっていましたので、これをだれかに、鑑定かんていしてもらいたいとおもいました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このズボンについている泥だとか、ハンカチーフについている血や油などについて、彼はきっと、あなたをびっくりさせるに充分じゅうぶん鑑定かんていをなすことでしょう
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
事態いよ/\迫るれはいよ/\るに違いないと鑑定かんていして、内の方の政府を見れば何時迄いつまでも説が決しない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たとへばつちはづる〻とも青年せいねん男女なんによにして小説せうせつまぬ者なしといふ鑑定かんていおそらくはづれツこななるべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
太刀、脇差、うつぼ等を手に取って見るのに、相当年代の立ったものらしく、殊に靱はぼろぼろにいたんでいるけれども、私たちに鑑定かんていの出来る性質のものではない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
僕にも時々夏目なつめ先生の書を鑑定かんていしてくれろと言ふ人がある。が、僕の眼光ではどうも判然とは鑑定出来ない、唯まつ赤なせものだけはおのづから正体しやうたいを現はしてくれる。
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まよひし邪正じやしやうがたし、鑑定かんてい一重ひとへ御眼鏡おめがねまかさんのみと、はじたるいろもなくべらるゝに、母君はゝぎみ一トたびあきれもしつおどろきもせしものゝ、くまで熱心ねんしんきはまりには
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
侍「とんだ良さそうな物、拙者せっしゃ鑑定かんていするところでは備前物びぜんもののように思われるがうじゃな」
君は余の不相変あいかわらずぼんやりして麦扱むぎこきをして居るのを見て、正気だと鑑定かんていをつけたと見え、来て見て安心したと云った。そうして此れから北海道の増毛ましげ病院長となって赴任する所だと云った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いや、よくはわからぬが、あのいずみのほとりに、なにやらあやしいやつがいる。いま、拙者せっしゃ遠矢とおやをかけて追いたてるから、あとは斬るとも生けどるとも、おのおの鑑定かんていしだいにしてくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彌太夫は見て扨は奉行衆の鑑定かんてい通り盜賊の仕業しわざにて似役人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
熊五郎の活動を何時も六の日と鑑定かんていした錢形平次の智惠の裏を行つて、その前の晩——十月五日の夜中を選んだするどさは、さすがの平次も舌を卷きました。
このひとけば、役所やくしょとどけのことも、また書画しょが鑑定かんていも、ちょっとした法律上ほうりつじょうのこともわかりましたので、むらうち物識ものしりということになっていました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、さっそく、御殿ごてんされました。そこで、きさき首飾くびかざりについているたま鑑定かんていさせられました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
千兩箱の封印も泥で滅茶々々、春木屋の主人に鑑定かんていが付かない位ですから、平次に解るわけはありません。
物識ものしりは、いえに、つくねんとしてすわっていました。おとこが、仏像ぶつぞうをかかえてはいってきたので、物識ものしりは、きっとなにかの鑑定かんていだなとおもって、おとこ歓迎かんげいいたしました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お靜はそれに構はず、腹の減つてゐるらしい八五郎の顏を、少し遠くから鑑定かんていして居ります。
「若くて眼鼻がそろつて居ると、皆んな良い女に見えるから、お前の鑑定かんていは當てにならない」
さあ、地金じがねのことは、ぞんじませんが、鑑定かんていしてもらうと、やすくて千りょう値打ねうちがあるとのことです。先刻せんこくも、むらのだんなさまがえて、千りょうゆずってほしいといわれました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
祿兵衞はさう言ひながら、通りすがりの下女を呼び入れて、剃刀を鑑定かんていさせました。
これですか、こいつは、わたしに、鑑定かんていがつきません……。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
投げた——とね、本阿彌ほんあみが夫婦づれで來ても、この鑑定かんていに間違ひはあるめえ
その時今の内儀のつれて來たお玉は七つ、誰の子ともわからないが、顏容ちが玄龍先生によく似てゐるから、玄龍先生と内儀の時代は、七八年前からの掛り合ひだらうと——これは臍胡麻へそごま鑑定かんてい
稼業柄、人間の鑑定かんていだけは堂に入つたものです。
八五郎には、八五郎だけの鑑定かんていはあつたのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「そいつも影法師の鑑定かんていでせう、親分」
餘計な鑑定かんていまでする八五郎です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)