屋根裏やねうら)” の例文
梯子段はしごだんの二三段を一躍ひととびに駈上かけあがつて人込ひとごみの中に割込わりこむと、床板ゆかいたなゝめになつた低い屋根裏やねうら大向おほむかうは大きな船の底へでもりたやうな心持こゝろもち
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
四階のてっぺんに上がって、ドアをたたくことなしに親方はすぐ前のドアをおし開けて、穀物倉こくもつぐらのような大きな屋根裏やねうら部屋へやにはいった。
乾燥かんさうした藁束わらたば周圍しうゐねぶつて、さらそのほのほ薄闇うすぐらいへうちからのがれようとして屋根裏やねうらうた。それが迅速じんそくちから瞬間しゆんかん活動くわつどうであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蛾次郎がじろうもすばやく水独楽みずごまをふところのおくにねじこみ、かわりにあけびまき錆刀さびがたなをもってかまえをとり、つかに手をかけて屋根裏やねうら虚空こくうをにらみつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日頼んで置いたので、先家主の大工だいくが、六畳裏の蛇でものたくりそうな屋根裏やねうらを隠す可く粗末な天井を張って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
巨大きよだいなるくすのきらさないために、板屋根いたやねいた、小屋こやたかさは十ぢやうもあらう、あしいただいせかけたのが突立つツたつて、ほとん屋根裏やねうらとゞくばかり。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
活計くらしを立つるには、鍼仕事はりしごとして得給ふ錢と、むかし我等が住みたりしおほいなる部屋を人に借して得給ふあたひとあるのみなりき。われ等は屋根裏やねうらの小部屋に住めり。
ましてわたしがはじめて屋根裏やねうら部屋へやで会ったとき、スープなべの見張みはりをして、えず気のどくないたむ頭を両手でおさえていた化け物のような子ではなかった。
くすのき材木ざいもくなゝめにつて、屋根裏やねうられてちら/\する日光につくわううつつて、ふべからざる森嚴しんげんおもむきがある。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天井てんじやうもない屋根裏やねうらからすゝかすかにさら/\とつて、時々ときどきぽつりと凝集こゞつたまゝちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうしてほのほちかそびえたすぎこずゑからえだけて爪先つまさきいた。たびすぎ針葉樹しんえふじゆ特色とくしよくあらはして樹脂やにおほがばり/\とすさまじくつてけた。屋根裏やねうらたけ爆破ばくはした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)