だき)” の例文
垣を越える、町を突切つッきる、川を走る、やがて、山の腹へだきついて、のそのそと這上はいあがるのを、追縋おいすがりさまに、尻を下から白刃しらはで縫上げる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お辰かと珠運もだきしめてひたいに唇。彫像が動いたのやら、女が来たのやら、とわつたなく語らば遅し。げんまたげん摩訶不思議まかふしぎ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「どうせ冬までねかしておくものだ」お島は心の奥底によどんでいるような不安と恐怖を圧しつけるようにして言った。そしてこの頃なじみになった家へ、それをだきこんで行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
だき上げ胡鷺々々うろ/\聲コリヤ白妙どういふ事で此有樣何者の所業ぞや何國にかげを隱すとも此あだを討ずに置べきやと血眼になりていかれども歎くに甲斐なき此場の時宜しぎあはれをとゞめける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
正太しようたはあつともはず立止たちどまりしまゝいつもごとくはだききつきもせで打守うちまもるに、彼方こなた正太しようたさんかとてはしり、おつまどんおまへものらば此處こゝでおわかれにしましよ、わたし此人このひとと一しよかへります
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
行く春やおもたき琵琶びわだきごころ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
恋人をしめ殺したくだきすくめ
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
炭竈すみがま両膝もろひざだきて髭男 散木
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
かれは床几を立つ。人々お沢をだきすくめて床几にす。黒髪高く乱れつつ、一本ひともとの杉のこずえに火をさばき、艶媚えんびにして嫋娜しなやかなる一個の鬼女きじょ、すっくと立つ——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
行く春や重たき琵琶びわだきごころ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
おっかさん、たとい欣さんには見棄てられても、貴女にばかりはだきついて甘えてみとうござんした。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とのさばりかかり、手もなくだきすくめてつかみ行く。仕丁しちょう手伝い、牛の背にあおむけざまに置く。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここできりの箱も可懐なつかしそうにだきしめるように持って出て、指蓋さしぶたを、すっと引くと、吉野紙よしのがみかすみの中に、お雛様とお雛様が、紅梅白梅こうばいはくばいの面影に、ほんのりと出て、口許くちもと莞爾にっことしたまう。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私も思わず莞爾して、引ッたくるように膝へのせて、しっかりだきしめて頬をおッつけると、嬉しそうに笑ッちゃあ、(父様おとっちゃんが居ないと可い)と、それまたお株を言うじゃあないかえ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裸体はだかの立姿は腰から消えたようになって、だきついたものがある。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
裸体はだか立姿たちすがたこしからえたやうになつて、だきついたものがある。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と涙ながら、そのまま、じっとだきしめて
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と胸をだきしめて身をふるわした。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)