御寺みてら)” の例文
うかとこゑけて、むねあちこち、伽藍がらんなかに、鬼子母神きしぼじん御寺みてらはとけば、えゝ、あか石榴ざくろ御堂おだうでせうと、まぶたいろめながら。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朱雀院はそのうちに御寺みてらへお移りになるのであって、このころは御親心のこもったお手紙をたびたび六条院へつかわされた。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
我宗徒のこの神聖なる羅馬の市の一廓にまんことをば、今一とせ許させ給へ。歳に一たびは加特力カトリコオ御寺みてらに詣でゝ、尊き説法を承り候はん。
かつは千早籠城のみぎりには、ずいぶんこの御寺みてらも拝借して、踏み荒らしたこと。まだまだ大分修理のとどかぬ所も多い。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし好みと云うものも、万代不変ばんだいふへんとは請合うけあわれぬ。その証拠には御寺みてら御寺の、御仏みほとけ御姿みすがたを拝むがい。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
麻布山浅く霞みて、春はまださみ御寺みてらに母と我が詣でに来れば、日あたりに子供つどひて、凧をあげ独楽を廻せり。立ちとまり眺めてあれば思ほゆる我がかぶろ髪。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
逝きましてはや九年ここのとせになるといふ御寺みてらの池に蓮咲かんとす
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
円山まるやまの南の裾の竹原にうぐひす住めり御寺みてらに聞けば
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
靈場詣りやうぢやうまうで、杖重く、ばん御寺みてらを訪ひしごと。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かぐ清水しみづ』は水錆みさびてしふる御寺みてら
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
打仰ぐ空高く御寺みてらの鐘は
御寺みてら蔵裏くり白壁しらかべ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御寺みてらたふ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
宮はこのまま小野の山荘で遁世とんせいの身になっておしまいになる志望がおありになったのであるが、御寺みてらの院にこのことをお報じ申し上げた人があって
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今は忽ち前の計畫をなげうち、スポレツトオより雇車やとひぐるまを下り、暗夜身を郵便車に托してアペンニノの嶺をえ、ロレツトオの地をさへ、尊き御寺みてらを拜まずして馳せ過ぎつ。
「千早籠城から四年もたって、ゆくりなく、正成の手に拾われたその白骨だ……よほど宿縁……御寺みてらまで連れて行って、参籠のついでに、よう御供養をして上げようよ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麻布山浅く霞みて、春はまださみ御寺みてらに、母と我が詣でに来れば、日あたりに子供つどひて、凧をあげ独楽を廻せり。立ちとまり眺めてあれば、思ほゆる我がかぶろ髪。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いや、それよりも大事なのは、去年この「さん・ふらんしすこ」の御寺みてらへ、おん母「まりや」の爪を収めた、黄金おうごん舎利塔しゃりとうを献じているのも、やはり甚内と云う信徒だった筈です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
霊場詣りようじようまうで、杖重く、ばん御寺みてらを訪ひしごと。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
御寺みてら藏裏くり白壁しらかべ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夜が明けたので薫は帰ろうとしたが、昨夜遅れて京から届いた絹とか綿とかいうような物を御寺みてら阿闍梨あじゃりへ届けさせることにした。弁の尼にも贈った。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
太宰府は今暁こんぎょう、菊池勢に攻めおとされ、大殿の妙恵みょうけい様、宗応蔵主そうおうぞうすさま、ご一族は内山へ逃げ退いて、御寺みてらへ火をかけ、火中にて御自害をとげてみなお果てなされました。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樂の聲、人の歡び呼ぶ聲の滿ちわたれるピエトロの廣こうぢに來りし時、火を換ふる相圖あひづ傳へられぬ。御寺みてらの屋根々々に分ち上したる數百の人は、一齊に鐵盤中なる松脂環飾やにのわかざりに火を點ず。
悪魔はアントニオ上人しょうにんにも、ああ云う幻を見せたではないか? その証拠には今日になると、一度に何人かの信徒さえ出来た。やがてはこの国も至る所に、天主てんしゅ御寺みてらが建てられるであろう。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝霧にほろこほろこと啼くこゑはここの御寺みてらの鳩にかもなも
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
世人が愛しにくいものに言う十二月の月のえてかかった空を、御簾みすを巻き上げてながめていると、御寺みてらの鐘の声が今日も暮れたとかすかに響いてきた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「いま読み聞かせたのは、日本一州未来記というものの抜書ぬきがきの一節なのだ。——その未来記一巻は、かしこくも、この御寺みてらてられた聖徳太子の書きおかれた秘封なのだが」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清水きよみづ御寺みてらの内陣にはひれば、観世音菩薩の御姿さへ、その儘侍従に変つてしまふ。もしこの姿が何時までも、おれの心を立ち去らなければ、おれはきつとこがじにに、死んでしまふのに相違ない。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
朝霧にほろこほろこと啼くこゑはここの御寺みてらの鳩にかもなも
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とう大納言は長い間院の別当をしていて、親しく奉仕して来た人であったから、院が御寺みてらへおはいりになれば有力な保護者を失いたてまつることになるのを
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「されば、幼少からの仏心のさがとみえて、常に、御寺みてらを慕うています」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
行けかし、さらば南国のばん御寺みてらへ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いつものように夜がしらみ始めると御寺みてらの鐘が山から聞こえてきた。兵部卿ひょうぶきょうの宮を気にしてせき払いをかおるは作った。実際妙な役をすることになったものである。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
暮れのこる邪宗じやしゆう御寺みてら
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
御出家の際に悲しがった女御にょご更衣こういは院が御寺みてらへお移りになることによって、いよいよ散り散りにそれぞれの自邸へ帰るのであったが気の毒な人ばかりであった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてらで行なっておいでになる三昧さんまいの日数が今日で終わるはずであるといって、女王たちは父宮のお帰りになるのを待っていた日の夕方に山の寺から宮のお使いが来た。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と言い、まず御寺みてら阿闍梨あじゃり、それから祈祷きとうに効験のあると言われる僧たちを皆山荘へ薫は招いた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
もうほかのことをお考えになる余裕がないために、法皇の賀のことも中止の状態になった。法皇の御寺みてらからも夫人の病をねんごろにお見舞いになる御使いがたびたび来た。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
今日のはただ御念誦堂ごねんじゅどう開きとしてお催しになった法会ほうえであったが、宮中からも御寺みてらの法皇からもお使いがあって、御誦経の布施などが下されてにわかに派手はでなものになった。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今月の二十幾日はあすこの山の御寺みてらの鐘を聞いて黙祷もくとうをしたい気がしてならないのですが、あなたの御好意でそっと山荘へ私の行けるようにしていただけませんでしょうかと
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてらへお帰りになるのが明るくなってからでは見苦しいと法皇はお急ぎになって、祈祷きとうのために侍している僧の中から尊敬してよい人格者ばかりをお選びになり、産室うぶやへお呼びになって
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてらの院は女二にょにみやもまた不幸な御境遇におなりになったし、入道の宮も今日では人間としての幸福をよそにあそばすお身の上であるのを、御父として残念なお気持ちがあそばすのであるが
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてらの院は、珍しい出産を女三にょさんみやが無事にお済ませになったという報をお聞きになって、非常においになりたく思召したところへ、続いて御容体のよろしくないたよりばかりがあるために
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてらの院もお聞きになって、御愛情のこもったお手紙を宮へお書きになった。この御消息が参ったことによって、悲しみにおぼれておいでになった宮もはじめてつむりをお上げになったのであった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
朝の月涙のごとくましろけれ御寺みてらの鐘
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御寺みてら阿闍梨あじゃりの所から
源氏物語:50 早蕨 (新字新仮名) / 紫式部(著)