熟睡じゆくすゐ)” の例文
勘次かんじうす蒲團ふとんへくるまつてうちからえてたあしあたゝまらなかつた。うと/\と熟睡じゆくすゐすることも出來できないで輾轉ごろ/\してながやうやあかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小六ころく御米およね今朝けさから今迄いままで樣子やうすくと、じつあまねむいので、十一時半頃じはんごろめしつてたのだが、夫迄それまで御米およね熟睡じゆくすゐしてゐたのだとふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのばんあつさをはら凉雨れううた、昨夜ゆうべねこのために十ぶんられなかつたあはせに今夜こんや熟睡じゆくすゐしようとおもつた。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
連て罷越まかりこし歸宅の節夜分大井川の端迄參りし處九郎兵衞は酒のゑひにて河原の石にもたれ熟睡じゆくすゐいたしさめぬゆゑ私し儀藥を買に參り漸々やう/\に戻り來りしに九郎兵衞は何者かを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
アヽ杉山君すぎやまくんうか過日くわじつうもぼくえらうた、前後忘却ぜんごばうきやくといふのはの事かい、下宿げしゆくかへつて翌日の十時すぎまで熟睡じゆくすゐをしてしまうたがアノやうた事はあまり無いよ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
曲者くせものは雨戸を外して入つたらしく、縁側には泥足の跡などを付けて居りますが、部屋の中には別にそんなものはなく、主人の佐兵衞は熟睡じゆくすゐして居るところを、蟲のやうに刺されたらしく
くわふるに寒風かんきを以てし天地まさに大にれんとす、嗟呼ああ昨日迄は唯一回の細雨さいうありしのみにして、ほとん晴朗せいろうなりし為め終夜熟睡じゆくすゐ、以て一日の辛労しんらうかろんずるを得たるに、天未だ我一行をあはれまざるにや
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
與吉よきちひとんだおしなそば熟睡じゆくすゐしてた。卯平うへいあへずおしなむねあはせてやつた。さうしてはた道具だうぐひとつである蒲團ふとんせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「おつう、よきことおこせ」勘次かんじはさういつて自分じぶんひとつに蹣跚よろけながらつた。おつぎは與吉よきち身體からだはげしくうごかしたが熟睡じゆくすゐしてしまつたので容易よういひらかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)