)” の例文
旧字:
母は私に言うには、持って行くにも当らないようなものは、何でも彼にやるがいいから、欲しいものを彼にらせることにしよう。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そしてわざと暗い所をってもつれ合ってゆく柔弱なやからを見るといきなり横づっぽうの一つも張り飛ばしてやりたいほどかんがたって
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
っていて、十円紙幣さつ十枚を見つけ出したとします。その際、単に十円紙幣十枚と書いたんじゃ記事が映えません。何うしますか?
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ってあるいていると、いつのにか紅塵万丈こうじんばんじょうの都会に住んでる気はなくなって、山の中へ迷い込んだような心持ちになるに相違ないです
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは汽車の窓から買取つたもので、其色の赤々としてさも甘さうに熟したやつを、つて丑松にもすゝめ、弁護士にも薦めた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
囚衣から手拭てぬぐいのはしに至るまで、もう他では使用に堪えなくなったものばかりを、りに択って持ってくるのである。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
お増と二人で行きつけの三越みつこしなどで、お今に似合うような柄をって、浅井は時のものを着せることを忘れなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
が、世界の美人を一人で背負せおって立ったツモリの美貌自慢の夫人がりに択って面胞にきびだらけの不男ぶおとこのYを対手に恋の綱渡りをしようとは誰が想像しよう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私は与一の手紙が来てから、朴の紹介しょうかいで、気合術診療所の娘と、朝早く屑市場へ浅草紙を造る屑をりに通った。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
それから少し手際が面倒ですけれども醤油と味淋と水飴とを煮詰めて照炙てりやきにしても結構ですがあたらしい鰯をって上手に取扱わないと崩れてうまく参りません
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
り急いでゐる老いた母の姿が、じくじくした時雨つづきの、どうかすると霰でも来さうなうそ寒い日和と一しよに、やさしく、目にうかんでくるのである。
笛と太鼓 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
はじめは蝶子もりによってこんな所へと思ったが、「ど、ど、ど、どや、うまいやろが、こ、こ、こ、こんなうまいもんどこイ行ったかて食べられへんぜ」
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
人形に限らず、わたしもすべて玩具のたぐいが子供のときから大好きで、縁日などへゆくとり取りの二銭八厘の玩具をむやみに買いあつめて来たものでした。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
機敏に眼を働かして、品物をる指の怪しげな働き方を監視し、いざとなれば、素早く、意地のきたないはえを追うように、その指を退けようと身構えている。
酔つぱらひのカレーニクはまだ道程みちの半ばにも達しないで、なほもその呂律のまはらぬ、だらしのない舌でしか口にのぼすことの出来ないやうなりぬきの悪態で
あれが明るいところから、わざわざ暗いところへ、暗いところへとって歩いて、その腐りきった楽しみにふけったものだから、つい、あんなことになってしまいました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分は倉造りの運送問屋のつづいた堀留ほりどめあたりを親父橋おやじばしの方へと、商家の軒下の僅かなる日陰をって歩いて行った時、あたりの景色と調和して立去るに忍びないほど心持よく
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私はしづかに足を運んだ。別に行き逢ふ人もないのに、殊更迂路まはりみちをして、白い野薔薇のところ/″\咲いてゐる小径こみちつて歩いた。『別に急ぐことはない。急いだつて同じことだ』
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
ヨーロッパでもりぬきといった神父たちがそろって、ニッポンへやって来ていたという、特殊な事情があったからなのでありまして、彼の地の宗教事情はともかくとしても、ニッポンにとっては
欲しきものれよと云へど良き人と微笑む所長を見つつ決まらず
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
しかし魚はすくえるどころではなかったので、千代子はすぐそれを船頭に返した。船頭は同じ掬網たまで叔父の命ずるままに何疋でも水から上へり出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなことを言って笑いながら、中でも好さそうなのをって夫に渡した。三吉は無造作に綴合とじあわせた糸を切って、縮んだ足袋を無理に自分の足にめた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからそれへと考えながら、半七はあき茶屋を出て吾妻橋の方角へ引っ返すと、日ざかりの暑さはいよいよ夏らしくなったので、彼は葉桜の下をって歩いた。
しかし友人に勧められて検分に行って見ると大抵感服する。空気は好し、眺望は好し、何うせ天気の好い日をって出掛けるのだから、万事好いずくめで悉皆好い心持になる。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
固く捏ねて寝かしておいて自分で柔くなったのは軽くって味が良うございましょう。しかし一番大切なのは粉の性質でメリケン粉の中でも粘着力ねばりけの強いのをらなければいけません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
女中が相方あいかたをきめるのに困っているらしいのを見て、駒田はかわやから帳場へ姿をかくし、それから清岡を呼出し、座敷には招待した記者二人を残して好きな芸者をり取らせる事にした。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「型をって頂きます」——オランプがこう言う。
一番小さいのにさえきめておけば間違はあるまいという謙遜けんそんから、彼は腰の高い肱懸ひじかけも装飾もつかない最も軽そうなのをって、わざと位置の悪い所へ席を占めた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
床の間には箱入りの刀剣類も置いてあったのに、賊はそれらに眼をかけず、りに択って古びた兜ひとつを抱え出したのを見ると、最初から兜を狙って来たものであろう。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よくてないから堅くって石のとおりだ。りも択ってナゼこんな悪いものばかりよこすだろう。少しは手数のかからないものをくれればいいのに。オヤオヤまた来た。今度は柔らかい。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
と叔父さんが混返まぜかへすやうな調子で言つて、みんなの前でつたのは変な紅い色の裏地だ。番頭まで笑つた。斯の叔父さんの串談じやうだんに、お節は胸が一ぱいに成つて独りで次の部屋の方へ逃出して了つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そうして先刻さっき裁縫しごとをしていた時に散らばした糸屑いとくずを拾って、その中からこんと赤の絹糸のかなり長いのをり出して、敬太郎の見ている前で、それを綺麗きれいり始めた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よりにってあんな野郎とどうのこうのというわけがねえ。それでも津の国屋ではそれを云い立てにして、着のみ着のまま同様でお安ちゃんを里へ追い返してしまったんだ。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「姉さん、自分でつたら可いぢやないの——そんなとこに居ないで。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一舟ひとふね一舟になっているけれども良いのだけらせるなら買いましょう
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「そう、本はどれがるんだか妾分らないから、あなた自分でお好きなのをってちょうだい」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上位の方にり出されたといえば、その親たちも鼻を高くするのである。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
宅ではいつも下女に手打饂飩や手打蕎麦をこしらえさせますがそれを食べ慣れますとモー買ったものは不味まずくって食べられません。饂飩は小麦粉をるのが肝腎かんじんで粉が悪くっては美味おいしく出来ませんね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼は古い桑の木なぞの手入もされずに立っているみちの片側をって歩いた。出来ることなら、そこに自分を隠したいと願った。進めば進むほど道幅は狭く成っている。俥はいやでも応でも彼の側を通る。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
柄をり分けている間に、夕暮の時間がせまったので、大勢の小僧が広い間口の雨戸を、両側から一度に締め出した時、彼は急に恐ろしくなって、大きな声を揚げて泣き出した事もあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いよいよ出る時に、父は一番綺麗なくるまって、お貞さんを乗せてやった。十一時に式があるはずのところを少し時間がおくれたため岡田は太神宮の式台へ出て、わざわざ我々を待っていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は父がなぜ座興とは云いながら、りに択って、こんな話をするのだろうと、ようやく不安の念が起った。けれども万事はすでに遅かった。父は知らぬ顔をして勝手次第に話頭を進めて行った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は用意を欠いた文句をける余裕を失った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)