はじ)” の例文
そこで君がしっかり摂生をして、直ってしまったところで、何も向うのはじにはならない。ただ君に警戒を加えたとえば済むのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
この狂気きちがいじみた事の有ッた当坐は、昇が来ると、お勢はおくするでもなくはじらうでもなく只何となく落着が悪いようで有ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ものして婦女童幼ふじょどうようこびんとする世の浅劣せんれつなる操觚者流そうこしゃりゅうは此の灯籠の文をよみて圓朝おじはじざらめやはいさゝか感ぜし所をのべて序をわるゝまゝ記して与えつ
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
「それならば、あのとき黙ってお斬りなすったらようがしたろう。大村が死なんでも、誰が斬ったか分らなんだら、先生のはじにはなりませんからな」
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
古人既に閑花只合閑中看。一折帰来便不鮮。とか申候間とやかく評議致すはかへつて野暮の骨頂なるべくまた人に聞かれては当方のはじにも相なりもうすべき次第。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「だからさ、それが滑稽じゃないの。あの猿が又、相手が西洋人だもんだから、断り切れないで踊ったところが! ほんとうにいい馬鹿だわ、はじさらしな!」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
のこれるはじうへならず、勿躰もつたいなき覺悟かくごこゝろうち侘言わびごとして、どうでもなれぬ生中なまなかきてぎんとすれば、人並ひとなみのういことつらいこと、さりとは此身このみへがたし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その持って行く物にもどれだけというきまりはないけれど、その家に相当して世間の人に誇られる位の物を持たして遣らなければ、娘の親もはじであるということは承知して居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
粥河圖書が改心ののちは如何にも貞節なるお蘭の心を察し、故々もと/\の通り添わして遣りたいと思って居る処、大胆にもお藤を嫁に呉れという故に銚子屋に於ての如くはじしめました
諄々くどくど黒暗くらやみはじもうしてあなたの様ななさけ知りの御方に浅墓あさはか心入こころいれ愛想あいそつかさるゝもおそろし、さりとて夢さら御厚意ないがしろにするにはあらず、やさしき御言葉は骨にきざんで七生忘れませぬ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『お身のおはじ、お家のお耻とお考えになったんでございましょう。ジッとお胸にお納めになってどなたにも仰しゃらず、一生苦しんでつまり悶え死遊ばしましたようなものでございます』
蛇性の執念 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
余りの無念口惜くちおしさ。それに因果な身をもはじ入りて、多摩川に身を投げて死のうとしたことが八たびに及んだ。それを発狂と見られて、土蔵の中を座敷牢にして、三年ばかり入れられていた。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ばか、ばか、ばか、はじを知れ。(一六)
これ浅学の余七年間大学部教授ならびに主筆の重職にありながら別にはじ一つかかずお茶をにごせし所以ゆえんぞかし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それで娘が奉公中はもちろんのこと、立派な家の嫁になった後までも、一つには娘のはじ、一つには自分たちの耻と思って、あまり往きをしなかったのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
れはおまへやだといふのもれてるけれども何卒どうぞれのかたつて、横町組よこてうぐみはじすゝぐのだから、ね、おい、本家本元ほんけほんもと唱歌しようかだなんて威張ゐばりおる正太郎しようたらうとつちめてれないか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其の女房お蘭を助けて上総の天神山の松屋にかくまって置く事から、外見みえの場所でこれ/\はじしめた事から、掛合いに参って果し状を附けて、今晩粥河と出合であいをして、それから圖書が降参して
なぜなら私は、男子としての節操、潔癖、純情を捨て、過去の誇りをなげうってしまって、娼婦の前に身を屈しながら、それをはじとも思わないようになったのですから。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それに比較すれば重吉はさほどその身をはじるにも当るまい。女の厄介になって、のらくらしている位の事は役人が賄賂わいろを取って贅沢ぜいたくをするのに比べれば何でもない話である。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「行かんらしいわ。———お婆ちゃんが、自分等見たいな見自目みじめな暮ししてたもんが出かけて行ったら娘のはじや、日本にいたら何も知られんで済む、云うてはるねんて」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼女自身も気のつかぬうちいつからという事もなく私娼ししょうの生活にらされてずべき事をもはじとは思わぬようになったものであろう。折々は反省して他の職業に転じようと思う事もあるにちがいない。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自分はそれでもよいとして、幸子たちがどんなにあわてたりはじいたりしなければならないか。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まだ四、五年たたなくっちゃ芸者に売る事もできないのさ。以前世話をした奴らに頼んだら、どうにかしてくれない事もなかろうが、それほどはじさらして歩く位なら一思ひとおもいに死んだ方がまだしもだよ。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
茶屋へ行くよりも時間や費用が経済であること、女と自分自身とを動物として扱うときに、外国人同士の方が互にはじを忘れやすく、それだけあとで気が病めないこと———などを
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
早速思い付いてあの電話を懸けた次第であった、しかるに結果は御承知の通りで、橋寺氏は重ね重ねはじかされた、一昨日の時は、でもまあ極まりが悪いのであろうと思っても見たが
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一廉ひとかどの紳士に何の必要もなくはじかしたように思えて仕方がなかった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何だお前は! おれはじかせたな! ばいた! 淫売いんばい! じごく!」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)