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母樣
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はゝさま
落つけずや
母樣には
我れ
願はんとて
放し
給はず
夫樣も
又くれ/″\の
仰せに
其まゝの
御奉公都會なれぬ
身とて
何ごとも
不束なるを
ヂュリ
母さまは
何處にぢゃ?
母樣は
家にぢゃ。
何處に
行かしゃらうぞ?
何を
言やるぞい!「あの
方が
被言るには、
身分のある
殿方らしう、お
母樣は
何處にぢゃ?」
迎へなば
亡夫に言譯なく夫とても
母樣の御心休めに成事ならば
更々厭ひは致さね
共今聟を
一
生五十
年めくらに
成りて
終らば
事なからんと
夫れよりは一
筋に
母樣の
御機嫌、
父が
氣に
入るやう一
切この
身を
無いものにして
勤むれば
家の
内なみ
風おこらずして
言葉では
言ひ
盡されぬ
不幸ぢゃ。……なう、
父樣や
母樣は
何處にぢゃ。
隱され給ふ
由然樣にては
跡々の
仕樣も御座なく
母樣御一人にてお
困り成るゝは申迄もなく元は
妾姉妹二人を斯樣に
御育下され候よりお
物入多く夫ゆゑ御難儀にも相成し事なれば
數ならねども私しを
お
母樣御機嫌よう
好い
新年をお
迎ひなされませ、
左樣ならば
參りますと、
暇乞わざとうやうやしく、お
峯下駄を
直せ、お
玄關からお
歸りでは
無いお
出かけだぞと
圖分/\しく
大手を
振りて
ヂュリ なに、あの、
其方の
慰めで
不思議に
心が
安堵いた。
奧へ
往て、
母樣に
言うてたも、
父上の
御不興を
受けたゆゑ、
懺悔をして
罪を
赦して
貰はうとて、ロレンスどのゝ
庵室へわしが
往んだと。
點て先へ立コレお安殿何も案じる事は
無お富さんも御屋敷へ行てから
度々母樣へお
案事成らぬ樣宜しく云て下されとお
言傳も有りました特には先の御屋敷でも御意に
適つて
益々全盛と云はんとせしが口を