)” の例文
「それには及ばん。その心根はよく分るが、それまでに、危ない中を、往来せんでもよい。充分、体を休めて、勝軍かちいくさらせを待て」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを tick-tack といって、その場になって刻々移る一般の人気によって激しく上下する馬金率をらせあっているのだ。
肝心の源十郎へ持っていかねえで、そうやっておれにらせるんだ? お艶のいどころなんぞ買わせようたって、おれア一文も払やしねえぞ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
突然、電鈴が私の耳に亀甲町にある、綿花綿布倉庫会社の事業停止による賃金不払のため、従業員のストライキをらせた。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
お言いにならないではいらっしゃれないほど現在のお心を占めていますことをおらせくださいまして承知いたしましたが
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さいわいにも私たちの旅は、如何に日本に多くの健康な品物が、今も人々の手で作られつつあるかをらせてくれたのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紳士たちは、フェアファックス夫人が私にらせてくれたやうに、ミルコオトに於ける或るおほやけの會合に出席する爲めに早めに歸つてしまつた。
しかし津の国屋よりもほかに礼を云ってもらいたい人があるので、文字春はさらに桐畑の常吉の家へとらせに行った。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高重はまだ侵入されぬローラ櫓を楯にとって、頭の上で唸るつぶてを防ぎながら、警官隊の来たことをらすために叫んだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その夕方電話で北門の校正にはいることが出来て社内の小使ひ部屋の三畳に寄寓するとらせて来た、月給は九円だがおほいに助かつたとよろこんだ電話だ。
札幌時代の石川啄木 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「先生にもう一度来てもらいますわ。その代り私がおらせするまで待ってね。いい時期に手紙あげますわ。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ところが彼から手紙が来て、眼が悪くなったことをらせ、後生だから妻に早く帰ってきてもらいたいと言ってよこした。アンナ・セルゲーヴナはそわそわし始めた。
「そのことは、私の方にも正木かららしてもらっていましたので、内心喜んでいたところです。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
帰期かえりらせに来た新造しんぞのお梅は、次の間の長火鉢に手をかざし頬をあぶり、上の間へ耳をそばだてている。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「え、もう、今日会場にはいると、すぐあなたのおそばに坐るように、頭がふいにらせたの。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
うまく、鰡の大群が湾内へ入ったとなると、入口に張って置いた網の引き手を引いて口を締めてしまい、そこで盤木か鐘を鳴らして、村中の漁師にらせることにしている。
蜻蛉返り (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
小萩が、松本の病院から、小諸の奥にある国立結核療養所へ移つたというらせなのである。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
で就学の始めの日には朋友親戚にらせます。すると朋友親戚の者は出て来てその子供に例の「カタ」を与え、子供はその「カタ」を首筋へ掛け両端を胸の所へ下げて置く。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もううに開館をらす鐘が鳴り渡つて、座の方には見物が半分ほども入つた頃である。楽隊の音が聞える。拍子木の響がする。客を呼ぶ黄色い声が起る。見物の足音が聞える。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
ここの見たところかなり見すぼらしい下宿に、彼が転宿して来た時——一たいおれの宿の何処どこに入口があるのか解らない——と転居をらすハガキを自分の親友青沼白心へ出した。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
何とはなく肩幅が広く昔の友だちに手紙でらせてやりたい位であつた、母親が悪い条件で前借をしたのもあまり苦にならなかつた、お目見得に来た時も、特別丁寧におきよには挨拶して
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
「……宮ちゃんすぐまいります」女中はらせて来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
もとより発車をらせるベルも無ければ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そこへらせに行くまでもなかった。むこうから四、五人して駈けて来るのがその宿屋の者らしく、中に、吉岡清十郎の顔も見える。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜、彼らは乙女の自殺のらせを聞く前に、神庫ほくらの前で宿禰が何者かに暗殺されたという報導を耳にした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
その以上に詮議のしようもないので、重兵衛はそのまま帰って来たが、なにぶんにも腑に落ちないので、とりあえず半七の処へらせてよこしたのであった。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その一つのらせが次の瞬間にはあるのでないかと、気にしない間もなかったのであったが、いよいよそれを聞く身になった姫君たちは失心したようになった。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この本は皆さんにそれをおらせしようとするのであります。地方に旅をなさる時があったら、この本をかばんの一隅に入れて下さい。貴方がたの旅の良い友達となるでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
トラモンタナと呼ばれる狂暴なアルプスおろしが、窓の外に汽車の轟音と競争して、私達に、今夜は暗いばかりでなく、恐らくは、粉雪を含んで寒いのであろうことを、間断なくらせていた。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
いろいろ話も聞こうしらせてえこともある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
食堂が開いたらせである。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「嫌ならせ?」
原士はらし衆の詰めているふもとの木戸へ行って、この大変をおらせしようと存じ、急いで、平家へいけの馬場から降りてきたところでございます
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
念のために師匠のところへもらせてやると、小左衛門の御新造のお貞もおどろいて駈けつけて来たが、どの人もただ心配するばかりでどうするすべも知らなかった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、日向の父にそのことをらせると、父からは直ぐ返事が来て、幸子が腕を切断したというのは何かの間違いだろう、心配することはない、と書いてあった。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
くわしいおらせもまだいただいていませんが、あなたからその際にはこうしてほしい、何が入り用であるとかいうことを言ってくだすったら、そのとおりにしたいと思っています。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この一冊は若い方々のために、今までよく知られていない日本の一面を、おらせしようとするのであります。ここでは手仕事に現れた日本の現在の姿を描くことを主眼としました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あらかじめ矢文やぶみをもって予告のあった敵方の客将黒田官兵衛孝高よしたかが、いま輿こしにのって、山下の柵門さくもんまで来た——というらせであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
確に見届けたその事実を広くおらせするのが、この本の目的であります。西洋では機械の働きが余りに盛んで、手仕事の方は衰えてしまいました。しかしそれに片寄り過ぎては色々の害が現れます。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「虫がらせたのやわ。」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
「じつア、ひょんな早耳から、ど、どえらいもうけぐちを知ったんで、それをおらせに来たんでさ。旦那なら相談になると思って」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこの大変を、そこへらせようと思って、健気けなげにも、後へ戻りかけると、もう人影は見えないとばかり思っていた土橋の陰から
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この三人三様の風貌をもった賊の頭目は、折ふし山寨さんさいの一くつで、博奕ばくちか何かに夢中になっていたところから、子分のらせも耳の外に
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太鼓は三色みいろ母衣武者ほろむしゃが、試合場しあいじょうの左右から正面へむかってかけだすらせだった。そこには、矢来やらいと二じゅういまわされたさくがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「相手は、分った。やっぱり、ゆうべそっとらせてくれた人の告げは、嘘ではなかった。……しかし、あれは誰だったろう」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうも手応えが薄いが——と怪しんでいると、やがて、城主滝川三郎兵衛以下、城兵はみな、からめ手から逃げ去ったというらせが入った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——もし宋江がらせにきてくれなかったら、おれたちは一もう打尽だじんになるところだった。さっそく何とか考えずばなるまい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この内に、御不審のかかった人間が潜伏しおるとのらせである。手抗てむかう者は、用捨ようしゃなく六波羅へ曳くぞ。邪魔するな」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまま、癲癇てんかんのように口からあわをふいてうめいているのを、焼跡の軍夫が見つけて、附近の官軍の小隊へらせに走った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今、深田橋のたもとの蕎麦屋そばやで、酒を一合飲み、蕎麦を喰って擬宝珠ぎぼうしゅの方面へ立ち去った一名の浪人者がいるというらせだ。——すぐ来いっ」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)