軒家けんや)” の例文
なにしろ西にしひがしからない原中はらなかの一軒家けんや一人ひとりぼっちとりのこされたのですから、心細こころぼそさも心細こころぼそいし、だんだん心配しんぱいになってきました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「しッ! 何だい。野中のなかの一軒家けんやじゃあるまいし、神尾神尾って大きな声で、黒門町さんなんか、はらはらしてるじゃないか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やまたかさもたにふかさもそこれない一軒家けんや婦人をんな言葉ことばとはおもふたが、たもつにむづかしいかいでもなし、わしたゞうなづくばかり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年しょうねんが、がけのうえにあるという、一軒家けんやをたずねていったのであります。それが、自分じぶん職業しょくぎょうであるうえは、たとえ一けんといってもててしまうわけにはいきませんでした。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「と、しますと、六軒家けんやの森ですね」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おやおや、それはおこまりだろう。だがごらんのとおり原中はらなかの一軒家けんやで、せっかくおもうしても、てねる布団ふとんまいもありませんよ。」
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
此日このひ本線ほんせんがつして仙台せんだいをすぐるころから、まちはもとより、すゑの一軒家けんやふもと孤屋ひとつやのき背戸せどに、かき今年ことしたけ真青まつさをなのに、五しき短冊たんざく、七いろいとむすんでけたのを沁々しみ/″\ゆかしく
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ええ、ずっとおくの、がけのうえに一軒家けんやがあってよ。」といいました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うさぎやくまわかれると、金太郎きんたろう一人ひとりで、また身軽みがるにひょいひょいとたにわたったり、がけつたわったりして、ふかふか山奥やまおくの一軒家けんやはいっていきました。そこいらにはしろくもがわきしていました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けん山家やまがまへたのには、まで難儀なんぎかんじなかつた、なつのことで戸障子としやうじしまりもせず、ことに一軒家けんや、あけひらいたなりもんといふでもない、突然いきなり破椽やぶれえんになつてをとこ一人ひとりわしはもうなん見境みさかひもなく
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)