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砂埃
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すなぼこり
ふりがな文庫
“
砂埃
(
すなぼこり
)” の例文
もうお
午
(
ひる
)
を少しすぎた。木之助の袂はずしんずしんと横腹にぶつかるほど重くなった。
草鞋
(
わらじ
)
ばきの足にはうっすら白い
砂埃
(
すなぼこり
)
もつもった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
すると、私自身でも思いがけなかったほど、その柱はひどくグラグラしていて天井から
砂埃
(
すなぼこり
)
が二人の
襟足
(
えりあし
)
に
雲脂
(
ふけ
)
のように降りかかって来た。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
あたりに
砂埃
(
すなぼこり
)
のような幕が立って、彼は彼の手で
仰向
(
あおむ
)
けに突きとばされたヒロ子さんがまるでゴムマリのようにはずんで空中に浮くのを見た。
夏の葬列
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
下城したときはもうすっかり
昏
(
く
)
れていた。かなり強い北風で、道から
砂埃
(
すなぼこり
)
が舞いあがり、
内濠
(
うちぼり
)
の水は波立って、頻りに石垣を打つ音が聞えた。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
と煙を立てて走って行く姿を見てあれは暴君だといってよく怒ったものである。風致を害するともいったものだ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
▼ もっと見る
砂埃
(
すなぼこり
)
が馬の
蹄
(
ひづめ
)
、車の
轍
(
わだち
)
に
煽
(
あお
)
られて
虚空
(
こくう
)
に舞い上がる。
蝿
(
はえ
)
の群が往来を横ぎって家から家、馬から馬へ飛んであるく。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
と蹄の音を高く揚げながら、千里一飛びという勢いで都の南の端にある青物市場へ一目散に飛び込みました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
靴の上へ積った
砂埃
(
すなぼこり
)
を気にするのであったが、彼自身の影さえ映らない真暗な路へさしかかると、またしても妙に落着きを装うて歩きつづけるのであった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
重い
輪止
(
わどめ
)
が車輪にかけられて、馬車が雲のような
砂埃
(
すなぼこり
)
を立て
燃殻
(
もえがら
)
のような臭いをさせながら丘を滑り下っている時、真赤な夕焼は急速に薄くなって行った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
翌る日、ガラツ八の八五郎が
長刀草履
(
なぎなたざうり
)
に
砂埃
(
すなぼこり
)
を飛ばして、明神下の平次のところに飛び込んで來ました。
銭形平次捕物控:201 凉み船
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
今でも覚えているが、その日は猛烈な
砂埃
(
すなぼこり
)
が深い霧のようにあたりに
立罩
(
たちこ
)
め、太陽はそのうす濁った砂の霧の奥から、月のようなうす黄色い光をかすかに洩らしていた。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
の立つ白い
路
(
みち
)
を、二人は
鈍
(
のろ
)
い
俥
(
くるま
)
に乗って帰って来たが、父親が
侑
(
すす
)
めてくれた濁酒に酔って、俥の上でごくりごくりと眠っている小野田の
坊主頸
(
ぼうずえり
)
をした大きい
頭脳
(
あたま
)
が
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それによごれた
叺
(
かます
)
を並べ、馬の餌にするような芋の切れ端しや、
砂埃
(
すなぼこり
)
に色の変った駄菓子が少しばかり、ビール
罎
(
びん
)
の口のとれたのに夏菊などさしたのが一方に立ててある。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お
前
(
まへ
)
もお
聞
(
き
)
きよ、
私
(
わたし
)
が
毎日
(
まいにち
)
出勤
(
しゆつきん
)
するあの
破堂
(
やぶれだう
)
の
中
(
なか
)
で、
顏
(
かほ
)
は
汗
(
あせ
)
だらけ、
砂埃
(
すなぼこり
)
、
其
(
そ
)
の
上
(
うへ
)
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
で、
目口
(
めくち
)
も
開
(
あ
)
かない、
可恐
(
ひど
)
く
弱
(
よわ
)
つた
處
(
ところ
)
を、
此
(
こ
)
のお
方
(
かた
)
だ、
袖
(
そで
)
で
綺麗
(
きれい
)
にして
下
(
くだ
)
すつた。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
俺も
砂埃
(
すなぼこり
)
のこうひどくない、いくらかは空気のいいところへ移りたくなった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
舞上る
砂埃
(
すなぼこり
)
に遮られて、それは森とも丘とも見わけのつかぬ茫漠とした眺めではあったが、あの混濁のなかに一つの清澄が
棲
(
す
)
んでいて、それが
頻
(
しき
)
りに向うから彼の魂を誘っているようだった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と、満載した材木の蔭から、
砂埃
(
すなぼこり
)
でまっくろになった運転手の顔が
覗
(
のぞ
)
いた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
木片
(
きぎれ
)
、
砂埃
(
すなぼこり
)
などの散乱した中に、患者はベッドもなく、幕の上に毛布を敷いた応急の病床に、ところ狭く
横
(
よこた
)
わり、その枕元に附添人、看護婦などがうずくまるという有様、電燈線は切断され
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
日帰りに兀山を越えなければならぬ暑さは、
固
(
もと
)
より格別であろうが、炎天下の行列の暑さも同情に値する。大勢の人が蹴立てて行く
砂埃
(
すなぼこり
)
を想像しただけでも、何だかむせっぽい感じがして来る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
私の登った北米のフッド火山は、大なる氷河が幾筋となく山頂から流れているにもかかわらず、麓の高原は乾き切って、
砂埃
(
すなぼこり
)
とゴロタ石の間に栽培した
柑橘
(
かんきつ
)
類の樹木が、
疎
(
まば
)
らに立っているばかり。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「まあ
汚
(
きたな
)
い足」といった。松次郎と木之助は食べながら自分の足を見ると、ほんとに女中のいった通りだった。
紺足袋
(
こんたび
)
の上に
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
いていたが、
砂埃
(
すなぼこり
)
で真白だった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
吹きつける
砂埃
(
すなぼこり
)
から顔をそむけた、「ときどきこの保本をよこすが、もう少しようすをみてからでないとわからない、とにかくあれ以上ひどくなるような心配はないだろう」
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金縁
(
きんぶち
)
眼鏡をかけて、
細巻
(
ほそまき
)
を用意した男もあった。
独法師
(
ひとりぼっち
)
のお島は、草履や下駄にはねあがる
砂埃
(
すなぼこり
)
のなかを、人なつかしいような
可憐
(
いじら
)
しい心持で、ぱっぱと
蓮葉
(
はすは
)
に足を運んでいた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
こんな
長閑
(
のどか
)
な住居にいる人達が、どうして私の事を、馬の骨だの牛の骨だのなんかと言うのだろうか、
沈黙
(
だま
)
って
砂埃
(
すなぼこり
)
のしている縁側に腰をかけていると、あの男のお母さんなのだろう
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お千はまた興奮して、
地団太
(
じだんだ
)
を踏み、往来の
砂埃
(
すなぼこり
)
をしきりと立てていた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大きいほうの男はそれを横眼に
睨
(
にら
)
んでいて、それから立ちあがり、着物の裾を手ではたいた。痩せた男はぐいと顔をそむけた。
砂埃
(
すなぼこり
)
でもよけるような、神経質な身ぶりであった。
ひとでなし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
砂
常用漢字
小6
部首:⽯
9画
埃
漢検1級
部首:⼟
10画
“砂”で始まる語句
砂
砂利
砂漠
砂礫
砂塵
砂糖
砂丘
砂煙
砂地
砂金