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砂塵
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さじん
ふりがな文庫
“
砂塵
(
さじん
)” の例文
満地
(
まんち
)
満天
(
まんてん
)
に木々の
落葉
(
おちば
)
をふき巻くりあれよと見るまに、咲耶子は
砂塵
(
さじん
)
をかおに吹きつけられて、あ——と
眼
(
まなこ
)
をつぶされてしまう。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
濛々
(
もうもう
)
と煙る
砂塵
(
さじん
)
のむこうに青い空間が見え、つづいてその空間の数が増えた。壁の脱落した
処
(
ところ
)
や、思いがけない方向から明りが
射
(
さ
)
して来る。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
つまり、芦の茂みに砂や土が溜まり、流れて来た小枝や枯葉が溜まり、そこへまた
砂塵
(
さじん
)
や土が混って、洲の一段が出来あがる。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
砂利を積んだ車がまたぐらぐらと橋を
揺
(
ゆす
)
ったので、
砂塵
(
さじん
)
濛々
(
もうもう
)
、水も空も、日が暮れて月が冴えねば、お夏が
彳
(
たたず
)
んだ時のように澄みはしない。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まるで雲を
掴
(
つか
)
むような当てのないことであるが、私はそれから小村方を出て、寒い空に風の吹く
砂塵
(
さじん
)
の道を一心になって
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
河内介は、敵味方が火花を散らして
闘
(
たゝか
)
いつゝある怒号と
砂塵
(
さじん
)
の中にあって、ゆくりなくも久しく忘れていた少年時代の悪戯の記憶を呼び戻した。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
部屋のなかは蒸し暑いし、往来ではつむじ風がきりきりと
砂塵
(
さじん
)
を
捲
(
ま
)
いて、帽子が吹き飛ばされる始末だった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
椰子の樹下のタクシーに英国人十数人が一人の女を胴あげにして
一塊
(
ひとかたまり
)
になると喚声の間に泣き叫ぶ女の哀調をのこして
砂塵
(
さじん
)
をたてて見えなくなってしまった。
孟買挿話
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
濛々と
立騰
(
たちのぼ
)
る
砂塵
(
さじん
)
をあびせて、ヨセフは眼に涙を浮べながら、腕の子供をいつか妻に
抱
(
だ
)
きとられてしまったのも忘れて、いつまでも
跪
(
ひざまず
)
いたまま、動かなかった。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ハース氏の船室は後甲板の上にあるが、そこでは黒の帽子を一日おくと白く
塵
(
ちり
)
が積もると言っていた。どうもアフリカの内地から来る非常に細かい
砂塵
(
さじん
)
らしい。
旅日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
乗合
(
バス
)
が速さを増すと、同時にスパセニアの馬も、
砂塵
(
さじん
)
を
蹴
(
け
)
たてて追って来ます。私の車と
摺
(
す
)
れ
摺
(
す
)
れに
駈
(
か
)
けながら、片手を伸ばして車の窓
硝子
(
ガラス
)
を
叩
(
たた
)
いているのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
空っ風と一緒に吹き上げてくる
砂塵
(
さじん
)
に顔をそむけそむけしながら、彼はさっきからいくたびそう心の
裡
(
うち
)
で
呟
(
つぶや
)
いたことであろう。署を出てから、もう二時間余りにもなる。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
手拭
(
てぬぐい
)
を以て馬と見せ、
砂塵
(
さじん
)
を投げて鳥となし、
爪
(
つめ
)
より火を出してタバコを吸ひ、
虚空
(
こくう
)
を飛行し地に隠れ、火の粉を降らして
沃土
(
ようど
)
を現じ、その他さまざまの幻術を使ふ。……
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
濛々
(
もうもう
)
たる
砂塵
(
さじん
)
をあげて、トラック隊は、ひきもきらず、
呆然
(
ぼうぜん
)
たる彼の前を通りぬけていった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それから何時間経ったでしょう、水の黒さが身にしむばかり、人足も大分途絶えて、名物の
空
(
から
)
っ
風
(
かぜ
)
、花を散らした
名残
(
なご
)
りを吹いて、サッと橋の上の
砂塵
(
さじん
)
を吹きあげる頃でした。
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
町の方から
砂塵
(
さじん
)
を蹴あげて、五十人あまりの異様な一団が、この大戸へ来たことであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さすがに、
無情
(
むじょう
)
の
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
ですら、
人間
(
にんげん
)
の
心
(
こころ
)
のあさましさにあきれてしまったように、さも
腹
(
はら
)
だたしげに、
強
(
つよ
)
く
強
(
つよ
)
く
吹
(
ふ
)
いて、
道
(
みち
)
の
上
(
うえ
)
の
砂塵
(
さじん
)
をまいて
人間
(
にんげん
)
を
困
(
こま
)
らしてやろうとしました。
ある冬の晩のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
朝はすべてに水がしたたっていても、午後にはすべてが
砂塵
(
さじん
)
におおわれる。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
黒く焼け
焦
(
こが
)
れた市街が、東にずっと続いていた。市街をめぐる山々は美しく、鮮かな緑に燃え、谷山方面は白く
砂塵
(
さじん
)
がかかり、赤土の
切立地
(
きりたてち
)
がぼんやりとかすんでいた。自然だけが、美しかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
つまり、芦の茂みに砂や土が
溜
(
た
)
まり、流れて来た小枝や枯葉が溜まり、そこへまた
砂塵
(
さじん
)
や土が混って、洲の一段が出来あがる。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
前田陣の前衛は——いや中軍の近くまでも、敗走して来る佐久間勢の
喚
(
わめ
)
きや血まみれを
容
(
い
)
れて、見るまに、
砂塵
(
さじん
)
の渦となり、
濛々
(
もうもう
)
たる
凄色
(
せいしょく
)
にくるまれた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柱と壁の
隙間
(
すきま
)
が離れてそこから風が
砂塵
(
さじん
)
と共に吹きつけた。彼女は自分の体が壁に
挟撃
(
きょうげき
)
されそうな気がし、輝雄を突き落さんばかりに転げ落ちながら
駈
(
か
)
け降りた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は、毎朝早く起きて、砂漠の下の
防空壕
(
ぼうくうごう
)
を
匐
(
は
)
いだすと、そこに出迎えている
常用戦車
(
じょうようせんしゃ
)
の中に乗り込み、文字どおり
砂塵
(
さじん
)
を蹴たてて西進し、重工業地帯へ出動するのであった。
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
北西の風は道路の
砂塵
(
さじん
)
をこの簡単な「店」の上にまともに吹きつけていた。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と、すんでのことに、彼もその
陥穽
(
かんせい
)
に
自
(
みずか
)
ら飛びこむ
弾
(
はず
)
みだったのを、ハッとして足を食い止めましたが、濛々とあがった
砂塵
(
さじん
)
と
驚愕
(
きょうがく
)
に、中をのぞく隙もなく
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山火事のように
渦
(
うず
)
をまく
砂塵
(
さじん
)
の中に、ただひとり取り残されていた彼だった。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
勝頼
(
かつより
)
の
末子
(
ばっし
)
伊那丸
(
いなまる
)
が、まだ
快川
(
かいせん
)
のふところにかくまわれているという事実をかぎつけて、いちはやく本陣へ急報したため、すわ、それ
逃
(
の
)
がしてはと、二千の
軍兵
(
ぐんぴょう
)
は
砂塵
(
さじん
)
をまいて
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてあたりを見廻わしたが、クラブの
囲
(
かこ
)
いの外は、
茫々
(
ぼうぼう
)
たる草原が見えるばかりで、怪人物の姿は何処にも見えなかった。ただ
遥
(
はる
)
か向うを、
濛々
(
もうもう
)
たる
砂塵
(
さじん
)
が移動してゆくのが目に入った。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あたかも
鉄球
(
てっきゅう
)
がとぶように、
砂塵
(
さじん
)
をついて
疾走
(
しっそう
)
していく
悍馬
(
かんば
)
があった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして親しく中軍の士気をはげましているうちに、
野末
(
のずえ
)
の一端が、黄いろい
砂塵
(
さじん
)
にけむり出した。——するとその土ぼこりはたちまち全面にひろまってきた。もうもうと、何かが泰家に迫っている。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芒
(
すすき
)
の果から、
濛々
(
もうもう
)
と、黄色い
砂塵
(
さじん
)
が立って来た。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“砂塵”の意味
《名詞》
砂塵(さじん、稀:しゃじん)
砂埃。
(出典:Wiktionary)
砂
常用漢字
小6
部首:⽯
9画
塵
漢検準1級
部首:⼟
14画
“砂塵”で始まる語句
砂塵埃