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菫色
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すみれいろ
ふりがな文庫
“
菫色
(
すみれいろ
)” の例文
左に二人並んでいるのは、まだどこかの学校にでも通っていそうな
廂髪
(
ひさしがみ
)
の令嬢で、一人は
縹色
(
はなだいろ
)
の
袴
(
はかま
)
、一人は
菫色
(
すみれいろ
)
の袴を
穿
(
は
)
いている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
また他の時はすこし
疲
(
つか
)
れを帯びたように
沈
(
しず
)
んで、
不透明
(
ふとうめい
)
で、その
皮膚
(
ひふ
)
の底の方にはなんだか
菫色
(
すみれいろ
)
のようなものが漂っているように見えた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
道には川砂を敷きましたし、
菫色
(
すみれいろ
)
の小さな貝殻も交じっています。私の
苺
(
いちご
)
も食べていただきましょう。私がそれに水をやっていますのよ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その前には連判状、その前には硯箱、煙っているのは香炉の煙り、照っているのは
菫色
(
すみれいろ
)
の
燈火
(
ともしび
)
、いずれも愛情を誘う道具!
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
海には白帆が、その上には
菫色
(
すみれいろ
)
の雲が、じつと動かずにゐた。そこら一めんに
陽炎
(
かげろふ
)
がもえ、路のふちにはたんぽぽが、
黄金
(
こがね
)
のお
銭
(
あし
)
のやうに落ちてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
菫色
(
すみれいろ
)
の横封筒……いや、どうも、その癖、言う事は古い。(いい加減に
常盤御前
(
ときわごぜん
)
が身のためだ。)とこうです。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ああ今日も寝坊して気の毒だなと思って「テーブル」の上を見ると、
薄紫色
(
うすむらさきいろ
)
の状袋の四隅を一分ばかり濃い
菫色
(
すみれいろ
)
に染めた封書がある。我輩に来た返事に違いない。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
官能は、鮮緑色と
菫色
(
すみれいろ
)
との火のあまたのぎらぎらしゆらゆらしている焔と共に、回旋した奇妙な香炉からたちのぼる、互にまじりあって争っている薫香に、圧せられた。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それからずっと西の方は、斗満上流の奥深く
針葉樹
(
しんようじゅ
)
を語る
印度藍色
(
インジゴーいろ
)
の山又山重なり重なって、秋の朝日に
菫色
(
すみれいろ
)
の
微笑
(
えみ
)
を浮べて居る。余等はやゝ久しく
恍惚
(
こうこつ
)
として眺め入った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この日は風のない暖かなひよりで、樺林の間からは、
菫色
(
すみれいろ
)
の光を帯びた野州の山々の姿が何か来るのを待っているように、冷え冷えする高原の大気を
透
(
とお
)
してなごりなく望まれた。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その
中
(
うち
)
に遂に、
菫色
(
すみれいろ
)
の
独逸
(
ドイツ
)
海の海面が、ノーフォークの海岸の緑の縁を越して現われた。
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
同様にして三番目は緑、四番目は
橙色
(
だいだいいろ
)
、五番目は白、六番目は
菫色
(
すみれいろ
)
と変化しているのだ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
道の左側には、巨大な
羊歯
(
しだ
)
族の峡谷を
距
(
へだ
)
てて、ぎらぎらした豊かな緑の
氾濫
(
はんらん
)
の上に、タファ山の頂であろうか、
突兀
(
とっこつ
)
たる
菫色
(
すみれいろ
)
の
稜線
(
りょうせん
)
が眩しい
靄
(
もや
)
の中から覗いている。静かだった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
梅雨
(
つゆ
)
は二三日前からあがって、暑い
日影
(
ひかげ
)
はキラキラと校庭に照りつけた。扇の音がパタパタとそこにも、ここにも聞こえる。女教員の白地に
菫色
(
すみれいろ
)
の袴が眼にたって、額には汗が見えた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
次
(
つ
)
ぎに
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
つた
朗
(
ほがら
)
かな
聲
(
こゑ
)
で
鳴
(
な
)
くぶっぽうそう(
佛法僧
(
ぶつぽうそう
)
)はきつゝきの
類
(
るい
)
で、
形
(
かたち
)
は
烏
(
からす
)
に
似
(
に
)
てゐますが、
大
(
おほ
)
きさはその
半分
(
はんぶん
)
もありません。
羽毛
(
うもう
)
は
藍緑色
(
あゐみどりいろ
)
で、
翼
(
つばさ
)
と
尾
(
を
)
とが
菫色
(
すみれいろ
)
を
帶
(
お
)
びてゐます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
がんじ搦みにされてしまった! そうして自然とサルグツワが
篏
(
は
)
まり、あんまり意外なので気絶したが眼覚めてみれば気味悪い部屋! ……
菫色
(
すみれいろ
)
の
燈火
(
ひかり
)
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
習慣が、時計の音を黙らせたり、
菫色
(
すみれいろ
)
のカアテンの敵意を弱めたり、家具を動かしたりする余裕がないのだ。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それへ東窓をもれる朝日の光が、うしろからさすので、髪と
日光
(
ひ
)
の触れ合う境のところが
菫色
(
すみれいろ
)
に燃えて、生きた
暈
(
つきかさ
)
をしょってる。それでいて、顔も額もはなはだ暗い。暗くて青白い。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
園養
(
えんよう
)
のものには、白、桃色、また桃色に紫の
縞
(
しま
)
のもあるが、野生の
其
(
そ
)
れは
濃碧色
(
のうへきしょく
)
に限られて居る様だ。濃碧が
褪
(
うつろ
)
えば、
菫色
(
すみれいろ
)
になり、紫になる。千鳥草と云えば、直ぐチタの高原が眼に浮ぶ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
手に持っている、中身は書物らしい紫の包みの外には、
喉
(
のど
)
の下と手首とを、リボンで
括
(
くく
)
ったシャツや、
袴
(
はかま
)
の
菫色
(
すみれいろ
)
が目に留まったに過ぎない。実際女学生は余り人と変った風はしていなかった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その女というのは、一月ほど前から、町の
出
(
で
)
はずれの
四辻
(
よつつじ
)
でよく出会った女で、やはり小学校に勤める女教員らしかった。
廂髪
(
ひさしがみ
)
に
菫色
(
すみれいろ
)
の袴をはいて
海老茶
(
えびちゃ
)
のメリンスの風呂敷包みをかかえていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
鶸
(
ひわ
)
の
嘴
(
くち
)
がちょっと触っても
微
(
かすか
)
な
菫色
(
すみれいろ
)
の
痣
(
あざ
)
になりそうな白玉椿の清らかに優しい片頬を、
水紅色
(
ときいろ
)
の絹
半帕
(
ハンケチ
)
でおさえたが、
且
(
かつ
)
は
桔梗
(
ききょう
)
紫に
雁金
(
かりがね
)
を銀で
刺繍
(
ぬいとり
)
した半襟で、
妙齢
(
としごろ
)
の髪の
艶
(
つや
)
に月の影の冴えを見せ
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その間も香炉からは煙りが立ち、微妙に部屋を
馨
(
かお
)
らせている。その間も
龕
(
がん
)
からは
菫色
(
すみれいろ
)
の
燈火
(
ひかり
)
が、ほんのりと四方を照らしている。そうして聞こゆる催情的音楽!
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雲の割れ目から
菫色
(
すみれいろ
)
の空がちらりと見えるようなこともあったが、それはほんの一瞬間きりで、霧はまた次第に
濃
(
こ
)
くなって、それが
何時
(
いつ
)
の間にか
小雨
(
こさめ
)
に変ってしまっていた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その仏像の左右の眼には金剛石が嵌められてあって蝋燭の光に反射して
菫色
(
すみれいろ
)
の光を
澪
(
こぼ
)
している。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“菫色”の解説
菫色(すみれいろ)は、紫色の一種で、スミレの花弁の色。スミレならびに菫色に相当する英語名"violet"(バイオレット)で表記されることもある。
また、スミレの一種パンジー(pansy)が時に色名としてつかわれることもある。これは、パンジーのうち紫の花弁の色をさすが、一般的な菫色よりもさらに暗くさえた色である。
(出典:Wikipedia)
菫
漢検1級
部首:⾋
11画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“菫”で始まる語句
菫
菫花
菫草
菫菜
菫野
菫雛
菫雨
菫々菜
菫外線
菫御前