らん)” の例文
旧字:
一寸ちよつとらんなさい」と美禰子がちいさな声で云ふ。三四郎は及び腰になつて、画帖の上へかほを出した。美禰子のあたまで香水のにほひがする。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「お欠餅かきもちを焼いて、熱い香煎こうせんのお湯へ入れてあげるから、それを食べてごらんよ。きっと、そこへしこってる気持きもちがほごれるよ。」
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
命はおんおば上のおおせを思い出して、急いで、例の袋のひもをといてごらんになりますと、中には火打ひうちがはいっておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「ではちょうどい機会だから、秋山しゅうざんを尋ねてごらんなさい。あれがもう一度世に出れば、画苑がえん慶事けいじですよ」と言うのです。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かまいませんよ。それよりまああのなしの木どもをごらんなさい。えだられたばかりなので身体からだ一向いっこうり合いません。まるでさなぎおどりです。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その黒いむく毛のわかいハイカラさんは、ゼルビノこうですが、これは優美ゆうびという意味で、よく様子をごらんなさい、いかにもその名前のとおりだ。
手にあたったものをにぎってそのままわすれてしまったんだろう。ポケットのなかきまわしてごらん
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
「私は千草姫ちぐさひめと申すこの森の女王でございます。今おもしろいことをごらんに入れましょう」
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
百樹もゝきいはく越遊して塩沢に在し時、牧之老人にともなはれて雲洞庵にいたり、(塩沢より一里ばかり)庵主あんしゆにも対話たいわなし、かの火車おとしの袈裟けさといふ物その外の宝物古文書こもんじよるゐをも一らんせり。
それは一週間ばかり後に天子様が学校へご臨幸りんこう下さる、その折に主人が御前ごぜんで製作をしてごらんに入れるよう、そしてその製品をただちに、学校から献納けんのうし、お持帰りいただくということだったのが
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みなさま、まあごらんあそばせ、あれを。あれでも着物きものまをすのでせうか。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「私ども始めはおめしたのです。しかし閣下は他出そとでされる約束があって、その日の三時にはごらんになれないのです。それでいてというお話ですし、一方例の用意もありまして大丈夫だと思ったのです」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
らんの通り杖も棄てました。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあとにかく、きょうのせっかくの謝肉祭しゃにくさいを、そんなにつまらなくないようにしたつもりだよ。このはこの中をごらん
奴里能美ぬりのみのうちにめずらしい虫をっておりますので、ただそれをごらんになるためにおでかけになりましたのでございます。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
潤州じゅんしゅう張氏ちょうしの家にあるのです。金山寺きんざんじへでも行った時に、門をたたいてごらんなさい。わたしが紹介状を書いて上げます」
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
百樹もゝきいはく越遊して塩沢に在し時、牧之老人にともなはれて雲洞庵にいたり、(塩沢より一里ばかり)庵主あんしゆにも対話たいわなし、かの火車おとしの袈裟けさといふ物その外の宝物古文書こもんじよるゐをも一らんせり。
さあさあ、不用な物があったら持っておいで、この場で煙にしてごらんに入れる
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
頂戴ちょうだい! きのう僕そういったじゃないの、ほかのシャツをしてくんなきゃ駄目だめだって。それだのにママがしてくれないもんだから、ね、ほうら、ごらんよ、こんなになっちまったじゃないの!
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
「それ御らんなさい。あなたは一家族ぢう悉く馬鹿にして入らつしやる」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そーれごらん、やっぱりそうしようと思っておいでのだろう。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「はははは、ごらんなさい。もう四ひきつかまりましたよ」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのお途中で、山城やましろ宇治野うじのにお立ちになって、葛野かづのの方をごらんになりますと、そちらには家々も多く見え、よい土地もどっさりあるのがお目にとまりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
かれらが鼻を高く空に向けたり、顔を下げて地べたをかいだり、やぶや石の上をかぎ回ったりするところをごらんなさい。ふとかれらはとある草むらの前で立ち止まる。
「——黄大癡こうたいちといえば、大癡の秋山図しゅうざんずをごらんになったことがありますか?」
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
てゝ御らんなさい。どの位ふるいんだか」と一杯いだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「手をお貸し。わたしたちはすくわれた」と親方が言った。「ごらん、今度は森が見えるだろう」
「おまえこわいものだから目が落ち着かないのだ。もう一度よくごらん
「ほら、ごらんなさい、明かりが」とわたしは指さしながら言った。