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戞々
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かつかつ
ふりがな文庫
“
戞々
(
かつかつ
)” の例文
としんみり言って、一両の褒美をつかわし、ひらりと馬に乗り、
戞々
(
かつかつ
)
と立ち去ったが、人足たちは後を見送り、馬鹿な人だと言った。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
内田氏の作品は「冥途」後も佳作必ずしも少からず。殊に「女性」に掲げられたる「旅順開城」等の数篇等は
戞々
(
かつかつ
)
たる独創造の作品なり。
内田百間氏
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兵馬は、それを聞くと早速に、教えられた通り代官屋敷の道場を叩いてみると、その時に、もはや
戞々
(
かつかつ
)
として
竹刀
(
しない
)
打ちの最中でありました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馬上の将軍は馬丁をわずらわすまでもなく、
韁
(
たづな
)
を絞りて容易に乗り静めつつ、一回圏を
画
(
えが
)
きて、
戞々
(
かつかつ
)
と歩ませ去りぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
久左衛門が一礼してその頭を上げたときは、もう秀吉の姿をつつむ部下たちの馬埃りが、日ざかりの町を
戞々
(
かつかつ
)
と出て、稲葉山城の大手のほうへ向っていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
石が葉を分けて
戞々
(
かつかつ
)
と崖へ当った。ひとしきりすると闇のなかからは芳烈な柚の匂いが立ち
騰
(
のぼ
)
って来た。
闇の絵巻
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
尤、後年木挽町近くの街路に、
戞々
(
かつかつ
)
と蹄を響して乗り越して行つた、一頭立ての幌馬車、幌をはねて乗つてゐた彼を見た。其と知つただけで、詳しくも見なかつた。
戞々たり 車上の優人
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
麗
(
うるはし
)
く
冱
(
さ
)
えたる空は遠く
三四
(
みつよつ
)
の
凧
(
いか
)
の影を転じて、
見遍
(
みわた
)
す庭の
名残
(
なごり
)
無く
冬枯
(
ふゆか
)
れたれば、
浅露
(
あからさま
)
なる日の光の
眩
(
まばゆ
)
きのみにて、
啼狂
(
なきくる
)
ひし
梢
(
こずゑ
)
の
鵯
(
ひよ
)
の去りし後は、隔てる隣より
戞々
(
かつかつ
)
と
羽子
(
はね
)
突く音して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
戞々
(
かつかつ
)
と鳴る馬の一足ごとに、源三郎の
想念
(
おもい
)
は、際限もなく伸びひろがってゆく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
戞々
(
かつかつ
)
というその
蹄
(
ひづめ
)
の音が聞えなくなるまで、千世は動くことができなかった。
四日のあやめ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ぶんぶんという鳴弓の声、
戞々
(
かつかつ
)
という
羽子
(
はご
)
の音。これがいわゆる「春の声」であったが、十年以来の春の
巷
(
ちまた
)
は
寂々寥々
(
せきせきりょうりょう
)
。往来で
迂濶
(
うかつ
)
に紙鳶などを揚げていると、巡査が来てすぐに叱られる。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
競走馬上りだけにかんのいい
牝馬
(
ひんば
)
は、すぐ駈足になって
戞々
(
かつかつ
)
たる馬蹄の音を立てながら前川邸近い森の中に走り入ろうとしたように見えたが、
何人
(
なんぴと
)
かの悲鳴が聞えると同時に、たちまち馬が
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
紺絞りの首抜きの
浴衣
(
ゆかた
)
を着て、赤
毛布
(
ゲット
)
を引き
絡
(
まと
)
い、身を持て余したるがごとくに歩みを運び、
下駄
(
げた
)
の
爪頭
(
つまさき
)
に
戞々
(
かつかつ
)
と
礫
(
こいし
)
を
蹴遣
(
けや
)
りつつ、流れに沿いて
逍遥
(
さまよ
)
いたりしが、
瑠璃
(
るり
)
色に澄み渡れる空を打ち仰ぎて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
常子は最後の勇気を振い、必死に夫へ追い
縋
(
すが
)
ろうとした。が、まだ
一足
(
ひとあし
)
も出さぬうちに彼女の耳にはいったのは
戞々
(
かつかつ
)
と
蹄
(
ひづめ
)
の鳴る音である。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
抜身の槍の穂先が、
尖々
(
せんせん
)
と月光にかがやいている。刀の白刃が、
鞘
(
さや
)
の中で
戞々
(
かつかつ
)
と走っている。五人十本の腕が、むずむずと手ぐすねで鳴っている。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とたんに
馬蹄
(
ひづめ
)
の音は、
戞々
(
かつかつ
)
とそろい出した。自分の駒も出ているのである。彼は、幾度も振向いた。黒々と、一群の人影は、いつまでも泉殿の前に見えた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戞々
(
かつかつ
)
たる馬蹄の音が、寝おきの町を驚かせつつ、先駆の五十嵐鉄十郎の馬は、いっさん走りに向島を駈けぬけて、やがて葛飾へはいり、客人大権現の森かげなる司馬寮の焼け跡へついた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と答えて二人、しずかに立ち上った時、
戞々
(
かつかつ
)
たる
馬蹄
(
ばてい
)
の響きが聞えて
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すぐまたおどろおどろしく光りを
揺曳
(
ようえい
)
するのだ、眼がそのことを認めると間もなく、耳にもしだいに外の物音が聞えだした、……
戞々
(
かつかつ
)
と地をとどろかす
馬蹄
(
ばてい
)
の音が、山門から鐘楼のほうへと疾過した
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
月にほのめいた両京二十七坊の夜の底から、かまびすしい犬の声を圧してはるかに
戞々
(
かつかつ
)
たる
馬蹄
(
ばてい
)
の音が、風のように空へあがり始めた。……
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
庭面
(
にわも
)
を越えた往来に聞えるのである。
戞々
(
かつかつ
)
と、深夜のしじまを破って通る
轡
(
くつわ
)
の響きで眼をさましたのであった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、その取引は取引として、お銀様が何物も持つことなくして、この城あとの大手の崩れ門から入ると、早くも
戞々
(
かつかつ
)
として斧の音、
鑿
(
のみ
)
の響が伝わります。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし第一の「徳川家康篇」だけは幸ひにも未成品に
畢
(
をは
)
つてゐない。いや僕の信ずる所によれば、寧ろ前人を
曠
(
むなし
)
うした、
戞々
(
かつかつ
)
たる
独造底
(
どくざうてい
)
の完成品である。
大久保湖州
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見上ぐればそこには
卑
(
いや
)
しからぬ構えの道場がある。その中からは
戞々
(
かつかつ
)
と響き渡る
竹刀
(
しない
)
の音、それと大地を突き
透
(
とお
)
す気合の叫びが、おりおり洩れて来るのです。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
凍
(
い
)
てついた道を
戞々
(
かつかつ
)
と踏んでゆく馬のひづめから、サッと砂まじりの粉雪を顔へもってくる。
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戞々
(
かつかつ
)
と、石を蹴り、木の根を踏む馬蹄の音が、はや耳を打って来たかと思うと、馬印、
旛
(
ばん
)
、旗さし物など、
治部大輔
(
じぶのたゆう
)
今川義元の本軍は、見るまに、
田楽狭間
(
でんがくはざま
)
の芝山と低地を
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほとんど一町ともゆかぬ時に、
戞々
(
かつかつ
)
と大地を鳴らす
馬蹄
(
ばてい
)
の響きが、後ろから起りました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しばらくは、石を蹴る馬蹄の音が、
戞々
(
かつかつ
)
として、曠野の静けさを破つてゐたが、やがて利仁が、馬を止めたのを見ると、何時、捕へたのか、もう狐の後足を
掴
(
つか
)
んで、
倒
(
さかさま
)
に、鞍の側へ、ぶら下げてゐる。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
右衛門ノ
佐
(
すけ
)
義助が、三条高倉を辞して、やがてまもない後である。この
陣布令
(
じんぶれ
)
は、洛中に散在している諸武家の
屯
(
たむろ
)
へ、触れ廻され、
戞々
(
かつかつ
)
の駒音が、夜どおし、都大路に鳴っていた。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戞々
(
かつかつ
)
と馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音をひびかせてこの場へ通りかかったものがあります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
但しそは
戞々
(
かつかつ
)
たる独造底の作品を残す所以とは同意義にあらず。
小説作法十則
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それに答えかけて、喜太夫は、はっと、べつな方へ耳を
奪
(
と
)
られた。
戞々
(
かつかつ
)
と、大地を打ってゆく馬蹄の響きである、また、夕立のようにわらわらとすぐ塀の外を続いてゆく兵の跫音であった。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見れば
戞々
(
かつかつ
)
と
蹄
(
ひづめ
)
を鳴らして、馬を打たせて来る一隊の者があります。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
戞々
(
かつかつ
)
と、外国奉行の
使番
(
つかいばん
)
が、
馬蹄
(
ばてい
)
を飛ばせてゆく、何事か、
早打駕
(
はやうち
)
が、三挺もつながって行った。——菊は栄える
葵
(
あおい
)
は枯れる——の
流行歌
(
はやりうた
)
をうたった子供の親が自身番へしょッ
曳
(
ぴ
)
かれて行く。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
縅
(
おど
)
しの草
摺
(
ずり
)
をゆりうごかして、
戞々
(
かつかつ
)
と、
退
(
ひ
)
いて来た
強者
(
つわもの
)
がある。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見れば六、七町の
彼方
(
あなた
)
、牛ヶ淵の濠端添いを真っ直ぐに、高く低く無数の御用提灯が
燦
(
きら
)
めき出し、心なしかワッという
鬨
(
とき
)
の
声
(
こえ
)
と共に、
戞々
(
かつかつ
)
と鳴って来る騎馬与力の
蹄
(
ひづめ
)
の音さえ間近く大地を刻んで来た。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戞
漢検1級
部首:⼽
12画
々
3画
“戞”で始まる語句
戞然
戞
戞矢
戞戞
戞〻
戞合
戞飛
戞戞戞