生白なまじろ)” の例文
え、人間というものかい? 人間というものはつのえない、生白なまじろい顔や手足をした、何ともいわれず気味の悪いものだよ。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしは彼等の話の中から、そっくりそのままの毒を見出し、そっくりそのままの刀を見出す、彼等の牙は生白なまじろく光って、これこそ本当に人食いの道具だ。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
握った手に余った柄頭の、金具が日の光に反射して、露が溜ってでもいるように、細かく生白なまじろく光って見えた。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
頼母たのもしいのと、當人たうにん自慢じまん生白なまじろところへ、足駄あしだをひつくりかへしたのは、門内もんない團右衞門だんゑもんとは隣合となりあはせの當家たうけ家老からう山田宇兵衞やまだうへゑ召使めしつかひの、葛西かさい飯炊めしたき
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だから、これから師匠のうちまで、恐れ入りますが一緒に来ておくんなさい。あいつとわっしが対決して、きッと生白なまじろい仮面を引っぱいでお目にかけましょう」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨も小降こぶりになり、やがて止んだ。暮れたと思うた日は、生白なまじろ夕明ゆうあかりになった。調布の町では、道の真中まんなかに五六人立って何かガヤ/\云いながらを見て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
巴里パリイでは概して家の中に閉ぢ込めて置く所から、一般に娘供が生白なまじろい顔をして如何いかにも弱弱よわ/\さうである為め、自然仏蘭西フランス人の前途まで心細く思はれぬでも無いが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
瘠せ枯れた生白なまじろい手には細い、銀頭ぎんがしらの竹のステッキを一本つまんでいるきり、何も持っていない。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
生白なまじろい丸顔の、目のぎょろりとした様子までが、ただの子供でないと私はすぐ見て取りました。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし一体誰が殺したか、誰が死体をバラバラにし、誰が蟒に与えたか。それは一向にハッキリ判っていなかったが、この生白なまじろい鴨田研究員の関係していることはいなめなかった。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
生白なまじろい五つの花べんはひとでの様に物欲しそうに、キューッキューッと海水を締めつかんだ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見ると先刻さっき主人が書斎へ放り込んだ古毛布ふるげっとである。唐桟とうざん半纏はんてんに、御納戸おなんど博多はかたの帯を尻の上にむすんで、生白なまじろすねひざから下むき出しのまま今や片足を挙げて畳の上へ入れる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生白なまじろい旗本や御家人の腕では叩き出せねえから、まもなく元へ返ってしまった。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
肌の生白なまじろい男が両手をひろげて、泳ぐような真似をしていたが
その場に生白なまじろい腹を見せながら斃死くたばってしまうのも多かった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
時々未練に娘をのぞいて、赤潮に追払われて、醜く、ふらふらと生白なまじろただようてする。あわれなものだ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せよ! この窯焚きの百助はな、さんざん江戸でもゴロついていた事があるんだ。てめえみてえな色の生白なまじろい泥人形が、江戸生れだなんてかしたって誰がまともに受けるものか。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、ひろって行くのである。娘と婿とに逢う旅だ。妹と義弟とに逢う旅だ。二人の顔には喜色があり、二人の歩みには活気がある。真夏の早天水蒸気を含み、胡粉ごふんをとかしたように生白なまじろい。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時々西の方で、ある一処雲がうすれて、探照燈たんしょうとうの光めいた生白なまじろい一道のあかりななめに落ちて来て、深い深いいどの底でも照す様に、彼等と其足下の芝生しばふだけ明るくする。彼等ははっと驚惶おどろきの眼を見合わす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
口数をあまりきかない、顔色の生白なまじろい、額の狭い小づくりな、年は二十一か二の青年わかものを思い出しますと、どうもその身の周囲に生き生きした色がありません、灰色の霧が包んでいるように思われます。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それで生白なまじろい色をして、あおいものもあるがね、煮られて皿の中に横になった姿てえものは、魚々さかなさかな一口ひとくちにゃあいうけれど、考えて見りゃあ生身なまみをぐつぐつ煮着につけたのだ
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頼母たのもしいのと當人たうにん自慢じまんだけの生白なまじろところへ、足駄あしだをひつくりかへしたのは、門内もんない團右衞門だんゑもんとは隣合となりあはせの當家たうけ家老からう山田宇兵衞やまだうへゑ召仕めしつかへの、まはり葛西かさい飯炊めしたき
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、気疾きばやくびからさきへ突込つっこむ目に、何と、ねやの枕に小ざかもり、媚薬びやく髣髴ほうふつとさせた道具が並んで、生白なまじろけた雪次郎が、しまの広袖どてらで、微酔ほろよいで、夜具にもたれていたろうではないか。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのなんだつて、ものをこそはねえけれど、もあれば、くちもある、それで生白なまじろいろをして、あをいものもあるがね、られてさらなかよこになつた姿すがたてえものは、魚々さかな/\一口ひとくちにやあいふけれど
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いろ生白なまじろいのがあつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)