給仕きゅうじ)” の例文
敬二は寝衣ねまきをかなぐりすてると、金釦きんボタンのついた半ズボンの服——それはこの東京ビルの給仕きゅうじとしての制服だった——を素早すばやく着こんだ。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
優が登庁すると、その使役する給仕きゅうじは故旧中田なかだ某の子敬三郎けいざぶろうである。優が推薦した所の県吏には、十五等出仕松本甲子蔵きねぞうがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
案内者あんないしゃれいのりっぱな帳場の前についであった一ぱいの酒をがぶ飲みにして、それから給仕きゅうじの男に自分の行こうとする場所の方角を聞いた。
「後醍醐のお身まわりを、もっと、ゆるやかにせよとか、また給仕きゅうじ公卿人くげびとをふやせの、朝夕の供御くごをよくせよなどとは、一体、誰が命じたか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、それにもかかわらず、世間は盛んに嘖々さくさくして歓迎し、『東朝』編輯局は主筆から給仕きゅうじに到るまでがこぞって感歎した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
高木春葉君は、美術学校の給仕きゅうじであったが、日曜ごとに稽古に参り、相当物になった処で、残念ながら病死しました。
「あたくしねえ、給仕きゅうじは、年の若い、ちいさい綺麗な男の子がすきです。汚ない、不骨ぶこつな大きな手が、お皿と一緒につきだされると、まずくなる。」
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ボーイはぎょっとして飛んでもない事をしたというふうに、すぐ慎み深い給仕きゅうじらしく、そこそこに部屋へやを出て行った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
めしになった時、奥さんはそばすわっている下女げじょを次へ立たせて、自分で給仕きゅうじの役をつとめた。これが表立たない客に対する先生の家の仕来しきたりらしかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼のくぼい、鮫の歯の様な短い胡麻塩ごましおひげの七右衛門爺さんが、年増としまの婦人と共に甲斐〻〻しく立って給仕きゅうじをする。一椀をやっと食い終えて、すべり出る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
薪炭屋しんたんや勇蔵ゆうぞうは、いよいよ昼間ひるま役所やくしょ給仕きゅうじつとめて、よるは、勉強べんきょうをするため、学校がっこうへいくことになりました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
正木のお祖母さんに促されて、お芳はすぐおしゃくやお給仕きゅうじをはじめ、茶の間や台所にも何度かやって来た。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
今はクウという語が失敬になって、そのかわりにひろく用いられているが、もとは目上めうえの人に向かっていったものですなわちお給仕きゅうじをする者のある食事がメシであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いながら、すぐにおぜんまえすわりました。そして、たぬきのおばあさんのお給仕きゅうじ
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
隣室りんしつの法学生ともいく度か話をした。とにかく人の話をおもしろく聞かれるようになった。給仕きゅうじの下女に愛想あいその一言もいうようになった。同級生に知り合いができて訪ねてくる。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
赤いえりを見せた給仕きゅうじの女中を前に置いて、寿平次はそんなことを言い出した。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さて、ふたりは、かがみに出て行きました。そこで夕飯ゆうはん食卓しょくたくについて、王女づきの女官じょかんたちがお給仕きゅうじに立ちました。そのあいだ、バイオリンだの、木笛きぶえだのが、百年まえの古いきょくをかなでました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
おまけに給仕きゅうじがテーブルのはじの方で新らしいお酒のびんいたときなどは山男は手を長くながくのばしてよこからってしまってラッパ呑みをはじめましたのでぶるぶるふるえ出した人もありました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
食堂車給仕きゅうじ田中嬢に贈る。先年大負傷をせし由。
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ただ給仕きゅうじをする女手が足りないのに困りました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
丁坊はもうホテルの給仕きゅうじをやめてしまって、立派な飛行機博士になるために、いまでは上の学校へ通って勉強をしている。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十九でいながら十七にも十六にも見れば見られるような華奢きゃしゃ可憐かれんな姿をした葉子が、慎みの中にも才走った面影おもかげを見せて、二人ふたりの妹と共に給仕きゅうじに立った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
威海衛いかいえいで毒を仰いで死んだ清国の提督、丁汝昌ていじょしょうの恋人とうたわれたおしかさん、座っている老女は、紅葉館創立以来のお給仕きゅうじの総指揮役で、後見役のおやすさん。
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
わたしたちは相変あいかわらずぼろぼろの旅仕度であったが、ホテルでは黒の礼服に白のネクタイをした給仕きゅうじ案内あんないをされた。かれはわたしたちを居間いまれて行った。
「もうこっちへ引き取って、給仕きゅうじでも何でもさせるからそう思うがいい」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昼間ひるまは、会社かいしゃ給仕きゅうじをして、よる学校がっこうへいっているといっていた。」
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
給仕きゅうじに来た女中に五百が問うと、女中はいった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、給仕きゅうじしながら言った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
食堂の衝立ついたての蔭から、瞳の青い、からだの大きい給仕きゅうじがとびだしてきたが、博士を見ると、直立不動の姿勢をとって
また幾千金にかえられた堆朱ついしゅのくり盆に、接待煎餅せんべいを盛って給仕きゅうじが運んでおったのもその頃であった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あちらこちらとはたらき回って、ご亭主ていしゅのお給仕きゅうじばかりしていた。
カフェーの給仕きゅうじ気分と、いにしえの太夫の気分とを集めたものへ、芸妓の塩梅あんばいと、奥女中のとりなしとを加減して、そのころの紳士の慰楽の園としようとした目論見もくろみで、お振袖ふりそでを着せて舞わせもし
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
給仕きゅうじはもったいぶって部屋へやを出て行った。