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慌
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あわた
ふりがな文庫
“
慌
(
あわた
)” の例文
勘次等
(
かんじら
)
三
人
(
にん
)
が
出
(
で
)
て
垣根
(
かきね
)
の
外
(
そと
)
へ
行
(
い
)
つたと
思
(
おも
)
ふ
頃
(
ころ
)
、
椀
(
わん
)
を
拭
(
ふ
)
いて
居
(
ゐ
)
た
一人
(
ひとり
)
が
慌
(
あわた
)
だしく
立
(
た
)
つて
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
た。
暫
(
しばら
)
くして
歸
(
かへ
)
つて
來
(
く
)
るといきなり
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
晴衣をたたまずに枕許に脱ぎ棄てたままで寝るというところに、春の遊楽に耽っている
慌
(
あわた
)
だしい趣もあるし、ややしまりのないような濃艶な趣もある。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その瀬によって
惹
(
ひ
)
き起される空気の動揺に捲きこまれたのだろうか、たちまち
慌
(
あわた
)
だしく動き始め、もんどりを打って、横さまに二三度閃いたと思うと
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
今私達の気持はどの点においても
慌
(
あわた
)
だしさを感じている事は事実だ。最も敏感である詩人に、この気持が分らない筈がない。また、詩に現われない筈がない。
詩の精神は移動す
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
周囲の人々の眼に送られて、両人が奥へ通う
扉口
(
とぐち
)
を出ようとした時、刑事の一人が
慌
(
あわた
)
だしく駆け込んで来た。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
それが猫眼石のように、
慌
(
あわた
)
だしく変る。大裾野の草木が、めらめらと青く燃える。捨てられた鏡のような山中湖は、反射が強くて、ブリッキ色に固く光った。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
今迄静かだった校舎内が
俄
(
にわか
)
に騒がしくなって、
彼方此方
(
あちこち
)
の教室の戸が前後して
慌
(
あわた
)
だしくパッパッと
開
(
あ
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼等は
慌
(
あわた
)
だしげに歩き、四囲の風景や人情などを、まるで観察しようと思っていない。反対に客観主義者は、旅行する事それ自身に、興味を持ってる旅行者である。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
時に履物の音高く
家
(
うち
)
に
入来
(
いりく
)
るものあるにぞ、お貞は少し
慌
(
あわた
)
だしく、急に
其方
(
そなた
)
を見向ける時、表の戸をがたりとあけて、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
をぶら提げつつ、
衝
(
つ
)
と入りたる少年あり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「小山田さんが?」私はギョクンと驚いて、
慌
(
あわた
)
だしく聞返した。「今僕の出て来た小山田さんかね」
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
横浜駅のプラットホームは、今、新橋行の列車に駈けつける人々の騒音で
慌
(
あわた
)
だしかった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お町を始め一同顔を
揃
(
そろ
)
えて言葉もなく、鼻詰らして
俯向
(
うつむ
)
く折から、表の
方
(
かた
)
で
慌
(
あわた
)
だしく
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
爾時
(
そのとき
)
年
少
(
わか
)
き漕手いと
慌
(
あわた
)
だしく、龍卷(ウナ、トロムバ)と叫べり。その
瞠視
(
みつめ
)
たる方を見れば、ミネルワの岬より起りて、斜に空に向ひて
竪立
(
じゆりつ
)
せる一道の黒雲あり。形は圓柱の如く、色は濃墨の如し。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
便所の方から
慌
(
あわた
)
だしく飛出して来た人がある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
今日ほど
慌
(
あわた
)
だしい時代の変遷はない。導く者も、導かるるものも、年齢の差こそあれ、同一の目的と理想に向かって反省し、情熱をもって進まなければならぬ。
日本的童話の提唱
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
氣
(
き
)
に
成
(
な
)
ると
心配
(
しんぱい
)
は
胸
(
むね
)
へ
瀧
(
たき
)
の
落
(
お
)
ちるやうで、——
帶
(
おび
)
引緊
(
ひきし
)
めて
夫
(
をつと
)
の……といふ
急
(
せ
)
き
心
(
ごころ
)
で、
昨夜
(
ゆうべ
)
待
(
ま
)
ち
明
(
あか
)
した
寢
(
ね
)
みだれ
髮
(
がみ
)
を、
黄楊
(
つげ
)
の
鬢櫛
(
びんぐし
)
で
掻
(
か
)
き
上
(
あ
)
げながら、その
大勝
(
だいかつ
)
のうちはもとより、
慌
(
あわた
)
だしく
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度その時、明智の部下の斎藤が、表の方から
慌
(
あわた
)
だしく駈け込んで来た。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お江戸お江戸と、日本じゅうでは今、この上もない
土地
(
ところ
)
のように、偉いうわさじゃが、何のことじゃ、来てみれば、山を崩し、
葭沼
(
よしぬま
)
を埋め、堀を掘っては海の
洲
(
す
)
を盛っている
慌
(
あわた
)
だしい
埃
(
ほこり
)
ばかり。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幼君
(
えうくん
)
「
心地
(
こゝち
)
よくば
其
(
それ
)
に
居
(
ゐ
)
て
煙草
(
たばこ
)
なと
吸
(
す
)
うて
見
(
み
)
せよ。それ/\」と、
坊主
(
ばうず
)
をして
煙草盆
(
たばこぼん
)
を
遣
(
つか
)
はしたまふに、
彼
(
か
)
の
男
(
をとこ
)
少
(
すこ
)
しく
狼狽
(
うろた
)
へ、「こはそも、
其
(
それ
)
に
置
(
お
)
かせたまへ」と
慌
(
あわた
)
だしく
出
(
い
)
でむとすれば
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
婦人
(
おんな
)
は
慌
(
あわた
)
だしく遮って声を懸けた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
慌
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
“慌”を含む語句
恐慌
慌忙
大慌
大恐慌
匆慌
唯慌
愴慌
慌忙惑
慌惚
慌狼狽
慌立
慌者等奴
慌騒
慌騷