直々じきじき)” の例文
奉じ、城主山路殿に直々じきじき会い申さんために、これまで参った。——山路弾正殿に、御意ぎょい得とうぞんずる。山路殿はそれにおさぬや!
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浪人原口作左衛門を、禁断の鍼で殺したという家人のうったえで、按摩佐の市は、時の南町奉行、遠山左衛門尉とおやまさえもんのじょう直々じきじき取調とりしらべを受けて居ります。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「いえ、一々お取り次ぎは、かえってお願いの筋が通り兼ねるかとも存じます。御用でございましたらば、わたくしから直々じきじきに申し上げます」
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
美人「夫では貴方の叔父さんへお伝え申しましょう、併し夫もお目に掛って直々じきじきにで無くては」余「イヤ叔父は定めし喜びましょう、私がっと叔父を ...
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ところでその方は何んのために、甲斐の徳本を討ち果たすよう、大殿から直々じきじき使命を受け、御岳山中へ分け行ったか、その理由を知っているかな?」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右の老人のただ者でないという証拠が、あちらからもこちらからも提出されて、天狗から直々じきじきの指南を受けた人たちの持て方が大したものであります。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ええかい、おまえがおとっさまの丹精たんせいで、せっかくこれまでになッて、天子様からお直々じきじきに取り立ててくださったこの川島家もおまえの代でつぶれッしまいますぞ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「御息女さまが、太夫、わざわざの見舞とお聴きになり、直々じきじき逢うて礼をいいたい——との仰せでござりますゆえ、のちほど、御病間まで、おはこびを——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「大爆発大いに結構。その前に一言でもいいから博士直々じきじきはなしうかがいたいのです。すばらしい探訪たんぽうニュースに、やっと取りついたのですからな。さあ白状なさい」
時下じか残暑ざんしょしのぎがたく候処そうろうところ益〻ますます御清穆ごせいぼく御事おんこと存上候ぞんじあげそうろう 却説さて 伯爵様はくしゃくさま折入おりいって直々じきじき貴殿きでん御意得度思召ぎょいえたきおぼしめし被在候間あらせられそうろうあいだ明朝みょうちょう御本邸ごほんてい御出仕可然ごしゅっししかるべく此段申進候このだんもうしすすめそうろう 早々そうそう頓首とんしゅ
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
薩州から良い種馬を仕入れたいばかりに、島津家と直々じきじき交際つきあいをしたものじゃ。大名の島津と、黒田の家来格の者が対等の交際をするならば黒田藩の名誉でこそあれ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを無頓着むとんじゃくの男の質朴ぶきようにも突き放して、いえ、ありがとうはござりますれど上人様に直々じきじきでのうては、申しても役に立ちませぬこと、どうぞただお取次ぎを願いまする
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、文句の倹約は、殿様直々じきじきのお触出しですから、今さら、もとへと願い出も出来ません。窮した結果あげくが、次のように掛け声を改めました。「はじめは倹約えんやらえ」と。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
願い出ました無礼、おとがめもなく、かくは直々じきじきお言葉をたまわり、ありがたきしあわせに存じまする。いつもながらごきげんうるわしく拝したてまつり、恐悦至極に存じまする
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この事は、酒井先生も御承知で、内証ないしょうで飯田町の二階で、直々じきじきに、お蔦に逢って下すって、その志の殊勝なのに、つくづくうなずいて、手ずから、小遣など、いろいろ心着こころづけがあった、と云う。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直々じきじきの目通り、苦しゅうないぞ。主人あるじはおるか」
「とてものことに、殿直々じきじきの上意を」と乞うた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
主君の信長の従兄弟いとこにあたる名古屋因幡守から、この末臣の家へ、直々じきじきに状を持たせて使いをよこすなどは極めて稀れなことである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「拙者が直々じきじきに参るのは、まことに異なものでござるが、今となっては最早もはうらみも憎しみも無いお互いでござる——」
直々じきじき松平越中守様へ、渡してくれよと御意ありました趣き、狂女ながらも誠心のお浦の、さまざまの挙動と言葉とによって、たしかめましてござります
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そんならば、拙者は会いたいのじゃ、会って直々じきじきにお話し申したいことがあるから、それをお前に頼むのじゃ」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「はい、はい」と、伊之助は鉋屑かんなくずをかき分けながら出て来た。彼はきのうも松吉に嚇されているので、きょうはその親分が直々じきじきの出張にいよいよおびえているらしかった。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
行かで済まぬと思わるるなら妾がちょと一走り、お上人様のお目にかかって三日四日の養生を直々じきじきに願うて来ましょ、お慈悲深いお上人様の御承知なされぬ気遣いない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「さあ、ここが毒瓦斯発明院だ。看板も、直々じきじき筆をふるって書いておいた」
御使者の手から直々じきじきに塙代与九郎へ賜わったという話な……御存じじゃろうが
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
是等は唯推量に止まるとするも外に余が直々じきじきに見た事柄も多少は有る。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その以前、直々じきじきに貴面を得て、客僧にもおし談じたい儀があるとわるる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
委細は行く先でおわかりになりましょう。じつはそのお方より主人長崎殿へ、なにか直々じきじきの御交渉があったので、かくは貴僧の身を
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えッ、黙らないか、武士に向って誘拐かどわかしとは何だ。——借金の抵当かたに、今晩は拙者が直々じきじきれ帰り、内祝言ないしゅうげんを済ませて、宿の妻にするに何の不思議だ。
……噂によれば木曽殿の妾に鳰鳥とかいう女あって、表や大奥もその魔手のために掻き乱されるということであるが、是非とも直々じきじき会って見たいものだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さようでございますか、直々じきじきにお手渡しをしたいのですが、いつごろお帰りでございましょうかな」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その役目を云い付かると同時に将軍から直々じきじき御手許金を下さる。それを路用にしてお城からまっすぐに出発するのが習いで、自分の家へ帰ることは許されないことになっていました。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かたじけのう御座る。おおかたお側のはしたどもの噂からお耳に入ったことと思うが、殿の仰せには、薩藩から余に一言の会釈もせいで、黒田藩士に直々じきじきの恩賞沙汰は、この忠之を眼中に置かぬ島津の無礼じゃ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
火急、お訴えの事あって、大目附たる伯耆守ほうきのかみ様までまかり出ました。何とぞ、伯耆守様直々じきじきに、お聴取り下さるよう、お取次を願いまする
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(田沼様に直々じきじき逢い、お浦をかせに強談し、ふたたび禄をいただくか。そうでなかったら大金を——。)
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おのおの方にお名乗り申す由はない。たって姓名が承りたくば能登守直々じきじきにおいであるがよろしい」
「その兄の宗次郎とやらを呼べ、直々じきじきに逢って、元の身分に返せるものなら返してやる」
それを表向きに詮議する事の出来ないというのは、その仮面は屋敷の御先祖が権現様から直々じきじきに拝領の品で、それを迂濶に紛失させたなどとあっては、公儀へのきこえも宜しくない。
半七捕物帳:42 仮面 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まして当代の人格者はなわ老先生の指導を直々じきじきにうけた門人ならば、なおさら、そう考えるのが当りまえでしょう。加山殿の苦衷くちゅうもお察しする
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「宮様に直々じきじきお眼通り仕り、許すとのお言葉いただきたさに、流浪いたすものにござりまする」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
与八は、伊太夫直々じきじきのこの好意に対して、何と返事をしていいかわからない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし江戸の客が身請けをするなぞと云えば、主人も足もとを見て高いことを云うに相違ないから、おれが直々じきじきに掛け合って、親許身請けと云うことにして、十五両か二十両に値切ってやる。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「予が直々じきじき逢ってつかわす」
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「きょう直々じきじき、こういう仰せ付けをうけたが、これは勘気かんきをゆるすという御意ぎょいだろうか。無言のおゆるしと解していいだろうか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、頼宣卿へその方直々じきじき、書面をもってお願いくだされ。それを頼宣卿お聞き入れあって、義党の人々をご放免あらば、その方をも放免いたすでござろう。それまではその方は我々の人質
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それもまんざら無理じゃあねえ。女は案外におそろしい料簡を起こすものだ。そこで先ず奥さまの細工とすると、奥さまが直々じきじきに船頭に頼みゃあしめえ。誰か橋渡しをする奴がある筈だが……」
甲州から諏訪すわへ出て、木曾街道を御定法ごじょうほう通りに参ったんでございます、あなた様の親御様でいらっしゃる伊太夫様のお枕元から、このしがねえ三下野郎が直々じきじきに頂戴して参ったんでございますよ
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「どうも、ゆゆしいことに相成りましたな。何せい、朝廷直々じきじき掃討そうとう軍ですら、たびたび打ち負かされて手を焼いているあいつらのこと」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「米吉が不安心なら、今度は手前から直々じきじきにお渡し申しても宜しい」
というよりせまってみたけれど、たん死し、気落ちたる時はぜひがない、徳川三百年来、はじめて行われたという将軍直々じきじきの免職で、万事は休す! そこで、西郷と勝とが大芝居を見せる段取りとなり
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)