かたちづく)” の例文
当時江戸に集っていた列藩の留守居は、宛然えんぜんたるコオル・ヂプロマチックをかたちづくっていて、その生活はすこぶる特色のあるものであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
家庭をかたちづくつたならば生活の安心から幾分女らしい優しさを恢復することが出來ませう。其他に於ては年齡が絶對に許しません。
教師 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
以上の話の中の女が果してメリーであったかどうかはわからないから、このことが、事件の真相をかたちづくっているものとは無論言われないのである。
畢竟するに詩文人は、其原素に於ては兵馬の人と異なるなきなり、之を詩人にかたちづくり、之を兵士に形るものは、時代のみ。
我等は手足をうごかして熔岩の塊を避けつゝ進めり。色せたる月の光と松明まつの光とは、岩の隈々くま/″\に濃き陰翳をかたちづくりて、深谷のかんをなせり。忽ち又例の雷聲を聞きて、火柱は再び立てり。
伏姫の運命をかたちづくりしもの、右の二者あるの外に、驚くべき配合の美と言ふべきは、八房の他の一側なり。
自然しぜんかたちづくられて階級かいきふ相違さうゐいうしてものまたながあひだかれ生活せいくわつ内情ないじやう知悉ちしつしてものからはかれ同情どうじやうまなこもつられてるけれども、こせ/\とした態度たいど
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
列挙せられた新聞紙の記事は所謂この物語の第二の伏線とも見るべきものであって、第一の伏線たるマリー失踪前後の記述と相まちて、この長い物語の美しい「あや」をかたちづくっているのである。
文壇とは何であるか。今国内に現行している文章の作者がこれをかたちづくって居るのであろう。予の居る所の地は、縦令たとい予が同情を九州に寄することがいかに深からんも、西僻せいへき陬邑すうゆうには違あるまい。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
はやしはづれから田圃たんぼへおりるところわづかに五六けんであるが、勾配こうばいけはしいさかでそれがあめのあるたびにそこらのみづあつめて田圃たんぼおとくちつてるので自然しぜんつちゑぐられてふかくぼみかたちづくられてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
にはさわぎはんで疾風しつぷうおそうたごとれううちまた雜然ざつぜんとして卯平うへいかこんだ沈鬱ちんうつ空氣くうき攪亂かくらんした。やが老人等としよりらたがひ懷錢ふところせんうた二升樽しやうだるはこばれてさけまたわかされた。さけ圍爐裏ゐろりちかかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)