染々しみ/″\)” の例文
げ若し長庵殿言事いふことにも程が有る近所きんじよには居らるれどもお前とは染々しみ/″\もの言換いひかはした事も無いに私しと密通みつつうを仕て居るなどと根も葉も無事なきこと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近子は成程なるほどうかとも思ツて、「ですけども、私等わたしたちは何んだツて此樣こんなに氣が合はないのでせう。」と心細いやうに染々しみ/″\といふ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そして捕捉しがたい底知れない不安が、どうなることであらう自分達の將來に、また頼りない二人の老い先にまで、染々しみ/″\と思ひ及ぼされた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
お光は二階へ上つて行く人、階下したに居る人の姿を眺めて、この人達が自分と小池との逢瀬を妨げたのだなア、と染々しみ/″\思つた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そして三人が何時になく染々しみ/″\と雀のやうに寄り添つて、たいの想出話を聞きながら白酒などを酌み交してゐると、英則がぬつと首を突き出して
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
船頭や、橇曳そりひきや、まあ下等な労働者の口から出る言葉と溜息とは、始めて其意味が染々しみ/″\胸にこたへるやうな気がした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おゝ成程な、いやかけ違って染々しみ/″\挨拶もしなかったが、段々と上屋敷の事も下屋敷の事も、貴公が大分に骨を
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その頃のことを繰返して見ると、いつの間にか月日が経つたといふことが染々しみ/″\と考へられる。
紅葉山人訪問記 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
じつ意外ゐぐわいです、きみ此樣こん絶島ぜつとうへ——。』といひつゝ、染々しみ/″\吾等われら兩人りようにん姿すがた打瞻うちなが
(おとまりは何方どちらぢやな、)といつてかれたから、わたし一人旅ひとりたび旅宿りよしゆくつまらなさを、染々しみ/″\歎息たんそくした、第一だいいちぼんつて女中ぢよちう坐睡ゐねむりをする、番頭ばんとう空世辞そらせじをいふ、廊下らうか歩行あるくとじろ/\をつける
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今一度なりとも呼度思ひ其夜は外のきやくへも染々しみ/″\つとめざる程なれば其心の此方こなたにもつうじけん千太郎も小夜衣の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一心に長い手紙をひろげてゐる、お文の肉附のよい横顔の、白く光るのを、時々振り返つて見ながら、源太郎は、めひう三十六になつたのかあアと、染々しみ/″\さう思つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
さあ、父の与へたいましめは身に染々しみ/″\こたへて来る。『隠せ』——実にそれは生死いきしにの問題だ。あの仏弟子が墨染の衣に守りやつれる多くの戒も、の一戒に比べては、いつそ何でもない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ヘエ有難うございます、私はね此方こっちへ参りましてだ名主様へ染々しみ/″\お近付にもなりませんで、兄貴が連れてお近付に参ると云って居りますが、なんだか気が詰ると思ってツイ御無沙汰を
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
我折がを染々しみ/″\たのんでひたひげるとざつといふすさまじおとで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方の伯父御さまの秋月さまは未だ染々しみ/″\お言葉を戴きました事もないゆえ、大藏とうより心懸けて居りますが、手蔓はなし、よんどころなく今日こんにち迄打過ぎましたが、春部様からお声がゝりを願い
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
酔はもう全くめた風で、お文は染々しみ/″\とこんなことを言ひ出した。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
黒髮くろかみまたつめたさが、染々しみ/″\うれしかつたときでした。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三五郎は聞て彌々いよ/\身に染々しみ/″\と有難く思ひて立歸れり時に享保二年四月廿七日今日は九助の一件落着らくちやくなし死罪しざい獄門ごくもんと相定り家老中からうぢう諸役人町役所立會の上申渡す事故本多長門守家老本多外記既に支度に及びて玄關先げんくわんさき駕籠かご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
染々しみ/″\いまだお目通りは致しませんが、日外いつぞやあの五六年以前、大夫たいふが御出府のおりにお目通りを致した事がありますと申し、斯様な見苦しい処ではござるが、一度御尊来を願いたいと申して居ったので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
染々しみ/″\と同情する言葉つきになつて、源太郎は太い溜息をいた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
染々しみ/″\ふ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今日は染々しみ/″\物語をしようと思いまして屋敷へまいり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
染々しみ/″\さう思つた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
くの「はいお初にお目にかゝりまして、お噂には毎度承知いたして居りやんしたけれども、是迄はおかしな訳で、染々しみ/″\お目にかゝる事も出来ませんで、私ゃア茂之助の女房のおくのと申す不束者でござんして、何うかお見知り置かれましてお心安う願います」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)